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第23話 無職の特権

壁に寄りかかったことで、俺たちはダンジョンのかなり下層まで落ちてしまった。


 そして今、目の前には巨大な神殿がある。


「……ここ、何なんだろうな」


「分かりません」


 リナも周囲を警戒している。


 神殿の内部は静まり返っていた。


 魔物の姿はない。


 ただ、奥へ進むにつれて、壁や床に刻まれた奇妙な紋様が増えていく。


「何かの施設なのは間違いなさそうだけど……」


 俺たちは慎重に奥へ進んだ。


 すると、一際広い部屋に出た。


 中央には大きな祭壇。


 その前には、人が立てるほどの円形の台座がある。


「これ……何だ?」


 俺が近づいた瞬間。


 祭壇が淡く光った。


【対象を認識】


【役職情報を確認】


「役職……?」


 俺とリナは顔を見合わせた。


 すると、祭壇の上に文字が浮かび上がる。


【役職進化】


「役職を……進化させる?」


 どうやらここで初めて、この神殿が何をする場所なのか分かった。


「リナ、試してみるか?」


「はい」


 リナが台座の上に立つ。


 光が身体を包み込んだ。


【対象:リナ】


【職業:アサシン】


【進化可能な役職を検索します】


 空中に候補が並んだ。


【影刃】


説明:

暗殺と奇襲に特化した上位職。


【幻影刺客】


説明:

幻影を利用した攪乱と暗殺を得意とする上位職。


【闇走り】


説明:

敏捷性と隠密能力を大幅に高め、高速戦闘を得意とする上位職。


【死影】


説明:

攻撃能力と暗殺能力を極限まで高めた攻撃特化型の上位職。敵の弱点を見抜き、一撃で仕留める能力に優れる。


【守影】


説明:

護衛能力に特化した暗殺系上位職。護衛対象への危険察知能力を大幅に強化する。


「結構あるな……」


 リナは候補を順番に確認していく。


「どれにする?」


「……これです」


 リナが選んだのは――【死影】。


「攻撃特化か」


「はい。これまで以上に敵を素早く倒せるようになるなら、帰還する際にも役立つと思います」


「確かに」


 ここはダンジョンの深層。


 敵が強いなら、倒す速度は重要だ。


「じゃあ、それでいこう」


 リナが【死影】を選択する。


【役職変更を実行します】


【アサシン → 死影】


 黒い光がリナを包み込む。


 しばらくして光が消えた。


「……どうだ?」


「力が増したのが分かります」


 リナは軽く手を握る。


「以前より、攻撃の感覚が鋭くなっています」


「頼りになるな」


「ありがとうございます」


 リナの進化は終わった。


 俺は自分を見る。


「じゃあ次は俺か」


 台座に乗る。


 祭壇が反応した。


【対象:レオン・アストレア】


【職業:無職】


【通常の役職進化条件を満たしていません】


「ほらな」


 俺は苦笑した。


「俺は無職だから、無理だな」


 そう言いながらも、せっかくの機会だ。


「まあ、試すだけ試してみるか」


 俺が手を伸ばす。


 すると――。


【特殊条件を確認】


【無職専用システムを起動】


「……え?」


 表示が切り替わった。


 次々と役職が表示されていく。


【剣聖】


説明:

剣技を極限まで高める戦闘系上位職。


【大賢者】


説明:

魔法を極限まで極める上位職。


【英雄】


説明:

戦闘能力・身体能力・精神力を総合的に高める万能型の上位職。


【軍師】


説明:

戦場での指揮・分析・判断能力に特化した職。


【聖王】


説明:

強大な神聖の力を持ち、王としての資質を極限まで高める最上位職。


 さらに下へ。


【世界術師】


説明:

世界の法則へ干渉する力を持つ特殊な最上位職。


【神域騎士】


説明:

肉体・精神・魔力を極限まで高める神話級の戦闘職。


【万象支配者】


説明:

世界に存在する様々な力を統合・操作する最上位職。


「……何だよ、これ」


 そして、一番下。


【????】


説明:

詳細不明。


「名前すら分からない……」


 リナも画面を見つめている。


「他の候補も相当なものですが……」


「これだけ何も分からないってのも逆に気になるな」


 俺はしばらく考える。


 食料は限られている。


 ここで強くなれるなら、帰還のためにも選ぶ必要がある。


 なら――。


「これにする」


 俺は【????】を選択した。


【選択対象:【????】】


【警告】


【当該職業に関する情報が存在しません】


【選択を実行しますか?】


「はい」


 瞬間。


 神殿全体が大きく震えた。


「っ……!」


 祭壇から溢れた光が俺の身体へ流れ込む。


 身体の奥で、何かが目を覚ますような感覚。


【職業変更を実行】


【無職 → ????】


 光が消える。


「……終わった?」


「はい」


 俺は自分の身体を確認する。


 見た目には何も変わっていない。


 新しい職業の名前も、能力も分からない。


「……何なんだ、これ」


「これから確認するしかありませんね」


「そうだな」


 俺は剣を握った。


 神殿の外には、まだダンジョンが続いている。


 食料も十分ではない。


 ここで立ち止まっている余裕はなかった。


「行こう、リナ」


「はい」


 俺たちは神殿を後にする。


 リナは新たな力を手に入れた。


 そして俺は――。


 正体すら分からない【????】という職業を手に入れた。


 この力が何なのか。


 それを知るのは、まだ少し先のことだった。


ステータス

レオン・アストレア

職業:????


役職:貴族


レベル:5


HP:320


MP:280


攻撃:145


防御:118


魔力:132


敏捷:110


運:42


スキル:


《チャット》


AIとの会話


遠隔チャット


《剣術》


《???》


《因果視》


《魔力循環》


《異常耐性》


《????》


称号:


アストレア家の嫡男


貴族


冒険者


リナ

職業:死影


レベル:10


HP:185


MP:82


攻撃:108


防御:48


魔力:31


敏捷:142


運:38


スキル:


短剣術


隠密


気配察知


暗殺術


《急所看破》


《影歩》


《致命追撃》


《殺気遮断》


《影縫い》


《死影の一撃》


称号:


レオンの護衛


死影


暗殺者

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