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龐統が転生したら、諸葛亮は中原を統一できるのか?  作者: 鳳啼西川


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第六章:夷陵焔・上篇 智弈

章武元年の夏、秭歸。蜀軍の連営は、歴史に伝わるように川辺に平らに延び数百里に及ぶ息詰まる陣形ではなかった。龐統の強い主張により、営柵は山の起伏に従って構えられ、要衝を扼し、各営の間には険道と隠密な応援通路が設けられていた。一見分散しているように見えて、実は疎ながら漏らすことのない巨大な網の如く、その核心は劉備の御営が置かれた猇亭の高地である。


戦が始まるや、確かに疾風落葉を掃うが如くであった。復讐の炎と精悍な涼州鉄騎を先陣に、蜀軍は呉軍の数道の防線を相次いで破った。古将の黄忠は戦いを求むる心焦がれ、部隊を率いて猛攻し、呉将の潘璋を陣中で斬り関羽の仇とせんと欲したが、不運にも伏兵に遭った。奮戦して潘璋の部将史蹟を討ち取ったものの、自らも流矢に傷つき、営に帰った後は傷勢が悪化し、この五虎上将最後の生き残りは、猇亭の大営にて静かに逝った。臨終の際、彼は劉備の手を固く握り、龐統を見据え、ただ二語を残した。「慎進……」憤悲と戒めが、蜀営に充ち満ちた。


劉備は悲しみのあまり打ち震え、復讐の炎はいよいよ烈しくなった。しかし龐統の心は、ますます沈静冷徹となった。黄忠の死は、呉の粘り強さと陸遜の用兵「忍んで後に発する」という自らの判断を裏付けるものであった。彼は中軍の大幕に坐し、目の前には馬超が軽騎を命じ命がけで描かせた呉軍深層の防備略図があった。呉軍の主力は夷道・猇亭の線に収斂し、複雑な水網と丘陵を拠り、営塁は堅固で深い堀と高い塁を巡らし、主将陸遜の旗は磐石の如く揺るがなかった。


「彼は我が軍の疲弊を待ち、我が軍の焦燥を待ち、さらには……」龐統の指は地図に記された幾つかの林深く乾燥した地をなぞり、眼光は鋭く、「東風を待ち、火攻の好機を待っている」。歴史の軌跡が心裏に浮かぶものの、詳細はすでに変わっていた。陸遜の布陣は伝説よりも綿密であり、また大胆で、火攻を仕掛ける切っ掛けを幾つかあらかじめ用意しているかのようであった。


「焼こうとするなら、焼かせてやればよい」龐統は低く独り言を言い、極めて危険な策が次第に形を成してきた。彼は馬超と、近来になってだいぶ沈着になった関興・張苞を召し、こうこう如是如是と密かに布置を命じた。


数日後、蜀軍前軍の大将・呉班は龐統の命令を奉じ、数千の老弱兵卒を率いて平地に営を築き、昼夜にわたりどやかして呉軍を挑発した。営塁の布置は粗雑であるのに、糧草輜重は山の如く積み上げられているように見えた(実はほとんど空飾りである)。あまりにもあからさまな囮に、劉備でさえ余りにも露骨過ぎると感じた。


案の定、呉軍の諸将は堪え兼ね、相次いで出戦を請うた。陸遜は高く登って遠望し、不堪一撃に見える蜀営と、その背後の静かな連なる山麓を見つめ、眉を少し皺めた。彼はこれが敵を誘う計であると見破り、さらに直感的に静かな山麓の中に殺機が隠されていると感じた。しかし蜀軍は連戦連勝し、その驕兵の態様は偽りとは思えず、尚且つこの囮の営に「糧草」が積み上げられている。もし計略であるとしたら、代償が大き過ぎる。


「龐士元……」陸遜は唸るように言い、定軍山のことを思い起こし、この者の用兵が常に危険の中に奇を蔵し、正と奇を併せ用いることを思い出した。「お前は我を出撃させようと誘い、伏兵で我を撃とうとする。ならば我は計に乗じて計を用い、伏兵がどこにいるか見極め、一括して焼き払ってやる!」

彼は命令した。先鋒の孫桓に精兵五千を率いさせ、火道具・硝石を多く携え、呉班の営柵に猛攻を加えよ。ただし攻勢は烈しく、営を破った後は直ちに火を放って合図とせよ。深入りして追撃してはならない!陸遜は自ら主力を率いてひそかに後を追い、風勢の有利な側翼の高地を占拠し、蜀の伏兵が火を消しに来るか出撃するのを見届け次第、火箭で覆い反包囲の火攻を行うのだ!彼が焼こうとしているのは空営ではなく、龐統が伏せた主力である。


決戦の日、東風が次第に起こった。孫桓は猛攻を加え、呉班は少し抵抗した後、計に従って「潰走」し、蜀営に火が上がった。煙が立ち昇るや、両側の山麓からは果たして殺声が轟き、伏兵が湧き出るかのようであった。陸遜は高地ではっきりと見て、冷やかに笑い、令旗を振り下ろした。

「放て!風向きは東南、山麓を覆え!」


火箭は蝗の如く、風に乗って林の中に射ち込んだ!しかし予期した悲鳴とさらなる大火は起こらなかった。それらの「伏兵」は実は多くの藁で作られた人形で、馬に縛り付けられた疑兵であり、馬は驚いて駆け下り、呉軍の視線を攪乱した。真の殺機は、呉班の「潰走兵」の反転逆撃から、さらには陸遜主力の側翼にある、大军が伏せるはずもない、岩肌のゴツゴツした険しい山坳から —— 馬超が自ら率いる二千の涼州鉄騎は、人も馬も口に銜え、甲に厚布を巻き、すでにここに長らく潜んでいたのだ!


「涼州の馬超、ここにいる!陸遜の小僧、俺の軍師の計に嵌まったか!」馬超の怒号は雷の如く、真っ先に駆け抜け、鉄騎は雪崩の如く側翼から陸遜の中軍に突撃した!この騎兵は零星な火箭を恐れず、速度は驚くほど速く、火箭一斉射撃のためやや緩んだ呉軍の陣を瞬く間に引き裂いた。


陸遜の顔色は急変した。龐統の伏兵がこれほど近く険しい地に潜んでいるとは夢にも思わず、尚且つその狙いが火消しではなく、自らの指揮中枢を直撃することとは思いもよらなかった。「落ち着け!長槍で陣を築け!」呉軍は結局精鋭であり、陸遜の指揮の下、慌てて陣を変えた。混戦の中、馬超は直ちに陸遜を狙い、幸いにも朱然・韓当が命懸けで阻み、陸遜の座車は馬超の一槍で跳ね返され、自らは坂下に転がり落ち、冠冕は脱げ落ち、無様な姿で親兵に命がけで救い出された。


呉軍は大いに潰れ、営塁と輜重はすべて捨てられた。馬超の鉄騎は敗走する敵を追い詰め、夷陵の城外に至るまで追撃し、荆州の平野が眼下に届くほどであった。猇亭の蜀軍大営では歓声が天に響き渡った。劉備は興奮して龐統の手を握り締めた。


「士元!奇才なり!陸遜の小僧、すでに胆を破られた!荆州奪回は目前だ!」


しかし龐統には喜色はなく、東南方向の呉軍敗走の煙塵を眺め、また西北を望み、眉を強く皺めた。「主公、これはただその先鋒を破り、その気勢を挫いただけです。陸遜の主力は滅びておらず、退きながら乱れず。その者…… 実に強敵であります。尚且つ我が軍には疲弊の様子が見え、馬将軍の軽騎は突進したものの、後援が続きがたく、長くは持ちこたえられまいと恐れます」彼の心の中にある北方の巨獣への警戒は、この時頂点に達した。陸遜が敗退した今、曹丕はまだ座っていられるだろうか。


夷陵の城内、陸遜の白い衣は塵に染まり、腕に傷を負いながらも、異常に平静であった。恥じて謝罪に来る諸将に向かい、ゆっくりと言った。「戦の罪に非ず。陸遜の知、龐統に及ばざるのみ。彼は我が必ず火を用いることを知り、故に空営・藁人で我の火箭を誘い、更に精鋭騎兵を死地に潜ませ、我の必ず救うべき所を攻めた。今回の計算に、陸遜は心から服する」


彼は地図の前に歩み寄り、目線は荒れ果てた戦場を越え、さらに北方の広大な疆域に注いだ。「しかし三国の争いは、一戦の勝負に非ず。龐統は我の一時の策を破ることはできても、この天下の大勢を破ることができようか?」彼の瞳に決然とした閃きが宿った。「伝令、兵力を江陵に収斂し、城防を固めよ。また、速馬の密使を遣わし、夜を徹して北上させ、直ちに洛陽に赴き魏主・曹丕に謁見せよ。言うには…… 呉は関羽の旧部捕将の一部、及び江陵以北三箇所の哨舎の詳細図を献上する。ただ魏の陛下に、隣邦の危難を憐れみ、漢中に出兵するか、襄樊に南下して蜀寇の兵勢を分かつよう願う、と!」


彼は曹魏という浩大な洪水を、既に乱れたこの棋局に引き込もうとしていた。龐統、汝は陸遜の敗後の挙措まで予期できようか?洛陽の宮中にいる、あの野心に燃える新帝の心まで推し量れようか?


一方、成都の丞相府からは暗号の帛書が幾重もの山を越え、龐統の机に届けられた。諸葛亮の筆跡は相変わらず冷静であったが、内容は心を奮い立たせるものであった。「間者の報によれば、魏主・曹丕は鄴城で閲兵し、『呉蜀相争、天賜の好機』と称す。曹真・張郃の動向は不明、徐晃は襄樊にて糧草の移動が異常である。北線の圧力は、恐らく朝夕にも迫っている。士元、前方にて勝てども、深追いすることなかれ、鵜蚌相争となることを慎め。亮はすでに子龍に漢中の守備を密かに命じたが、国は小さく力は分かれ、万事用心せよ」


龐統は帛書を握りしめ、幕の外に出た。南には今にも広がる荆州の平野があり、雪辱を果たす希望は手に届きそうであった。北には重い暮色が垂れ込め、更に致命的な牙が隠されていた。劉備は復讐の快楽と目前の勝勢に浸っていたが、彼と諸葛亮はすでに遠く隔てながら、これから覆いかぶさる三国鼎立の巨大な影を見ていた。


勝利の喜びは氷水を頭から浴びせられたかの如く、急速に冷めていった。彼は知っていた。真の試練は、今や始まったばかりである。陸遜の敗退は、恐らく更に猛烈な嵐の前奏曲に過ぎないのだと。


(第六章 完)

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