2-3.推測する男
――でも、大学ではそうもいかないんじゃないの?
――そりゃそうでしょうね。でも楽しみですよ、おしゃれな店が身近にあるようになりますから。ま、制服は今日が最後ですよ。
――ああ、その格好が見れなくなるのは残念だね。それに、こうして会えなくなるっていうのは、もっと残念だよ。
――そっすねえ。でもお別れするのは仕方ないと思わないと、どうにもならないですよねえ。
私から視線を外し、口元にはまだうっすらと笑みが残している彼女が、頬に垂れる髪に指を差し込みながら言った。私も笑いながら、しかし目はまっすぐに彼女のそんな様子を見ながら、答える。
――大学は、どこだったかな。
彼女は一瞬の間を置いて、私を見つめながら都市の名前を答えた。「どこ」という言葉で、単に地理的なだけでなく、もっと限定した、大学そのものという意味を持たせようとした私の意図は伝わらなかったか、あるいは故意に無視されたらしい。その理由を推測するに、警戒しているというのはもちろんだろうが、ただそれだけではなく、名前を言えるような大学でもないからだろうと思った。つまり、大学ではなく住む場所を選んだに違いないと、私は考えていた。ほとんど確信と言ってもいいほどに、強く。具体的な根拠は何一つなかったとしても。彼女がそういった存在、遊び盛りの女子高生というイメージから逸脱しているはずがなかったのだから、それが必然的な帰結というものだろう。
――ああ、そうなると本当にお別れだね。都会は危ないし、一人暮らしも大変だろうからなあ。心配になるよ。それに、改めて聞いてしまうと、お別れなのを実感して、本当に寂しくなるなあ。
――私はそうでもないですけど。
あっさりとそう言った彼女は、はっきりと、屈託なく笑っていた。
――悲しいなあ、そんな冷たいことを言わないでよ。
――だって、仕方ないじゃないですか。
相変わらず彼女は笑っている。そこに愛想も媚態も全く現れず、想定とのズレが大きくなっているのはもはや明らかで、私は苛立ち始めた。
そこで、用意していた隠し球を、私は使うことにした。とはいえ、一つ目は彼女にも完全に想定外というわけではないから、まずは小手調べに過ぎない、穏当な手段である。
ベッドに腰掛ける私の横に置かれていた封筒を手に取り、それを彼女に差し出した。
――そうか……まあとりあえず、いつもの約束だからね。
ベッド越しに体と腕を伸ばして、彼女はその封筒を受け取った。そして中身は見ようとしないまま、いくらか驚きの表情を浮かべる。手元に引き寄せると、両手で厚みを測るようにしたり、向きを変えたりして弄び、そこに目を落としたまま、言った。
――今日は前払いですか? あと、なんか、多くないですか? すごく。
――ああ、今日の分だけじゃなくて、これまでのお礼をしたいと思ったんだ。そういう気持ちが入ってるからね。
――へえ、そんな気持ちが……ありがとうございます。
彼女は目の前で封筒を曲げたり、くるくるとあちこち眺め回すようにしながら、私を見ないまま、何も感慨などないかのように言った。その顔にはもう驚きも笑みもなく、まるで、道で配られているポケットティッシュを受け取ったら、二つも三つもまとめて押し付けられてしまったとでもいうような様子だった。




