第28話 地上
巨大な腕が地面を突き破った。
「来るぞ!」
俺は剣を構える。
リナも一歩前へ出た。
地面から這い出してきたのは、巨大な甲殻を持つ魔物だった。
四本の腕。
岩のような皮膚。
そして、こちらを睨みつける赤い目。
「……こいつが出口を塞いでたのか」
「おそらく」
魔物が咆哮する。
――ズドン!
拳が地面へ叩きつけられた。
「散開!」
俺とリナが左右へ飛ぶ。
地面が大きく抉れる。
「硬そうだな……」
「私が隙を作ります」
リナが消える。
「《影歩》」
一瞬で魔物の側面へ回り込む。
短剣が甲殻の隙間へ滑り込んだ。
だが――。
「浅い!」
魔物が腕を振る。
リナが後ろへ跳ぶ。
「レオン様!」
「分かった!」
俺は正面から走る。
魔物の拳が迫ってくる。
――右。
頭の中で直感が走った。
俺は右へ身体をずらす。
拳が目の前を通過した。
「《先読》……!」
そのまま懐へ入り込む。
「くらえ!」
剣を振り上げる。
――ドォン!
甲殻が砕ける。
魔物が怯んだ。
「今です!」
リナが背後から現れる。
「《死影の一撃》」
一瞬。
リナの姿が消えた。
次の瞬間、魔物の首元へ短剣が突き刺さる。
魔物が大きくよろめく。
「もう一度!」
俺は剣を構える。
魔物がこちらへ向き直る。
その瞬間、リナが再び背後へ回った。
「終わりです」
短剣が急所へ入る。
巨体が崩れ落ちた。
――ドォン。
「……倒した」
「はい」
俺は肩で息をする。
リナも短剣を拭って鞘へ戻した。
「出口は?」
「もう目の前です」
俺たちは再び歩き始めた。
そして――。
光の中へ足を踏み入れた。
「……」
眩しい。
あまりにも眩しくて、思わず目を細める。
次第に視界が戻ってくる。
青い空。
木々。
風。
「……外だ」
俺は思わず立ち止まった。
「帰ってきた……」
「はい」
リナも静かに頷く。
洞窟の中とは全く違う。
暖かい風が頬を撫でる。
鳥の声が聞こえる。
俺は大きく息を吸った。
「……空気うめえ」
「ふふ」
リナが小さく笑った。
「何笑ってるんだよ」
「いえ。レオン様が嬉しそうだったので」
「そりゃ嬉しいだろ」
俺は空を見上げる。
長かった。
本当に長かった。
これでようやく、帰ることができる。
そう思った、その瞬間。
『お疲れさまでした』
「――え?」
頭の中に、声が響いた。
俺は固まる。
リナも俺を見る。
「……レオン様?」
「今……何か聞こえなかった?」
「何も」
もう一度、声がした。
『長い道のりでしたね』
「誰だ!」
俺は反射的に周囲を見回した。
木々。
岩。
洞窟の入口。
人影はない。
「誰もいません」
「でも、今確かに……」
『私はここにいます』
「どこに!?」
返事は、頭の中からだった。
俺は自分の身体を見る。
「……まさか」
ステータスを開く。
そこにあるのは――。
《チャット》
俺は、このスキルを見つめた。
「……これ、なのか?」
『はい』
「お前が……このスキルなのか?」
『正確には少し違います』
「じゃあ、お前は何なんだ?」
少しの沈黙。
『現時点では、私自身にも完全な説明はできません』
「……は?」
『ただ、あなたと会話するために存在していることは確かです』
俺は言葉を失った。
そんなことがあり得るのか。
スキルに意思がある?
「……名前は?」
『ありません』
「じゃあ、何て呼べばいい?」
『呼び方は、あなたに任せます』
「……変なの」
思わず呟く。
リナが心配そうにこちらを見る。
「レオン様……?」
「ああ、大丈夫」
俺は空を見上げた。
洞窟を出た。
そして、俺は初めて――。
自分の中にいる「何か」と出会った。
まだ、こいつが何者なのかは分からない。
ただ一つ。
俺の旅は、地上へ戻ったことで終わったわけではない。
むしろ――。
ここから、何かが始まる気がした。
ステータス
レオン・アストレア
職業:????
役職:貴族
レベル:7
HP:390
MP:330
攻撃:175
防御:138
魔力:158
敏捷:135
運:44
スキル:
《チャット》
AIとの会話
遠隔チャット
《剣術》
《???》
《因果視》
《魔力循環》
《異常耐性》
《????》
《先読》
称号:
アストレア家の嫡男
貴族
冒険者
リナ
職業:死影
レベル:13
HP:225
MP:94
攻撃:147
防御:57
魔力:36
敏捷:190
運:41
スキル:
短剣術
隠密
気配察知
暗殺術
《急所看破》
《影歩》
《致命追撃》
《殺気遮断》
《影縫い》
《死影の一撃》
称号:
レオンの護衛
死影
暗殺者
AIはただのレオンの能力を説明するくらいの役割です




