49.傀儡薬師と賢者の対決 前編
年数をそれほど経なくても、キツネ娘の成長は人より早いということは知っていた。
しかし出会った時は、明らかに子供くらいに見えていただけに、目の前に見えるシヤの姿には驚くしかない。
「ふ、お前か。味方になると思っていたが、そうではなかったのか」
「アクセリ……何故貴様がパナセを連れ、彼女を従えている? 薬師パナセの能力を使う為か?」
「何? パナセの能力だと? そんなのは知らんな。能力と言えば愉快な娘ということくらいだ」
「白々しく、忌々しい賢者め! パナセの能力は貴様に相応しくない!! 悪いが返してもらう」
元々人間に対していい思いは持っていなかったシヤだったが、こうも変わるものなのか。
「何を言うかと思えば、パナセは誰のものでもないはずだが? それにしても敵と化し、そこまで悪になるとは思わなかったぞ。あの方というのは、勇者か?」
「ふざけるな! 勇者なんかに渡すものか!」
「渡す? 何をだ……?」
「パディンにいた時から気付いていたパナセの力は、人間に渡すわけにいかない!」
探る能力に優れているとは思っていたが、奴隷だった時からパナセに目をつけていたとすれば、パナセの想いとはまるで異なる。
「――それで、パナセとルシナはどこだ?」
話し合いをする気は無さそうだろうし、本題に入らねば何も進まないだろう。
「賢者の知恵で、薬師を倒してみろ! そうすれば返してやらないでもない」
「ん? どういう意味だ?」
「貴様のダークエルフ同様に、あっさりとかかってくれた……賢者に解けるはずがない」
ロサにかけたというと、傀儡による操りだ。
そういう意味らしいことを表わすようにして、薬師二人は俺の前に姿を見せた。
「うぅっ、グズッ……アグゼリざばぁ~あぅぅ~~」
「……アクセリ、私に構わず後ろの女を倒して……うっくっ、う、動けな……い」
シヤを守るようにして、薬師二人は俺の前に姿を現した。
その時点で傀儡による攻撃姿勢を俺に見せ、ルシナにいたっては短剣を俺に向けながら必死に抵抗を試みている。
パナセも一応抵抗しているようだが、すでにシヤのことでショックを覚えて泣いていたのか、涙を流しながら俺ににじり寄ろうとしている。
傀儡の黒幕にして、賊を勇者にした気配の奴がシヤだったとは、正直意外だった。
面識の無かったロサを油断させて傀儡出来たのも、納得といえば出来ることでもある。
果たしてコイツの狙いは何なのか分からないが、勇者を利用しながら近付こうとしている”あの方”がどこの野郎なのかは、ハッキリと確かめておく必要がありそうだ。




