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3/4

青への到達

青は、なぜ緑になるのか。

私はその問いを、三日間考え続けていた。


仕事中も。


風呂の中でも。


歯を磨いている時でさえ、私の頭の中には緑色のうんこがあった。





第二回青色実験。

結果は緑。


だが、あれは失敗ではない。

私は確信していた。

青は存在する。

ただ、人間の身体が簡単にはそこへ到達させないだけだ。


私はノートを開いた。


『青色便研究』


そう書かれたページには、過去の記録が並んでいる。


・ソーダ味アイス 変化なし

・海外グミ やや緑

・青色ゼリー 緑

・腹痛 中


私はペンを置き、静かに考えた。

問題は色素量ではない。


通過だ。


食べた色が、そのまま出るわけではない。

胃を通り、小腸を通り、大腸を通る。

その過程で、色は変わる。


混ざる。


薄まる。


負ける。




私はスマホで便の色について調べ続けた。





胆汁。


腸内細菌。


消化時間。




気づけば、検索履歴が完全に終わっていた。

だが、その中で私は一つの仮説へ辿り着く。




“青を、圧倒的に増やせばいい”




シンプルだった。

人体が緑へ寄せてくるなら、それ以上の青をぶつければいい。


力技だった。


だが、研究とは時に暴力である。







翌日、私は輸入食品店へ向かった。

店内には、子供の脳に直接語りかけてくるような極彩色の商品が並んでいた。

私はその中から、最も青いものを選んだ。


青いシリアル。


青いグミ。


青いゼリー。


青い炭酸飲料。


買い物カゴの中だけ、海だった。


レジ店員が少しだけ困惑した顔をしていた気がしたが、もう慣れている。






帰宅後、私は机の上へ青い食品を並べた。


圧巻だった。


自然界への反逆のような色彩。


私は静かに頷いた。



「今日だ」



まず、青いシリアルを食べる。

牛乳が青く染まる。

食欲は減退した。


続けてグミ。


ゼリー。


炭酸飲料。



気づけば、舌も唇も薄青くなっていた。

私は鏡を見ながら、少しだけ笑った。

ここまで来ると、人間というよりインクの補充作業に近かった。




食後、私はメモ帳を開く。


『21:08 青色食品群 摂取完了』


『舌 かなり青』


『覚悟 あり』


最後の一文は、勢いで書いた。

だが削除はしなかった。


私はその日、水分を多めに取り、余計な食事を避けた。

研究に不要な色を混ぜたくなかったからだ。






そして翌朝。


私は、静かにトイレへ向かった。


心臓が少し速い。


座る。


待つ。


数分後。


私は、ゆっくり振り返った。


青かった。


私は動かなかった。


いや、動けなかった。


緑ではない。


青緑でもない。


青。


誰が見ても、青だった。


私は便器へ少し顔を近づけた。


昨日まで存在しなかった色が、そこにあった。


私は一度、トイレの電気を消した。


数秒待つ。


再びつける。


青い。


やはり青い。


私は静かに便座へ座り直した。


鼓動が速い。


呼吸が浅い。


だが、不思議と恐怖はなかった。


到達したのだ。


人類が長年見過ごしてきた領域へ。


私はスマホを取り出した。


震える指でメモ帳を開く。


『青色実験』


そこで一度、手が止まる。



本当に書いていいのか。


本当に、これは。


私は深く息を吐いた。


そして、記録する。






『結果:青 成功』






入力後、私はしばらく画面を見つめていた。


その日、私はうんこを流すまでに七分かかった。


観察のためだった。

たぶん。

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