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ワンダーティース!  作者: 梢田 了
白黒つけるぜ武闘祭!
76/117

第七十六話 素晴らしいですね ~帝都よりの者、〝赤棺〟と〝藍杯〟!~

 焦燥の心、事態に追いつかず。

 ランナードラコへ振るわれる手綱から、リーダー・ヘイズの動揺が見て取れた。いつもよりも無理をさせる形で、しかしこちらの要求に応えようと息を荒げるランナードラコの白ちゃんには頭が下がる勢いだ。

 繋がる荷台に乗るレイニーとノノムラの表情も不安げだ。

 始まりの町ドリームホップよりヘイズらの移動ルートへ先回りしていたダイテツ、カンナの二人と接触したのは一時間程前の事だ。

 〝光の〟アンダルーシカから受けた言葉により、何か良からぬ動きがギルド内部にあることを知ったヘイズは、未だに本調子でないダイテツと黒ちゃん、そしてカンナを一緒に行動させ、自らは先に〝アップルバレー〟へ向かうべく白ちゃんを走らせていた。

 状況が状況だ。黒の集団がうろついている事を知ったヘイズは彼女らに町へ戻るよう伝えているが、その判断が正しいものか自分でも区別がつかなかった。

 しかし、それでも戦力は必要だ。始まりの町と、自分の側に。

(プレイヤーを見捨てる指示を、ギルドが……トワが出したのか……! 十器が動いているというのならば、おそらくは〝赤棺(セキヒツ)のメスヌア〟が、奴が来ているんだな!)

 あの、見下した笑みとその視線。一度たりとて忘れはしない、帝都よりの者、十器がひとつ赤棺のメスヌア。

 ヴァーダン神父がギルド戦争と呼ばれたギルド同士の闘争を引き起こした人物なら、赤棺のメスヌアはその戦禍を広げた大罪人だとヘイズは認識している。

 そして何より、生き残った彼を偽り、〝虐殺者(ジェノサイダー)〟の下へ導いた人物でもあるのだ。

 そのような人間が動いているとあらば、ギルドにとってだけではない、他の組織にすら影響を齎しかねないと彼は考えていた。それも恐らく、彼が反対するであろうことを成そうとしている。

(今回の件だけではないな、会合の時間を早めるという事は。転移のマジックアイテムが、いやせめて、通信機能を持つマジックアイテムが使えていれば!)

 アンダルーシカの指摘通り、ドリームホップからの出立と同時に機能を失ったマジックアイテムによりアップルバレーの状況は掴めない。転移用のマジックアイテムもこの事態を知らせようとしたダイテツ、カンナによって使用された為、再使用には時間がかかる。

 カンナの言では、それこそアップルバレー到着後だ。それでは意味がない。

(……先にカンナだけでも……いいや、カンナだけでは影響力はない、他を誘導することも出来ないはずだ。それはわかっているが!)

 勿論、そのような事態にならない事も考えられる。彼の想定とは違い、ただヘイズを邪険するトワが会議から遠ざけただけかも知れない。それはそれで問題はあるのだが、今の状況よりはずうっとましだとヘイズは考えていた。

 だが、実際に、アンダルーシカの言葉が本当であるならば、ギルドはプレイヤーの見殺しを受け入れて帝都側についたこととなる。その帝都側の考えを持ち出しているのが赤棺のメスヌアだと言うのならば、彼女はこちらの兵力を利用するだけ利用するのだろう、それも世の為人の為を謳いながら、我欲の為に。

「急いでいるようだなぁ、ヘイズ」

 耳元で溢れた声に目だけで辺りを探る。声だけを飛ばしたのか、彼らの進路上にその男は立っていた。荒野の熱の中で、軽薄な笑みを浮かべる半裸の男。毛皮の帽子に黒い大きなサングラスをかけた、ザルファロだ。

 元々、険しかった顔を更に険しくしてランナードラコを男の前で止める。何者かと問うノノムラとレイニーへは知人だとだけ答え、荷台から降りないよう命じた。

 武器を取り、その背に携えて歩むヘイズに随分な態度だとザルファロは哂う。

「何の用だ」

「険しいねえ。俺とお前の仲だろう」

 帽子を取り、足元へと転がす。その帽子は黒い霧を生むと形を変えて、紫色に光る玉へと変じた。そのまま足元に魔法陣を広げるそれに、背の握りへと手を伸ばすヘイズ。

 ザルファロは慌てるなと頭を掻いてサングラスを取った。

「困ってるんだろう、ヘイズ。助けてやるよ。アップルバレー付近への直通口だ」

「ふざけろザルファロ。俺たちの仲間を襲ったな。今も取り巻いているんだろうが、光のアンダルーシカにやられたそうじゃないか。それでこっちに狙いを変えたのか?

 そんな安っぽい手口を使う程、臆病風に吹かされたって所だろう」

 安っぽいのはどちらだ。ザルファロは笑みを濃くして腕を組んだ。

 この男に挑発は有効でないとわかっているが、それでも言葉を繋げてしまうのは彼の敵対心の表れだろう。ザルファロはそれを見透かすように、襲ったのは自分ではないのだと主張した。

 そもそもが頭を四部にする彼らは平等であり、お互いに強制力を持たない。だからこそ意見の食い違いもあれば足並みすら揃わない時も多々あるのだ。

 組織として成り立っていないようにすら見える彼らだが、それでも組織として機能するのは、手段はどうあれ目的を同じくする同志だからだ。

「ヨギルは攻撃を選択した。だがこの俺はあんたらを生かしても良いと考えている。まぁ、前も言ったが一部には死んで貰うがな」

「…………。何でそんなことまでこの俺に話す? 組織の内情まで告げて、お前にメリットがあるのか?」

「メリット? まだそんな段階じゃあ無いだろう、俺たちは。信頼が無い。信頼を得なくちゃあならんからな」

 ザルファロの言葉に、ヘイズは肩から力を抜いた。

 この男は交渉というものを理解しているのだと、そう感じさせるに十分な言葉だったのだ。

 彼はレイニーに声をかけ、白ちゃんを魔法陣の元まで進ませる。

「言っておくが、恩義には感じないぞ。お前らに対しての敵意が薄れると思えん」

「構わんさ。お前の選択が重要なんだ」

 にやけた面に只ならぬ気配を感じたのか、ノノムラとレイニーは警戒を強めている。

 その感情を解くようにヘイズは彼らを見て何事か声をかけようとしたのか、口を開く。

 それとほぼ同時に、背負う剣を抜き振り向く動きを力に変えてザルファロの脳天目掛けて鉄塊を振り下ろした。

 不快な鉄と鉄の擦りあう音が鳴り響き、ヘイズの剣が荒野に叩きつけられる。轟く音と巻き上がる砂塵。その中で瞬きひとつせず、ヘイズに不愉快だと言わんばかりの表情を見せ付けるのはザルファロだ。その両手にそれぞれ一本ずつ鉄の棒を従えていた。

 これでヘイズの大剣の一撃を反らし、撃ち落したのだろう。

 ヘイズの唐突の攻撃にノノムラですら非難の声をあげたが、レイニーは別だった。ザルファロを完全に敵として認識し、自らの武器を構える。

「今ので斬られてくれていれば、気楽だったかな」

 うんざりとした様子のヘイズは武器を再び背負うと、レイニーにも武器を下げさせた。

 これで、このザルファロの実力がヘイズと同等以上だという事が証明されてしまったと、そう言うのだろう。不意打ちをあっさりと見切って反応したこの男、軽薄な笑みに似合わぬ歴戦の勇士とも言える実力があるのではないか。

 ザルファロもすぐに機嫌を直すと、リーダーとしての名に恥じる浅慮であるなと笑うのだが。

「浅慮なものか。むしろ、ここで殺し合う選択肢を外しただけ良いだろう。

 レイニー、ノノムラ、この男の事は忘れてくれ。何処で会ったとしても、俺達の敵であることに変わりは無い」

「ええ? リーダー、……それは……」

「……おいおいおい、まさかこの人って……」

 その正体に勘付いたのだろう、二人は慌てたように互いに顔を見合わせる。

 ザルファロは面白がり、ならば罠でもありそうなこの魔法陣へ、何故に仲間と共に来たのかと問う。

「俺は〝力〟を取引に使う奴を知っている。だから、そういう奴は信用しない。お前はまず信用を得るためにリスクを負った。俺もリスクを負わされているが、同じ土俵に立つというのなら、自分の都合の良い部分ぐらい信用してやるさ」

「ふうむ。ならヘイズに都合の悪い部分も信用させるようにしてやれば、俺の勝ちとなるのかねぇ」

 言っていろ。

 腕を組み睨みつけるヘイズを真っ向から見返して、ザルファロはサングラスをかけ直す。溢れ始めた光にノノムラが不安そうな顔を見せていたが、ヘイズはその目をザルファロからそらす事はしない。

 それでこそだ、ヘイズ。

 ザルファロはその様子に、かつて彼が傭兵として戦い続けていた事を、その時の〝牙〟が抜けていないであろうことを認識したのだ。

「どれだけ生温いことを言いやがろうと人の本質は変わらねえ。お前ら〝二人〟を、俺は待ち続けているんだぞ」

 光が消えて、人影無く。

 ザルファロは浮かべた笑みを消すこともなく、それだけを言うと地に転がる帽子を拾った。



   ◇ ◇ ◆ ◇ ◇



「以上です。不服無く、我らは帝都の意思に従いましょう」

 静かな室内に凛と響く言葉。薄暗い縦長の部屋にはその形に合わせたように大きな長机が設置され、そこに座する者らの殆どは緊張した面持ちだ。

 声を発した女は整った顔立ちで、その声に違わず凛として美しい印象を見る者に与えるだろう。しかし切れ長の目に灯る光は鋭く、威圧的な雰囲気を放っていた。女は長い黒髪を後ろで束ねて一人立ち、傍らに座る二人連れに頭を下げている。

 白を基調とする礼服に身を包み、藍色の肩掛けをする者は女の言葉に神妙な顔で頷き、それとは別にまるで時代劇から出て来たかのような和装の女はこちらもまた白でまとめられ、赤のマフラーを首に回して、詰まらなさそうな顔で女を見返した。

「素晴らしいですね、ギルドマスター・トワ。女ながら〝姫士(キシ)〟の字に違わぬ見事な統制力です」

「……それは……どうも、ありがとうございます」

 手を叩く女にトワは俯けた顔を固めたが、何とか礼を述べた。姫士の名、彼女はそれを好いてはいない。同ギルドメンバーがそれを言えばすぐにでも鉄拳をくれる所だが、目上とトワが判断する彼女らにそれをすることは無い。

 それ所かこの和装の女は、性格に難がある。機嫌を損ねるのは控えたいのがトワの考えだ。

「まあ、正直に言えばこの中で、少なくとも一人は反対されると思っていたのですが。随分と気が小さいようで助かりました」

「メスヌア、失礼ですよ」

 柔和な笑みに対して挑発的な物言いの和装の女、〝赤棺のメスヌア〟に彼女と行動を共にする〝藍杯のジューダ〟はその言葉を嗜める。前髪を上げたその顔は端正で涼やか、線の細いきらいもあるが、そこらの女が思わず眼で追うであろう美貌だ。

 メスヌアもまたトワに負けずとも劣らない優れた容姿を持つが、その口振りと他者を見下す不穏な空気が体からも滲み出て、彼女を好く者は少ないだろう。

 そして、そんな彼女の言葉に反応する者も居る。

「せっかく話がまとまろうってんだ、うちのギルドマスター様の素晴らしい統率力でな。なのにそこに水を差すつもりかよ十器の赤ボケはよー」

 頬を引き攣らせて犬歯を見せるその男、光のアンダルーシカだ。椅子に座ったまま、威嚇するように下から睨みつける不細工な面を、メスヌアは面白がるように見つめていた。挑発するように引き上がる口角に彼の目はますます鋭くなり、怒声を発して立ち上がる。

「座れ、アン! 分を弁えろ!」

 トワの叱咤にアンダルーシカは屈辱に顔を赤く染めた。それはメスヌアを喜ばす結果となり、それが更に彼の激情を誘う。

 が、ギルドマスターの言葉は彼にとって第一だ。そっぽを向いて不貞腐れたように鼻を鳴らすアンダルーシカにトワは溜息を吐きながらメスヌアに非礼を詫びた。ジューダはこちらにこそ責任があると申し訳なさそうに俯いて、メスヌアにも詫びるよう言葉を投げるが、彼女はそれを済ました顔で流すだけだ。

「ともあれ、皆様のご協力を得られる事に帝都、並びに十器を担う者としてお礼を言わせて下さい。ありがとうございます」

 トワを席に着かせ、代わりとばかりに立ち上がったジューダは一人一人の顔を覗くようにしながら頭を下げた。メスヌアと違い丁寧な対応、だからこそこの女と組まされたのだろうかとすら思える低い姿勢だ。

 ジューダはメスヌアにちらと視線を向けるが、肩を竦めるだけで礼の言葉も無さそうな彼女にひっそりと溜息を吐く。最もメスヌア本人としては、先のアンダルーシカへの挑発をもって礼としたつもりなのであろうが。

「今回、ご参加いただいたギルド〝世界の剣と盾〟、〝タナトアルの夜明け〟、〝スマイリー〟、〝ブラスト・バッシュ〟の皆様には、追って通知を行います。帝都より、全世界に向けてこの件を発信し、他ギルドやプレイヤーの参加を広く募りますので、どうか皆様には彼らをまとめる為に――」

 ジューダの言葉の途中で、大きなノックが室内に響く。

 何事かと出入り口たる扉に視線を向ける面々に対し、僅かに開いた扉から面倒だとばかりにグレンが顔を覗かせた。

「ヘイズの奴が来たみたいだぜ」

 彼の言葉にトワは眉を潜めてアンダルーシカに視線をやれば、慌てて目を逸らす男の姿がある。

 何か細工をしたか。険しい表情を浮かべるが、しかしトワは彼を通すようにとグレンに伝えた。ジューダとメスヌアも異論はないようで、トワに促されてジューダは席に着く。

 それから数秒と経たず、乱暴に扉を開いたヘイズが部屋の面々を見回した。その中で一人、面白そうにこちらを見やるメスヌアを視界に収めて、鬼のような形相を浮かべる。

「メスヌア、貴様、今度は何をやろうって魂胆だ!」

「お黙りなさいヘイズ。〝赤棺のメスヌア〟と呼べ。同位より下の者が気安く呼んで良い名ではないぞ」

「ふざけるなよ女狐が。トワ、俺を追いやって、こいつらに何を吹き込まれた!」

「座れヘイズ。まずは非礼を詫びてな。会合に遅れた挙句に喧嘩腰とはいい度胸だな」

 貴様がそれを仕組んだのだろうが。

 吼えるヘイズに対して、何のことだとトワはすまし顔だ。その様子、赤棺と非常に良く似て、ジューダはとんだ役者だと苦い顔をする。荒い呼気をそのままに、苛立ちを隠せないヘイズに対して、落ち着いて席に着くようにと促したのはタナトアルの夜明けのギルドマスター、ゲイリックだった。

 無精髭に刈り込んだ時から幾分伸びたか無造作な髪と不恰好だが、その服だけは藍杯のように白を基調とした礼服だ。ゲイリックの言葉は過分に嘲笑の含まれるものであったが、ヘイズを落ち着かせる効果はあったのか彼はそれに従うように席に着く。

 鼻を鳴らしてそれを見ていたアンダルーシカは、戻した視線の先でこちらを睨みつけるトワを捉えて、再び顔をそらした。

「ヘイズ、まずは決定事項を告げておく。

 我らギルド世界の剣と盾、そしてタナトアルの夜明け、スマイリー、ブラスト・バッシュは帝都戦力の傘下に就き、この世界の無法者である〝黒の集団〟と〝獣の魔王〟を排除する事を目的として、結束する事を約束したのだ」

「……魔王……魔王だと?」

 トワの言葉に眩暈を覚える。黒の集団との決戦、それに向けての準備と予想はしていたのだ。だが、まさかここまでの事態に発展しているとは、ヘイズも考えてはいなかった。

 思わず他の番隊をまとめる者や別ギルドの面々の顔を見回すが、誰もそれに異を唱える者はいない。ヘイズはその事にも衝撃を覚え、声を荒げて立ち上がった。

「帝都が魔王を討伐すると言ったのか、それを俺たちに付き合えと!?

 冗談じゃない、奴の力を知っているだろう。数を集めても無意味だ、ただそれを超える者がいない限り打倒は有り得ない! 弾避けの壁にされるだけだ、死ぬんだぞ。意味すら無くな!」

「決定事項だと言ったぞ、ヘイズ。お前一人が喚いた所で答えは変わらん」

「ふざけるなよトワ、ギルドの理念はどうした。俺たちのギルドには戦闘に向かないメンバーも沢山いるんだ、それも巻き込む気か? 俺は認めないぞ、こんなやり方!」

「彼らだけじゃない、この世界のプレイヤーを守る為に、我らは立ち上がるのだよ。理念がどうのと言っていられるものか、自分から隊の長などに身分を下げて、責任から逃げ出した貴様が口を挟めるものではない!」

 机に拳を打ち下ろすトワ。睨み合う両者に対し、諸手を叩いてメスヌアは笑みを見せた。怒りに目を血走らせたヘイズ、その顔を見てゲイリックは目を見開く。

 武器が無くとも、今にも飛び掛りそうな男に牽制したのは、トワでもなく増してやジューダでもなく、アンダルーシカだった。

「ヘイズよぉ、てめ子供の駄々みたいな事を繰り返してるんじゃねえよ身内以外も居る所でみっともねえ」

「お前もこれに納得しているのか、アンダルーシカ。メスヌアはお前らのギルドもあの戦争に駆り立てた女だぞ、それに良いように使われる気か!」

「うるせえよボケヘイズ、そういうのを私情って言うんだ。俺ぁこの女は八つ裂きにしたいぐらいに嫌いだがそれとこれとは何の関係もねえんだよー。トワの言う通りだぜ、たかが隊長一人の分際でギルドの総意をひっくり返せると思ってるのかよ?」

 利用されているだけだ。ヘイズの言葉にも嘲笑を返すのみ。孤立する男に対して茶番はもう良いかとメスヌアは立ち上がる。

 トワの言った通り、決定事項なのだ。ヘイズがどれだけ反対しようが結果は変わらない。それこそ協力しないと言われても、彼という戦力が失われようと、このギルドを束ねた総戦力からすれば微々たるもの。

「私たちもそう、暇ではないのでここらで失礼しますよ。内輪揉めは内々で処理して下さい」

「…………、失礼します」

 ジューダは不憫に感じたのか、ヘイズに哀れみの目を向けて頭を下げる。

 悠々と部屋を出て行くメスヌアにジューダは続き、もう一度、頭を下げて扉を閉めた。トワは、言うべき事は何も無いとして、解散を宣言した。

 怒りに震えるヘイズに対して、ゲイリックは後で顔を貸せと耳打ちする。アンダルーシカは彼に見せ付けるように、自分の頭を指でぐりぐりと指して挑発していたが、それに対してそこまでの怒りは感じなかった。

 目の前に立つ女が、どうしても許せないのだ。

「ヘイズ。お前の言いたい事は分かっているつもりだ」

「……本当にそうか……?」

「ああ。だから、私はお前と違うのだ」

 目を合わせる事も無く、そう言ってのけたトワ。来るべき時には期待していると、身勝手な言葉を足して部屋を出て行く彼女に、ヘイズは怒りに任せて机を叩いた。

 十器より、〝赤棺のメスヌア〟と〝藍杯のジューダ〟の登場です。

 彼らの名は〝緑座のモルファーン〟が自らの魔力と同時に渡す字ですが、それがそのまま身分を表す新たな名として使用されます。帝都からも特別な権力を与えられている彼ら十器の中にはそういったものに興味を持たない者も居ますが、メスヌアのような力を重んじる者の場合はその名に誇りを持つ場合もあります。

 それだけにメスヌアは自らの立場を振りかざす面が多いので、多方に嫌われているようです。個人的には好きなキャラクターだけに、ようやくの登場が嬉しい限り。

 これからも十器の面子は裏にも表にも干渉していきます。それぞれがそれぞれの思惑で行動しているのでトバリにも大きく影響するので、書く身としても楽しい部分があります。

 これからも更新、頑張っていきたいと思います。ご読了、ありがとうございました。

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