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第36話 怪しげな会合

焚き火の向こうで、男たちの話は続いていた。


「次はいつだ?」


「……明日の夜」


「場所は?」


「いつもと同じだ」


 俺は耳を澄ませる。


 やはり何かの待ち合わせらしい。


 だが、何をするためなのかまでは分からない。


「人数は集まるのか?」


「分からない」


「またそれか」


「俺にも分からないんだ」


 男たちの間に、少し嫌な空気が流れた。


 そのときだった。


 一人の男が、周囲を見回した。


「……誰かいるか?」


 俺は反射的に木の陰へ身を隠した。


 リナもすぐに姿勢を低くする。


 男は焚き火から離れ、こちらへ近づいてくる。


 足音が少しずつ近づいてくる。


 俺は息を殺した。


 リナが俺の前に手を出す。


 動かないほうがいい。


 そういう意味だろう。


 足音が止まった。


「……」


 男は周囲を見回している。


 俺たちとの距離は、それほど遠くない。


 だが、こちらには気づいていないようだ。


 しばらくすると、男は焚き火のほうへ戻っていった。


「何でもない」


「気のせいか?」


「ああ」


 俺は小さく息を吐いた。


 危なかった。


 まだこちらの存在を知られるわけにはいかない。


 俺は改めて、焚き火の周りにいる人数を確認する。


 全部で四人。


 全員が冒険者らしい格好をしている。


 そして、その中に見覚えのある顔はない。


 少なくとも、以前俺たちを襲ってきた三人組とは違う。


「……帰るぞ」


 俺は小声で言った。


 リナがこちらを見る。


「いいんですか?」


「ああ」


 今夜これ以上近づくのは危険だ。


 それに、いくつか分かったこともある。


 明日の夜。


 この場所。


 そして、何かのために人数を集めている。


 これだけでも十分だ。


 俺たちは音を立てないように、少しずつ後退した。


 森を出るまで、一度も振り返らない。


 十分ほど歩いたところで、ようやく俺は足を止めた。


「……疲れた」


「大丈夫ですか?」


「大丈夫」


 俺は森の奥を見る。


「明日の夜、また来よう」


「はい」


「ただし、今度はもう少し準備してからだ」


「分かりました」


 街へ戻る。


 南門の明かりが見えてきた。


 門番は寝ていた。


 「門番失格だな」


 そのまま宿へ戻った。


 部屋に入ると、俺はベッドに腰を下ろす。


「今日分かったことを整理しよう」


「はい」


 俺は指を折る。


「まず、夜に南の森へ向かう冒険者がいる」


「はい」


「森の奥には、複数の冒険者が集まっていた」


「四人いました」


「そして、明日の夜にも集まる予定」


「場所も同じようです」


「そうだな」


 だが、まだ分からないことも多い。


 何のために集まっているのか。


 誰かに指示されているのか。


 行方不明になった冒険者とどう関係しているのか。


 そして――。


「人数が減っているって言ってたな」


「はい」


 俺はその言葉を思い出す。


 何の人数なのか。


 それが一番気になっていた。


「明日、もう少し近くで聞いてみる」


「危険ではありませんか?」


「危険だと思う」


 だからこそ、慎重に行動する必要がある。


 俺は窓の外を見る。


 夜の街は静かだった。


 今日のところは、これ以上何も起こらない。


 そう思っていた。


 だが、明日の夜。


 俺たちは南の森で、さらに奇妙な光景を見ることになる。

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