第16話 初めてのスキル
街道を歩き始めて、しばらく経った。
昨日、俺はリナに《チャット》について話した。
自分の持つ力を誰かに話すのは、思っていたよりも不思議な感覚だった。
「レオン様」
「ん?」
「少し考え事をされていますか?」
「……分かる?」
「長くご一緒しておりますから」
リナが小さく笑う。
「まあ、ちょっとな」
「そうですか」
リナはそれ以上聞かなかった。
そんなやり取りをしながら街道を進んでいると――。
「……止まってください」
リナが足を止めた。
「どうした?」
「前方から人が来ます」
しばらくすると、数人の冒険者がこちらへ走ってくる。
「おい!」
先頭の男が叫んだ。
「この先に魔物が出てる!」
「魔物?」
「ああ! 街道の近くまでゴブリンが出てきやがった!」
リナが俺を見る。
「どうされますか?」
俺は少し考えた。
今までなら、魔物が相手ならリナに任せていただろう。
でも――。
「俺も行く」
リナが少し目を見開く。
「……承知しました」
「危なくなったら頼む」
「お任せください」
俺たちは冒険者たちに案内され、魔物がいる場所へ向かった。
森の入口。
そこには五体ほどのゴブリンがいた。
「私が前に出ます」
「いや」
俺は剣を抜いた。
「一体は俺に任せてくれ」
リナは俺を見る。
そして静かに頷いた。
「分かりました」
一体のゴブリンが俺へ向かって走ってくる。
俺も剣を構えた。
棍棒が振り下ろされる。
俺は横へ避けた。
地面に棍棒が叩きつけられる。
「今だ!」
踏み込み、剣を振る。
ゴブリンがよろめく。
だが、まだ倒れない。
反撃を避ける。
焦るな。
相手の動きを見る。
もう一度、踏み込む。
さっきよりも自然に剣が動いた。
ゴブリンの攻撃を受け流し、そのまま横薙ぎに振り抜く。
ゴブリンが倒れた。
「……」
俺は剣を握ったまま、倒れたゴブリンを見る。
自分一人で倒した。
その実感が、少しずつ湧いてくる。
そして――。
【スキル《剣術》を獲得しました】
「……え?」
視界に文字が浮かんだ。
「レオン様?」
「いや……」
俺は自分のステータスを確認する。
スキル欄に、新しい名前が追加されていた。
《剣術》。
「新しいスキル……」
どうやら実戦で剣を扱ったことで、身についたらしい。
「レオン様、何かございましたか?」
「新しいスキルを覚えた」
「スキルを?」
「ああ。《剣術》だ」
リナが少し驚いた。
「実戦で身につけられたのですね」
「みたいだ」
「素晴らしいです」
リナが微笑む。
「ありがとうございます」
俺は残ったゴブリンを見る。
「じゃあ、行くか」
「はい」
俺とリナは並んで駆け出した。
リナの動きは速い。
俺とは比べものにならない。
それでも、《剣術》を得たことで、さっきまでよりも剣が扱いやすくなっている気がする。
俺は一体の攻撃を受け流し、反撃する。
リナが別の一体を仕留める。
少しずつ連携が噛み合っていく。
最後のゴブリンが倒れた。
森の入口に静寂が戻る。
「終わったな」
「はい」
俺は剣を鞘に収めた。
「……ちょっと待って」
「どうされました?」
「ステータスを確認する」
俺は自分のステータスを開く。
そして、目を見開いた。
「……レベル、5になってる」
戦っている最中には気づかなかった。
いつ上がったのかすら分からない。
「おめでとうございます」
リナが笑う。
「また強くなりましたね」
「ああ」
俺はステータスを見つめる。
レベルが一つ上がった。
能力値も上昇している。
そして何より――。
スキル欄に増えた《剣術》。
「少しずつだけど……強くなってる」
「はい」
リナは迷いなく答えた。
「確実に」
俺はリナを見る。
「いつか、リナに追いつくから」
「……楽しみにしております」
「絶対だからな」
「はい」
リナは穏やかに笑った。
まだ差は大きい。
それでも今日、俺は確かに一歩進んだ。
ステータス
レオン・アストレア
職業:無職
役職:貴族
レベル:5
HP:94
MP:75
攻撃:34
防御:30
魔力:36
敏捷:35
運:19
スキル:
《チャット》
AIとの会話
遠隔チャット
剣術
称号:
アストレア家の嫡男
貴族
冒険者
リナ
職業:アサシン
レベル:10
HP:118
MP:64
攻撃:52
防御:41
魔力:27
敏捷:76
運:35
スキル:
短剣術
隠密
気配察知
暗殺術
称号:
レオンの護衛




