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聖天使クリスティーナ 「大切な友達を、見出しここに連れて帰ってあげたい」ティナとドルフィの永遠の物語  作者: ジェノヴァnovel


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第21話 ヘルゼン家の計画

挿絵(By みてみん)


◇ティナサイド◇



ドルシア様は、少し難しそうな話を

するような表情で答えた。



「それは、電磁石というものは電力が強ければ強いほど、

 いくらでも磁力を上げられるからです。

 その性質を利用して空間を圧縮し、

 時間を戻そうとしたのですよ」


「……時間を……戻す?」



 ますます話が分からなくなった。


 私は首を傾げながら、もう一度尋ねる。



「なんだかよく分からないのですけど……。

 どうして空間を歪めて、時間を

 戻そうとしたのですか?」


「それは――時間を戻して、

 若返ろうとしたのですよ」


「……あっ」



 その一言で、私はようやく少しだけ

意味を理解した。


 どうやら時間が流れるという現象には、

宇宙空間そのものが関係しているらしい。


 宇宙空間が膨張していることで、時間もまた

未来へ向かって流れていく。


 ならば逆に、ブラックホールや中性子星のような

極端な重力を持つ天体なら、その周囲の空間を

強烈に圧縮することができる。


 地上の人々は、その性質を人工的に

再現しようとしたのだ。


 強力な電磁石によって、極端に強い

重力場を作り出す。


挿絵(By みてみん)


 そして、その重力場が強くなればなるほど

中性子星に近い性質を持つようになり、

重力圏内の空間を圧縮させて

そのエリアにいる人間の時間を過去へと

さかのぼらせる。


 つまり――若返る。


 そういうことなのだろう。


 天使である私の知能指数は三百を超えているらしい。


 ちなみに、神会に属する方々は千を超えているという。


 だからなのか、ドルシア様がまるで科学者のように

語る難しい話も、私にはすぐに理解することができた。



「……なるほどです」



 私が頷くと、ドルシア様は少し嬉しそうに

 微笑んだ。


「さすが天使の娘ですね。あなたは

 理解できたようですね」


「いえ、全然です」


「……あら?」



 私は首を横に振った。



「その発電所と、私が生きていた頃の記憶が、

 どう関係しているのですか?」



 私にとって本当に重要なのは、そこだった。


 なぜ、ドルシア様は私をわざわざ人間に

戻そうとしているのか。


 なぜ、そのために人間だった頃の記憶が必要なのか。


 ドルシア様は少し真剣な表情になった。



「それは……人間たちは、その発電所で中性子星を

 作り出した後、とんでもない事故を

 引き起こしてしまったからです」


「……その事故って?」


「作り出したブラックホールを、

 制御しきれなかったのです」



 その言葉を聞いて、私は息をのんだ。



「その結果、発電所の塔はバラバラに壊れてしまいました。

 その後、修理と再建は行われましたが……」



 ドルシア様はそこで一度言葉を切った。



「ヘルゼン家――つまり、あの発電所の所有者が

管理しているスーパーコンピューターにアクセスする

ためのパスコードが分からなくなってしまったのです」


「……パスコードが?」


「ええ。そして、そのために発電所は今も

 稼働できない状態なのです」



 私は少し考えた。


 そして、ようやく一つの答えにたどり着いた。



「……分かりました」



 私はドルシア様を見つめた。


「つまり、正当な後継者である私だけが、

 そのコンピューターにアクセスするための

 パスコードを知っていた……

 ということですね?」


「そういうことですよ」



 ドルシア様は静かに頷いた。



「だから、あなたには一度、地上の人間に戻って

もらいたいのです。そして、パスコードを思い出して、

ヘルゼン家の屋敷にあるスーパーコンピューターへ

アクセスして貰いたいのです」



 そこまで聞いて、私はさらに重要な疑問を抱いた。



「そして……あの発電所を再稼働させてほしい、

 ということですね?」


「ええ」



 私は写真に写った巨大な発電所を見つめた。


 しかし、まだ分からない。


挿絵(By みてみん)


「ヘルゼン家の発電所を再稼働させて、

ドルシア様はいったい何がしたいのですか?」


「それは……」



 ドルシア様が口を開きかけた、そのときだった。


 ――コンコン。


 突然、女王室の扉をノックする音が響いた。



「……えっ?」



 私は思わず扉を見る。


 今、ものすごく大事なところだったのに……。


 すると、扉の向こうから聞き慣れた声がした。



「ドルシア様……ミルフィーヌでございます」


「お入りなさい。ミルフィーヌ」



挿絵(By みてみん)



 扉が開き、ミルフィーヌが姿を現した。



「失礼いたします。お話し中のところ

 申し訳ありませんが、天上の会議が

 間もなく始まりますので、よろしく

 お願いいたします」


「分かりました。すぐに参ります。

 それと……ドルフィーノはどうしましたか?」


「……あっ」



 ドルフィ。


 そうだった。


 ドルフィは今、お城の一階にあるロビーで待機させられている。


 しかも、ドルシア様の大きな像の前で。


 ミルフィーヌが答えた。


「はい。ドルフィーノは、ドルシア様の

 像の前で待機させてあります」


「では、彼も会議に参加させなさい」


「かしこまりました。では、失礼いたします」



挿絵(By みてみん)



 ミルフィーヌは一礼すると、女王室を退出していった。


 扉が閉じる。


 私はすぐにドルシア様へ尋ねた。



「……あのお、なぜドルフィも会議に

 参加するのですか?」


「彼は、もう私の側近同様だからです」


「側近……?」


「ええ。だからこそ、ドラゴンの勲章を

 与えたのですよ」



 その言葉に、私は少し驚いた。


 ドルフィがドルシア様の側近同様……。


 そんな話、私は今まで聞いたことがなかった。



「あのお……」



 もっと聞きたいことがあった。


 けれど、ドルシア様は私の言葉を

 遮るように、優しく微笑んだ。


「会議の後で説明してあげますから、

 あなたも会議に来なさい」


「……私も?」


「ええ。そのときに、私がなぜヘルゼン家の

 発電所を再稼働させたいのか……

 分かるでしょうから」



 その言葉を聞いて、私は頷いた。



「分かりました……。では、

 ご一緒させていただきます」


「では、十二階の大会議室まで瞬間移動

 しますので、私につかまりなさい」


「はい……では」



 私は立ち上がると、背の高いドルシア様の

身体にそっと身を寄せた。


 そして、そのお腹のあたりに腕を

回してしっかりとつかまる。


 ドルシア様も私の腕を優しく抱いた。



「それでは、行きますよ」



 次の瞬間――。


 私たちの身体を淡い光が包み込んだ。


 視界が一瞬だけ白く染まる。


 そして次に目を開けたとき、私たちは女王室ではなく、

ドルシアパレス十二階にある大会議室の前に立っていた。


 いよいよ、天上の会議が始まる。


 そして私はまだ知らなかった。


 この会議によって、自分がなぜ呼び出されたのか。


 そして、なぜドルシア様があの発電所を

再び動かそうとしているのか――。


 その本当の理由を知ることになると

ドルシア様は私に教えて下さった。

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