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龐統が転生したら、諸葛亮は中原を統一できるのか?  作者: 鳳啼西川


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第十二章:絶望と塵

建興五年の秋、長安から千里隔てた隴右において、戦局はまた別の様相で膠着していた。


諸葛亮率いる主力は祁山を出て以来、攻勢は潮の如く押し寄せ、南安・天水・安定の三郡を相次いで陥落させ、隴右を震撼させ、羌胡の部族は続々と帰順し、形勢は極めて順調に見えた。しかし曹真は魏の西線を支える柱石に恥じぬ者で、初期の狼狽を脱した後、速やかに兵力を収束させ、戦略の要所である上邽を扼し、猛将・王双を先鋒に命じ、騎兵の優勢を頼んで漢軍の糧道を絶えず襲い、戦局は俄かに苛烈な牽制戦へと突入した。


この日、鹵城付近の山道にて、王双は三千の鉄騎を率いて再び漢軍の運粮隊を襲撃した。彼は大刀を手に、駿馬にまたがり、確かに万夫にも敵わぬ勇を有し、蜀軍の校尉数人を相次いで斬り捨て、独り得意になっていた。


「魏の賊、増長するな!西凉の馬超を知らぬか!」


塞外の風雪を纏ったかのような怒号が轟いた!斜めから一隊の騎兵が疾風の如く襲い来り、先頭に立つ大将は銀甲に白袍、虎頭湛金槍は寒光を纏い、数ヶ月鬱屈し、ついに出陣の命を得た征西将軍・馬超であった。瞳に抑えていた炎は今や狂暴な戦意へと変わり、雑魚の魏兵とは戯れず、真っ直ぐ王双に襲いかかった。


王双は驚き、慌てて応戦した。天下に冠する馬超の勇、王双が及ぶはずもなかった。十合も戦わぬうち、王双の刀法は乱れた。馬超は隙を見て、槍を白龍の海出の如く突き出し、その胸甲を貫き、高々と挑み上げ、馬下へ叩き落とした!魏兵は主将の討ち取られるのを目撃し、魂魄を失い、たちまち潰走した。


「誰がある!?」馬超は槍を横に構え馬にまたがり、髭鬚を逆立て、仰いで長嘯し、その声は山谷に響き渡った。この一槍は王双を討ち取ったのみならず、胸中の鬱積をすべて吐き出させた。


勝報は中軍に届いた。諸葛亮は羽扇を軽く揺らしつつも、喜色は浮かべなかった。王双こそ討ち取られ、糧道は幾らか安らいだものの、曹真の主力は依然堅城に拠り、張郃は毒蛇の如く用兵し、隙を伺って動く。何よりも、龐統からの長安の報は雪片のように届き、一通ごとに切迫していた。彼は知っていた。己が隴右に一日長く留まるほど、長安の孤軍は滅亡の危機に一歩近づくのだと。


「丞相!孟起、願い出る。本部の鉄騎を率い、散関より東に出て、直ちに長安へ奔り、龐軍師を応援せん!」馬超は血にまみれ、甲を脱ぐ暇もなく軍幕に踏み込み、興奮で声は嗄れていた。王双を討ち取った気鋭は盛り上がり、龐統を案ずる心は頂点に達していた。


諸葛亮は地図を見据え、ゆっくりと首を振った。「孟起、勇猛にして敵将を陣頭で斬り、功績は極めて大きい。しかし隴右はまだ安定せず、曹真・張郃は虎視眈々と狙っている。今、我が軍が兵を分けて東進すれば、必ず後ろから追撃され、两路ともに危機に陥る虞がある。長安は…… 別の策を以て救わねばならぬ。」


彼だって救いたい思いは同じであった。しかし彼は三軍の帥であり、全局のために責任を負わねばならない。すでに曹真への圧迫を強め、密かに少数の精鋭を派遣して浸透・応援を試みてはいたが、主力の東進は時期尚早であった。


馬超は両目を赤く染め、拳を強く握り締め、爪は肉に食い込むほどで、ついに重く足を踏み鳴らし、憤然と幕を出て行った。諸葛亮の「慎重」への不満は、この瞬間、頂点に達した。


長安は、すでに人間の地獄と化していた。


司馬懿の用兵は、曹真とは全く異なっていた。慌てて蟻の如く城に押し寄せることをせず、まず外囲を安定させ、長安周辺の蜀軍が望む援軍や糧道を徹底的に掃討した後、整然と圧縮を始めた。塹壕を深く、塁を高く築き、長安を鉄桶の如く囲み、さらに兵を遣わして地道を掘らせ、昼夜を問わず土工作業を行い、守軍の精力と物資を消耗させた。同時に心理戦は隙もなく仕掛けられ、矢に結びつけた文書は毎日城内に射ち込まれ、内容は朝廷の赦令から、城内の名家が魏軍と内通する「証拠」まで、あらゆる手を用い、恐慌と猜疑心を極限まで煽った。


城内の糧草は日に日に逼迫し、矢・滚木・雷石の消費は甚大であった。最も致命的なのは水源で、司馬懿は城内の主な井戸の位置を探り当て、毒を以て汚染させた。大勢の死傷者は出さなかったものの、軍民の心を狼狽させた。負傷者は薬もなく、呻き声は昼夜に渡って聞こえた。


魏延は昼夜を問わず城を巡り、瞳には血走りが満ち、気性はますます苛烈になり、数度にわたり残兵を率いて出城して決戦を望んだが、すべて龐統の厳しい叱咤によって止められた。


「出城すれば即ち死ぬ。司馬懿の思う壺だ!守り抜け、こそ生きる望みがある!」


龐統の声は依然として穏やかであったが、痩せこけた頬と窪んだ眼窩は、同じく巨大な圧迫を物語っていた。自ら城防の補修を指揮し、残る僅かな糧草を調配し、自ら率先して一日の食料を半減させた。彼の存在こそ、この孤軍が崩壊せずにいられる最後の支柱であった。


夜更けの静まり返った時、龐統はいつも独り壊れかけた城楼に上り、西南を眺めた。そこは隴右であり、諸葛亮のいる方角であった。冷たい風が烈しく、薄い衣をなびかせた。


「孔明よ……」低く独り言を吐き、手で冷たい城壁の石を撫でながら。「貴様は本当に曹真に足止めされているのか?それとも…… この局面は、元々おれと貴様の選んだ道が違うが故に、払わねばならぬ代償なのか?」


信頼は、絶望の中で最も苛烈な試練に曝されていた。しかし彼の心の奥底には、微かながらも執拗な声があった。諸葛亮は、決して己を見捨てたりはしない。それは個人的な感情への笃信からではなく、一生を「漢室の興復」を最高の規範とする丞相の、器量と信義への認識からであった。


一月が過ぎた。矢は尽きかかり、糧倉は空になり、立ち上がれる士卒は二千にも満たない。城壁は何箇所も崩れ落ち、百姓が家を取り壊して石を運び、血肉の身を以て辛うじて塞いでいる。絶望が冷たい潮の如く、人々の胸を浸していた。


この日、魏軍の攻勢は格外に猛烈であった。司馬懿は機は熟したと判断し、投石機で油布を巻いて火をつけた巨石を城内へ投げ込み、あちこちに火の手が上がった。潮水の如く押し寄せる魏兵は梯子を担ぎ、矢の雨と盾の庇護の下、大規模に城へのぼり始めた。魏延は怒号を上げて城頭で斬り合い、幾つもの防線が危うかった。


龐統は剣を手に、崩れ落ちんばかりの女壁の後ろで自ら守り、親衛はすでに死傷し尽くしていた。一矢の流れ矢が額角をかすり、血が視界を曇らせた。下に蟻の如く押し寄せる敵軍を眺め、城内に天に昇る如き煙を眺め、かつてない虚脱感が彼を捉えた。落鳳坡の宿命は、結局この長安の城頭にて、別の形で成就するのか?


意識が闇に飲まれんとするその瞬間――


西南の方角、遠くの地平線から、突然一筋の塵が舞い上がった。


最初は、混戦する双方とも気づかなかった。しかしその塵は次第に近づき、太くなり、咆哮する黄土色の竜の如く、地面に張り付いて襲い来る!続いて、鈍く、大地の心臓の鼓動の如き轟音が響いた――これは幾千几万もの蹄が同時に大地を叩く音であった!


城の上も下も、血にまみれて戦う者たちは思わず手を休め、疑い惑いながらその方角を眺めた。


塵の先頭に、破れはしたものの依然はためく大旗が、突然塵の幕を突き破った!


旗の上には、濃墨にて彩られた力強い漢の一文字が、秋の陽の下、心を震わす輝きを放っていた。


「馬」!


漢軍主力の旗印ではない。あの男にしか許されぬ、西凉の疾風と限りなき怨みを象徴する将旗であった!

龐統は猛然と眼前の血痕を拭い去り、ますますはっきりと見えるその旗を見つめ、乾いた唇は微かに震えながら、声は出なかった。剣を握る痺れた手が、突然再び力を取り戻した。


城下の魏軍の後陣に、動揺が広がり始めた。この「馬」の旗は、雍凉の地の魏軍にとって、当年の関羽にも劣らぬ恐怖の記憶を意味するのだ。


鉄騎は雷鳴の如く、脆い魏軍の包囲後陣を引き裂き、ためらうことなく長安の城壁へ、その孤懸の「漢」の大旗へ、決死の突撃をかけた!


援軍、来たり。


思いがけぬ形で、思いがけぬ人物によって、最も絶望の瞬間に、一筋の……諸葛亮の本意ではなかったかもしれぬが、天地を覆し変えるに足る生きる望みがもたらされた。


(第十二章 完)

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