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【50万PV突破】 戦国の世の銃使い《ガンマスター》  作者: じょん兵衛
第二部 5章 『天下覇道』

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第255話 深夜、山中の密談

 信長に仮病と偽り俺はあれからずっと京都の屋敷にいる。信長様や光秀殿、利家がたまに様子を心配してくるが全て「病気が感染するといけない」「今は人に見せられない状態」とそれで乗り切っている。

 二番隊の長可にはしばらく病気で動けないから一益殿の指示に従って動くようにと、他の隊長たちには伊賀か安土に滞在しいつでも俺の指示を受けられるようにしておけとそれぞれ命令しておいた。

 

 家族たちには危険だから絶対に京都に来るなと伝えた。京都で何かあったと騒ぎになったらすぐに安土を抜け出して伊賀へ向かえと。もちろんその道中、危険がないとも言い切れない。だが今安土の屋敷には信長に謁見するために丹波ともみじが来ているのだ。


「頼む、丹波。これから京で大事件が起きるかもしれない。もしそれが起きたら祈と信助を守って伊賀まで逃げてほしい。お前にしか、頼めないんだ」

「大事件? まぁ、とにかくわかった。大助がそこまで言うならきっと何かあるんだろ。祈ちゃんと葵丸、じゃなくて信助のことは俺が必ず守る」

「頼んだぜ、親友」

「任された、親友」


 丹波に万が一の時に祈と信助を伊賀に逃がしてもらう手はずは整った。安土には氏郷たちもいるから安全だろう。


 そして京都の屋敷には保正をはじめとする数人の伊賀忍者の精鋭と隊から選りすぐった信頼出来る精兵を配置。さらにその装備もできるだけ良い物を揃えた。屋敷も含めればかなりの額の金を使ってしまったが、まぁいい。才蔵次第では全てが無駄になるかもしれないがそれでもいい。むしろそうなって欲しいくらいだ。信長様が無事ならどんな形であろうと構わない。


 俺不在になって数か月経っても織田軍の各方面軍は進撃を続けていた。新たに織田信孝を大将に丹羽長秀を参謀に加えた四国方面軍が編成され、今は大坂で四国への侵攻の準備を進めている。

 武田を滅ぼした功績で北信濃の川中島周辺の領土を与えられた森長可は信濃から越後に侵攻した。それと同時に北陸方面軍を率いる柴田勝家とその部下の前田利家も越中・越後の上杉領に侵攻を開始した。

 中国方面軍を率いる羽柴秀吉は順調に毛利の拠点を落としていた。そして備中の要所である高松城を囲み水攻めにした。だが安芸から毛利の当主である毛利輝元とその腹心吉川元春・小早川隆景を擁する毛利の本軍が高松城の援軍として迫ってきていると聞き、羽柴秀吉は信長に援軍を求めてきた。


「それにあたり明智光秀殿と細川忠興殿たちを援軍として派遣するということです。安土と京で徳川殿を歓待した後に信長様も出陣するのでその時までに何としてでも病気を治せ!と、信長様の使者の森蘭丸様が」


 最後のセリフは信長様がイライラしながら怒鳴っているのが目に浮かぶ。その怒りを八つ当たりの形で食らった蘭丸(長可の弟)とその蘭丸に俺を連れだすように懇願された天弥、どちらも可哀そうだが俺はまだここから出る訳にはいかない。光秀殿と信長様どちらも中国地方へ行くなら俺もついて行く方がいいかもしれないが……それはその時に考えよう。



 △▼△▼△▼△


 5月29日、徳川家康から遅れること1週間、織田信長が安土から京都へ入った。

 同日、愛宕山。夜の山中で2つの集団が接触した。


「久しぶりね。来てくれて感謝するわ」

「あなたの呼びかけでなくては来なかった。こんな夜分にこんな山の中。いったい私に何の用でしょう?」


 才蔵の知らない女と明智光秀。才蔵は気配を消し、2人の会話を盗み聞く。


「いきなり本題? ひとまず入ったらどう?」


 女が建物に入るのを促すが光秀は首を振って断った。


「長話をするつもりはない。私はすぐにでも羽柴殿の援軍に発たねばならぬ。その話をしにきたのであろう、ユナ殿」


 ゆな、それがあの女の名前か。才蔵はその名前を頭に刻み込み、さらに会話に意識を向ける。


「残念だけど違うわ。今日あたしたちが来たのは毛利攻めの話じゃない。それなら援軍で到着してからでいいもの」

「ん? では何故……」

「その話の前に人払いをお願いするわ」

「……いいでしょう。お前たち、離れろ」


 光秀の部下たちは一瞬躊躇いを見せるが、さらに光秀が腕を振りさっさと行けと示すと足早に去って行く。無論、才蔵は気配を消したまま動かない。

 場に残ったのは光秀とゆな、ゆなの配下が1人……ん? さっきまでゆなの配下は2人いたはず……

 違和感を持った時にはもう遅かった。


「人払いを、お願い致しましたが。このお耳は飾りなのでしょうか」


 背筋が凍るとはこの事か。気づけば後ろにその男は立っていた。低い声が耳に届くと同時にその耳にそっと触れる冷たい手。師匠に褒められて自身の隠密を過信していたのかもしれない。気を抜いたつもりはなかった。

 その声を聞きつけ光秀とゆなの視線が才蔵に集まった。


「よくやったわ、善坊。この子、あなたの部下?」

「……いえ、知らない顔です」


 光秀が才蔵の顔をじっとのぞき込み、首を振ってゆなの質問を否定する。その答えを聞いたゆなは才蔵に近づき、その懐に入っている短刀を取り上げた。


「あなた、誰に命じられてここに来たの?」

「……」

「ま、答える訳ないか。いいわ、凡その想像はつく」


 そう勝手に納得するとゆなは自身の懐に手を入れる。殺される、そう思った。何とかして脱出できないかと術を探るが後ろの善坊と呼ばれた男の力が強くまだ子供の才蔵の力では抜け出せない。


「ごめんなさい、誰にも邪魔をされるわけにはいかないの。善坊、押さえておきなさい」


 そうゆなが言い、両手で持った何かを才蔵の首に近づける。そしてそれが首に触れた瞬間、バチッという音と雷のような光、そして体が跳ねる衝撃。それを最後に才蔵は意識を手放した。


 △▼△▼△▼△


 ユナが作った簡易スタンガンを若い忍びの首に押し当てた瞬間、若い忍びが一瞬体を跳ねさせ、直後に崩れ落ちた。とっさに善坊がその体を支え、地面に丁寧に寝かせた。

 仕方ない事とはいえ、こんな子どもにひどい事をしないといけないことに腹が立つ。そして仕方がないと言いながら躊躇いなくそれを実行できる自分が嫌いになりそう。


 そんな罪悪感を首をふって吹き飛ばし、部下2人に感情を悟られないようにいつもの声を意識して命令を下す。


「その子のこと、頼むわね。あたしたちはそこの建物の中で話をするから。正則、善坊、誰も入れない事。わかった?」

「はい! ユナ様!」


 これで本当に2人きり。小さな建物の中で光秀と向かい合う。


「わざわざ私をこんな所まで呼びだしたのです。いったいどんな話を聞かせていただけるのかな?」

「回りくどい事は言わないわ。あなたは信長様に不満を抱いているわね?」

「……何?」

「そしてそれは秀吉様も同じ。そこで提案」

「提案、だと?」


 訝しげにユナを見る光秀にユナは静かに笑い、人差し指を立てる。


「今、京都の信長様は手薄そのもの。そこをあなたの1万3千の軍で急襲する」

「何を!?」

「さらに二条御所の信忠様も討つ。でもそこで手詰まりになる。各方面軍の織田軍が取って返してきてたちまちあなたは討たれる。でもそこで秀吉様が協力すれば少なくとも四国方面軍と北陸方面軍は撃退できる。関東は北条に邪魔されてすぐには動けない。織田領の半分以上はあなたの物よ」


 どう?と言いたげに謀反について一息で言い終えたユナから視線を外し、光秀は静かに立ち上がる。


「返事を聞かせて欲しいのだけど」

「言うまでもない。そして、聞かせる意味もない」


 立ち上がった光秀は左手でつかんだ刀の鞘からゆっくりと右手で刀を抜く。


「ま、待って……!」

「あなたには確かに恩義がある。だがそれでもこれは到底見逃せぬ。ユナ、あなたを謀反の疑いで今ここで処刑する!」

 

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