表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
52/83

第52話_Cランクへの戦い_中編

 3層の突破まで、二十二分かかった。


 これまでの来訪者で最長だ。Cランクのパーティが3層を突破したのは十分だった。蒼炎は二倍以上の時間がかかったことになる。


 ただし突破されたのは事実だ。


 シアが念話を入れてきた。


『ケンジ、3層が突破された。植物、効いた?』


『効いた。コボルトの奇襲が二回通った。ライオスが噛まれた』


『でも突破されちゃった』


『最初から止め切るつもりはなかった。消耗させることが目的だ。二十二分でそれだけ削れれば十分だ』


『そっか』シアが少し間を置いた。『4層にはわたしも何かした方がいい?』


『今日は待機していてくれ。シアが権能を使える状況を温存しておきたい』


『わかった』


────────────────────────────────────


 4層に六人が入ってきた。


 4層はコボルト集中配置の層だ。コボルト六体が暗がりに潜んでいる。


 ライオスが4層に踏み込んだ瞬間、動きが変わった。大剣を背中に戻した。代わりに腰から短い刃物を抜いた。狭い空間向けの武装だ。戦場に応じて武器を変える、という判断の速さだ。


 コボルトが出た。


 ライオスが反応した。今度は前ではなく後ろに下がった。コボルトが飛びついた先に誰もいなかった。後衛の弓使いが矢を放った。コボルトが落ちた。


 右側から別のコボルトが来た。ライオスが短刃で弾いた。それを合図に、後衛全員が展開した。


 四方からの同時対処。六体のコボルトが五分で処理された。


『速い』


 俺はその速さを確認しながら、次の手を考えた。


────────────────────────────────────


 5層の強化オークが前に出た。


 ライオスが立ち止まった。


「また強化個体か」


「2層のより大きい」と後衛の一人が言った。


「だから面白い」ライオスが大剣を抜き直した。「散れ。三方向から」


 六人が展開した。前衛が三方向に分かれた後衛をカバーしながら、強化オークを囲んだ。


 この戦い方を見て、俺は何かを思い出した。


 最初に来たCランクのパーティ、女の冒険者が率いた五人組。あの五人は一つずつ対処していた。今の六人は全員が同時に動いている。役割が完全に分担されている。


 強化オークとの戦闘が始まった。


 ライオスが正面から圧力をかけた。後衛の魔法使いが両脇から炎を入れた。短剣使いが低い位置から足首を狙った。弓使いが後方から首筋に矢を当て続けた。


 十五分。強化オークが倒れた。


 消耗品が使われた。回復薬が二本。それでも六人の動きは安定している。


────────────────────────────────────


 6層に入ってきた。


 水の層だ。


 ライオスが水面を踏んだ。


「水か」


「膝まである」と短剣使いが確認した。


「知っている。入る前に聞いた」ライオスが続けた。「水底に何かいる可能性がある。足元から目を離すな」


 事前情報がある。誰かから聞いてきた。今日の来訪前に、ここを調査した者がいる。


 俺は水底のゴブリン四体の位置を少し動かした。前回と違う配置だ。


 六人が慎重に進んだ。水の中に足を入れながら、水面と水底を同時に意識している。


 ゴブリンが動いた。俺が新しい位置から出させた。


 一体が弓使いの足首に噛みついた。弓使いが体勢を崩した。


「右後方」とライオスが即座に叫んだ。


 短剣使いが振り返った。もう一体が水面から飛び出した。短剣で受けた。


 六層の戦闘は十五分続いた。一人が消耗品を三つ使った。ゴブリン四体が倒された。


 突破された。だが今日最大の消耗品消費が6層で起きた。


────────────────────────────────────


 7層に入ってきた。


 炎の層だ。


「トラップ床がある。前回の情報では七枚だったが、今回は変更されている可能性がある」と魔法使いが言った。


 また事前情報だ。前回誰かが来て記録したものを持っている。


 俺は今日、トラップ床の一部の位置を変えていた。七枚から九枚に増やした。元々の七枚の位置は半分を変えた。


「全員、一歩一歩確認しながら進む」とライオスが言った。


 六人が慎重に進んだ。床を叩いて確認しながら進む作業だ。時間がかかる。


 魔法使いが「この床、反応が違う」と言ったところで、踏んだ瞬間に炎が噴き出た。


 魔法使いが後ろに跳んだ。天井からも炎が来た。両方からの炎に一瞬包まれた。


 リスポーンの判断がされた——かと思った瞬間、魔法使いが魔法で炎を相殺した。自分の炎で周囲の炎を打ち消した。


「やるな」とライオスが言った。「でも消耗品が痛かっただろう」


「三つ使いました」と魔法使いが答えた。


────────────────────────────────────


 8層に入ってきた。


 ループ迷路だ。


 六人が最初の分岐で立ち止まった。


 魔法使いがノートを取り出した。


「マッピングします」


「頼む」とライオスが言った。


 六人が慎重に進んだ。分岐のたびにノートに書き込む。壁の形を確認する。天井の高さの変化を記録する。


 だが今日の8層は前回と少し変えてある。シアが壁面の凹凸のパターンを変えた。同じルートに見えて、細部が違う。


 十分後、魔法使いが「ここ、通った?」と聞いた。


「通ってない」と短剣使いが答えた。


「でもこの傷、記録に似ているものがある。似ているが違う」


 ライオスが立ち止まった。


「ループしているか」


「可能性があります」


「迷路を作り替えてきた、ということか」ライオスが洞穴の天井を見た。「頭を使うダンジョンだ」


────────────────────────────────────


 8層での混乱は十八分続いた。


 コボルトが七体出た。ループの錯覚の中で、方向感覚が乱れた状態での戦闘だ。短剣使いの一人が足をもつれさせて倒れた。コボルトが二体飛びかかった。


 リスポーンした。


 装備なし、魔力なし。入口に戻った。


 残り五人。


 五人の判断が変わった。マッピングをやめた。ライオスが判断した。


「感覚で進む。ここは頭より体で覚える場所だ」


 そこからの動きが変わった。マッピングを捨てて、ライオスの直感で分岐を選んでいく。


 十分後、出口を見つけた。


 8層突破まで二十八分。今日最長の戦闘だった。


────────────────────────────────────


 9層に入ってきた。


 暗闇の層だ。


 コアの光を完全に絞った。9層だけが完全な暗黒になる。


「……見えない」と後衛の誰かが言った。


「わかっていた」とライオスが言った。「炎の魔法で照らせるか」


「できますが、消耗します」と魔法使いが答えた。


「使え。深さを優先する」


 魔法使いが炎の球を灯した。9層に光が入った。


 そこに待っていたのは、コボルト八体だった。


 暗闇の層では、コボルトが元の位置に潜んでいる。炎が灯った瞬間、全員が見えた。


「多い」と誰かが言った。


「でも見えている」とライオスが言った。「数はこちらが上だ。叩く」


 戦闘が始まった。


 だが今日の9層は前と違った。


 俺は炎のトラップを9層にも追加していた。コボルトが炎の光で視認されても、その光の中にトラップが仕込まれている。見えることを前提に、見えているものの中に罠を置く設計だ。


 弓使いが一歩踏み出した。


 床から炎が噴き上がった。


 今度はリスポーンが発動した。


────────────────────────────────────


 残り四人になった。


 ライオスが片手を上げた。全員が止まった。


「……予想外だ」ライオスが静かに言った。「光がある前提の罠を仕掛けてきた」


「学習している」と魔法使いが言った。「前回の情報を分析して対策を組んできた」


「このダンジョンは毎回変わる」


「そういうことです」


 ライオスが少し笑った。


「余計に面白い」


 四人が9層を進んだ。今度は足元を確認しながら、慎重に。コボルトとの戦闘と床の確認を並行しながら進む、複雑な状況だ。


 9層の突破まで三十二分かかった。


 四人が10層の入口に立った。


────────────────────────────────────


 10層に入ってきた。


 ここがコアへの最後の層だ。


 通路の奥に、ガルムが立っていた。


 三段階強化済みの強化オーク。これまでより体格が大きい。体表の硬化が増した。目が赤く光っている。


 ライオスが立ち止まった。


 しばらく、ガルムを見た。


「……でかいな」


 隣の魔法使いが「強化が増している。前の情報と違う」と言った。


「準備してきた、ということだ」ライオスが大剣を両手で持ち直した。「コア、聞いているか」


 シアが念話を確認した。


『聞いている、と』


「聞いているそうです」とシアが伝えた。


「今日は深くまで来た」ライオスがガルムを見たまま言った。「この先を見たい。もう少しだけ、付き合ってくれ」


 それからライオスが前に出た。


 ガルムとの戦闘が始まった。


────────────────────────────────────


             *


DP残高:301,200P(戦闘継続中・収支未確定)

配備戦力:ゴブリン×8体(強化2含む・各層で消耗) 強化オーク×1体(5層・消耗) 強化オーク【ガルム】×1体(10層番人・戦闘中) コボルト×6体(8・9層で消耗)

落とし穴×17か所 毒ガストラップ×3 火炎トラップ×3(9層にも追加) 魔法陣トラップ×1 宝箱×1

本日の進捗:蒼炎・1〜9層突破(消耗品大量消費・メンバー2人リスポーン)。現在10層ガルムと交戦中。

各層突破時間:1層7分・2層8分・3層22分・4層5分・5層15分・6層15分・7層12分・8層28分・9層32分

課題:ガルムがBランク4人を相手にどこまで持ちこたえられるか。コアへの道を死守。


────────────────────────────────────


続きを楽しんでいただけたら、ブックマーク・評価いただけると励みになります。


次話は明日の17:00に投稿します。

1日1話投稿の予定になります。


よろしくお願いいたします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ