↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
38/46

38話

街へ戻る道を歩きながら、俺はさっきの建物のことを考えていた。


 結局、分かったことは多くない。


 だが、何も分からなかったわけでもない。


 あの建物には、夜になると冒険者たちが集まっている。


 そして、その中には俺たちに敵意を持っている人物がいる。


 それだけでも十分警戒する理由になる。


「レオン様」


「ん?」


「先ほどの建物ですが……」


「ああ」


「明日も同じ場所に行くと思いますか?」


「たぶんな」


 俺は少し考える。


「でも、同じように待ってるだけじゃ駄目だ」


「どうしますか?」


「まず、あの建物を昼間に見に行く」


「昼間に?」


「ああ」


 夜は人が集まっている。


 だから近づきにくい。


 でも、昼間なら誰もいない可能性が高い。


 建物そのものを調べれば、何か分かるかもしれない。


「それに、森の中も確認したい」


「昨日の道ですか?」


「それだけじゃない」


 昨夜、冒険者たちは建物へ入る前に何かを探していた。


 木の幹を確認していた男もいた。


 あれが単なる癖には思えない。


「何か目印があるのかもしれない」


「なるほど」


 リナが頷く。


「では、明日は昼間に森へ?」


「ああ」


 街へ戻る。


 宿に着くころには、すっかり夜も遅くなっていた。


 部屋へ入り、俺はベッドに腰を下ろす。


「今日はかなり歩いたな」


「はい」


 リナも椅子に座る。


「ですが、手掛かりはありました」


「そうだな」


 俺は今日の出来事を頭の中で整理する。


 行方不明になった冒険者たち。


 夜の森。


 焚き火。


 集まっていた冒険者。


 古い建物。


 そして、そこにいた謎の人物。


 まだ一つの線には繋がらない。


 それでも、関係している可能性は高い。


「……明日は昼から動こう」


「はい」


 俺はそう言って、ベッドへ横になった。


 その日の夜。


 俺はなかなか眠れなかった。


 頭の中に、あの男の姿が残っている。


 建物の中で、冒険者たちを集めていた男。


 あいつは何をしている?


 何を探している?


 そして、なぜ冒険者たちは夜の森へ向かうのか。


 考えても答えは出ない。


 俺は目を閉じた。


 今は休むしかない。


 明日になれば、もう少し何か分かるはずだ。


 そう思いながら、俺は眠りについた。


 翌日。


 朝食を終えた俺たちは、南の森へ向かった。


 夜とは違い、昼間の森は明るい。


 昨日のような不気味さもない。


「昨日の建物は、こっちですね」


「ああ」


 リナの案内で森の中を進む。


 しばらくすると、昨日見た古い建物が見えてきた。


 周囲に人の気配はない。


「誰もいませんね」


「そうだな」


 俺たちは建物の近くまで歩いていく。


 近くで見ると、やはりかなり古い。


 壁にはひびが入り、ところどころ崩れている。


 それなのに、入口だけは妙に新しい。


「ここだけ人が使ってる」


「はい」


 俺は扉に近づく。


 鍵はかかっていない。


「入る?」


「はい」


 扉を開ける。


 中は薄暗い。


 昨日の夜は気づかなかったが、建物の中には小さな部屋がいくつもあった。


 机。


 椅子。


 棚。


 そして、壁には何枚もの紙が貼られている。


「……何だこれ」


 俺は一枚の紙を手に取った。


 そこには名前が書かれていた。


 知らない名前だ。


 その下にも名前が並んでいる。


 さらに、その下にも。


「リナ」


「はい」


「これ、全部人の名前だ」


 リナが紙を見る。


「……多いですね」


「ああ」


 俺は名前を一つずつ確認する。


 知らない名前ばかり。


 だが、その中に。


「……カイル」


 あった。


 確かに書かれている。


 俺はその名前を指でなぞった。


 カイル・――。


 その横には、小さく印がつけられている。


「これって……」


 リナが紙を見る。


「カイルさんの名前ですね」


「ああ」


 そして、その名前の下にはもう一つ。


 線が引かれている。


 その意味は分からない。


 だが、カイルがここに来ていた証拠としては十分だった。


「やっぱり、ここは関係してる」


 俺は紙を見つめた。


 行方不明者の名前もあるのかもしれない。


 そう思って、さらに紙を調べる。


 すると――。


 知っている名前が、いくつも見つかった。


 最近ギルドで聞いた行方不明者の名前。


 その全員が、この紙に書かれている。


「……見つけた」


 俺は思わず呟いた。


 これで、少なくとも一つは確定した。


 行方不明者たちは、この場所と無関係ではない。


 だが。


 紙の一番下。


 その下には、まだ名前が書かれていない空白が残っている。


「……」


 俺は紙から目を離せなかった。


 リナも、その意味に気づいたようだった。


「レオン様……」


「ああ」


 まだ終わっていない。


 この場所では、今も何かが続いている。


 そして、次に書かれる名前が誰なのか。


 それだけが、どうしても気になった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。