2-2.男の目
高校の卒業という出来事を経ても、その姿は以前と何も変わらないように見えた。それは単に未だに高校の制服のブレザー姿だからということによるだけではなく、まっすぐに長い黒髪は滑らかで、相変わらず、彼女の内面まで表しているようだったからだ。時折その髪の先端に触れる指は瑞々しく、卵円形の爪に塗られたマニキュアは、自然で控えめなピンク色で、鮮やかな光沢を作っている。髪が額と輪郭を隠している顔立ちはすっきりと整って、化粧っ気が無く、しかしぱっちりとした目が印象的で、桜色の唇には張りと艶があり、不思議なほど際立った印象を受けた。第一ボタンが外され、小豆色のネクタイと一緒にわずかに緩められたカッターシャツの襟元には、この季節にしては健康的に色づいて見える肌が覗いている。鎖骨の作る陰影までは今は見えないが、シャツの下の体の輪郭や肌の質感を、豊かな胸の膨らみやそれを支える下着のデザインとともに、ありありと思い浮かべることができた。実際に間近にあるそれを私から隔てているものは衣服だけで、それは時間的な意味においてもほとんど同じだった。しかしその隔たりのために、かえって、不可解なほどの興奮を招いていた。そしてそれは、太腿を半ばまで露わにしたスカートの丈によって、さらに、危ういほどにまで達している。それが手入れの結果によるものだとはとても信じられないほどにその足の肌は白く滑らかで、付け根から膝、ふくらはぎから黒いハイソックスの足首そして革靴へと至る稜線、そのなだらかな起伏は、どこまでも、言い知れぬ魅力をたたえていた。
――今日は制服なんだね
――さっきまで、友達と遊んでたんで。
――卒業式は終わってるでしょ?
――楽ですから。遊んでた娘も、みんなそうでしたよ。
私の観察など意に介さないという様子で視線をあちこちにさまよわせながら、時折は私と目を合わせつつ、彼女ははっきりと、しかしそのためにかえって素っ気なく、まっすぐな黒髪をいじったりしながら、話した。
――そういう娘が多いみたいだけど、感覚がよく分からないな、男の子はそんなふうにはしないんじゃない?
――みたいですね。まあ、男子とは気を遣うところが違いますから。きちんとしてて、ちゃんとしたデザインの服が手近に使えるところにあるのって、便利だと思いますよ。親のお金で買ってもらえますし。
言い終えた彼女は、私を見て、少しだけ口元に笑みを浮かべた。無邪気なようでもあり、洗練されて大人びた感じの良さのようでもあり、無意識に媚態が表れているようでもあり、もっと別の、悪意を含んでいるようでもあった。そういった感情の織り込まれた様子は、私と彼女の関係にはつきものではあった。だから正体を探る必要もない。いずれにしろその後には、確信に行き当たることになるからだ。それが私の心底からの、愛情と呼んで良いはずの思いには接しないとしても、最終的な結果は同じだった。つまり、彼女が私に身を委ねる時間へと至ることになるのだ。彼女がそれまでに、あるいはその後に、どれほどつれなくとも蓮っ葉であったとしても、私は望むものを手に入れられるのだし、彼女が、私との関係という、本来あり得ない状況を受け入れていることに変わりはない。確かにそこには、感情とは異なるもっと実際的で時には物理的なものを欠かすことはできなかったが、だからと言って、私の抱いていた思いが完全に一方的なものだとは、信じられなかった。彼女が見せる笑顔や献身や奉仕が、私から与える利益がなければ存在しないなどとは、到底思えなかったのだ。




