第四十話 逃避行
逃げ出したアルセナについたのは指名手配だった。
強大な力、故に恐ろしい。
言うことを聞かぬなら排除してしまおうと言う魂胆なのだろう。
そんなことは構わず、俺たちは逃げ続けた。
俺の冒険者の経験を活かして野宿をした。
アルセナの魔法で水を出してもらったりもした。
決して楽な道のりではなかったが、二人でいれば乗り越えられた。
ある日、俺たちは行商人とすれ違った。
「あんたたち」
と声を掛けられた。
まずいなと思った。
一応、髪などで顔が見えにくくなってはいるはずだ。
魔法があれば風呂にも入れるし、洗濯もできる。
今の俺たちは普通の旅人に見えるはずだった。
「やっぱり、聖女様じゃないかい。」
バレてしまったか。
「俺たちのことはーー」
「口外するなってんだろ。あたしだってそんぐらい分かってるよ。」
意外な返答だった。
「あたしはあんたに命を救われてんのさ。教会がなんだか知らないが、あんたがいい人だってのは知ってる。」
彼女は、聖女時代に彼女が救った人の一人のようだった。
アルセナも涙を浮かべている。
無論、報酬金目当てで油断させにきているかもしれないので警戒は怠らないが。
「あんたも大変だね。なんかあたしにあげられるもんはないかな?」
「いえ、そこまでしてもらうのは……」
「気にしない気にしない!あたしは他人の為に何かをするのはいいことだってあんたから習ったんだよ。」
「それならば少し見せて貰ってもいいか?」
「もちろん。」
彼女は偶然にも武器商人のようだった。
しかし、俺たちは徒歩で袋も一つしか持っていない。
アルセナの体では装備を持つのは大きな負担だろうし、旅路の邪魔になる。
対して、俺もいつもの冒険者装備なので特に替えるつもりはなかった。
色々と見ていく。
どれも、新しいようで、品質も良さそうだった。
その中でも異色のものが一つ。
「これは何だ?」
俺の指の先にあるのは鎧。
他と比べると明らかに古びている。
「あー、これは曰く付きの品らしくてね。スクリーミングソウルっていうらしいんだけど、なんでもつけたら強大な力を得る代わりに理性を失うらしい。しかも、一度つけたら歳も取らないし、外すこともできないそうだ。」
明らかな呪いの装備だな。
「これをくれないか?」
「でもあんた、それはーー」
「分かっている。その上でこれをくれないか?」
「あんた変わってるね。それじゃ、頑張って逃げなよ。」
そう言って、彼女は去って行ってしまった。
馬車があれば便利なのだが、贅沢はいっていられない。
彼女もばれれば殺されてしまうだろう。
それだけの危険があっても俺たちを助けてくれたのだ。
それは今までアルセナが積んできた善行のおかげに他ならないだろう。
まあ、場所があんまり人が通らない道というのもあったのだろうが。
いずれにせよ、貰った鎧を袋に入れて、俺たちは再び進み始めた。




