第四十話 ナニコレ……いやなにこれっ!? ~自称歴代四位の破壊力!~
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衛兵二人に挟まれて、拘置所から出て来た少女。その顔は後悔故か二日酔いか、げっそりとやつれていた。
屈強な衛兵二人は迷惑そうな目でフューを見下ろして、投げるように少女を渡した。それを肩で受け止めて倒れぬよう支える彼女へ、トバリの所持していた武器、そしてワイルドビーストは彼女たちが滞在する間はこちらで預かると宣告されてしまう。
フューとしてはそんな物騒なものとせいせいする程だ。しかしトバリには余程ショックであったのか、体調を押してもそこはどうにかならないかと訴える。訴えた所で逆に叱り付けられるのみであるが。
はっきり言えば殺処分にならないだけ寛大な処置だ。
フューは力の入らぬトバリを引き倒して、衛兵らにお勤めご苦労と労いつつ追い払う。
二人になったが行き交う人々の視線は集うものだ。拘置所の前、それも昨日の夜に大暴れした主役があれば仕方の無いことと言えた。
「トバリちゃんさあ、自分の立場ーっての、わかってる?」
「わかってまふう」
黒服の集団がいつ襲ってくるとも分からん時期に。
ぐったりと地に沈む少女に頭痛を感じてこめかみを指で押さえる。
とりあえずは移動と、少女を背中に乗せたフューは近くの宿泊施設へ向かった。
柔らかなベッドの上に、汗を洗い流すこともなく沈み込む少女を見下ろして、溜息ひとつ。
本来ならば二日酔いなど、術式ひとつで解消できる問題ではあるのだが。フューとしては反省の意味を込めてそのまま苦しむべきと判断したのだ。
トバリ自身は未成年であるにも関わらず飲酒をした上に、建物を丸々ひとつ潰したことから拘置所入りとなった。
が、その建物の持ち主に唆された上に被害がそこだけということもあり、フューが多量の金貨を納めたことで超法規的に拘置だけで済んだのだ。賄賂、と言えばそれまででもある。
思わぬ出費だと肩を落とす彼女に対して、今回ばかりは申し訳ないと喘ぐように謝罪する。
どうしてこんなことになったのか。目立たぬよう行動すべきとして酒を飲んだのに。
呆けるトバリの脳天に平手を打ち下ろして、理由は不明ながらも踏み出す一歩が間違っているのだとフューは怒り顔だ。
けれども、しかし。
少女なりに考えてやったことなのだ。フューが頭痛に呻く少女の上で右手を掲げると、イヤリングに着いた紫色の珠が薄く輝く。
それに呼応して黒い魔法陣が虚空に出現。降り注ぐ細やかな黒の粒子は光を映して煌き、少女の頭痛を消し去った。
「……あれ、なんか気分が良くなってきた……」
「今日はサービスね」
ウインクするフューになんのことかと問うトバリ。
しかし直後に腹の音が鳴った為、その問答は一瞬で少女の頭から零れ落ち、なにか食べ物をと催促する。
フューはしばし考え込み、少女の所持金を聞く。聞かれて腰袋から取り出す硬貨をフューへと差し出す。
銅貨が一枚、銀貨が三枚、二金貨が一枚。合わせて十万とんで三百一メダルである。
一メダルを一円と換算するならば、それなりの金額ではあるが。フューは難しい顔をした。
(この世界でその金額はなぁ。マジックアイテムに手を出すには不足だし、旅の用具を揃えるにも心許ない。本当に食費、雑費って感じね)
バイトを探すべきか。
フューは一人嘯いて、とりあえずは飯も食える酒屋へ移動しようとトバリを誘うと、少女は元気良く頷いて寝床から這い出てきた。
彼女らが向かったのは宿泊施設の真向かいにある料理店だ。前日にトバリが破壊した酒屋で紹介された場所だった。
盛況する場へ乗り込んだ二人へ、いらっしゃいませと景気の良い言葉が飛び込んでくる。
「二人、空いてます?」
「今は……大変混んでおりまして……。相席となりますが、大丈夫ですか?」
「大丈夫、大丈夫!」
店員に案内され机のひとつにつく。隣に座る女性はのんびりとした調子で会釈した。
その顔を見て目を丸くするトバリに、こちらもまた目を丸くする。
「トバリさーん!」
「カンナさ――はぐぅっ!」
会いたかったと涙すら見せるカンナの乳房に首をあらぬ方向へと曲げられた少女。
どこか幸せそうな表情に対してフューは冷めた目をカンナに向けていた。
挨拶もなにもなく、唐突にその胸を少女の後ろからはっしと掴む。
「はうっ」
「……ナニコレ……いや、なにこれっ!?
デカいにも程があるでしょ!?」
「あっ、駄目っ、……そんなに乱暴に……助けてトバリさん!」
「べぶっ、…………」
無遠慮に揉みしだくその魔手から逃れるように、更に強くトバリを抱きしめたために少女の首が更に角度をつけて捻り曲がった。




