第三十九話 伝説
そこに書かれていた伝説は次のようなものだった。
古の頃、一人の邪教徒あり。
その者は天を昏くし、海を荒れさせた。
それに神、見かねて使徒に信託を与えたり。
12の使徒、天意を受けて魔女の討伐に赴く。
遍く事象は彼等を助け、遂に魔女を追い詰める。
その時、悪魔現れ、魔女を助く。
その悪魔の姿は全身が鎧で覆われ、禍々しい。
使徒、悪魔との交戦を始める。
三日三晩の激戦の末、使徒は悪魔と魔女を討つ。
代償に自らも死した彼らは神の元へ行った。
と言うものだ。
これが神殿にも描かれている12柱の天使なんだとか。
俺は正直天使なんかは全く信じていないが、この物語には気になる部分がある。
忘れかけていた、否、封じかけていた記憶が鮮明に蘇る。
大昔、ちょうど俺が鎧をつけた頃、あの時までは俺はアルセナを連れて逃げ続けていた。
確かにアルセナは魔力が生まれつき強かったが、悪用したことはない筈だ。
教会に聖女として引き取られた彼女は冒険者をやっていた俺と出会った。
きっかけは仲間がモンスターから呪いを受けた時だった。
ちょうどその頃は被害も広がり、多くの聖職者が各地に救援に行っていた。
それだけではなく、他の聖職者も力を多く使い、動けない状態だったのだ。
だからこそ、直接聖女の治療を受けることが出来た。
その時、俺は一目惚れをしてしまったのだったな。
そこからは彼女の気を引こうとした。
美しい宝石をあげたり、薬草の素材を取ってきたり。
聖輝教はこの頃から力が強かったのか。
聖輝教の教えは人としての常識を欠くこと以外の禁則事項はない。
むしろ、人を助けることこそを至上とし、推奨している。
彼女もそんな教えを純粋に守り、人々を救おうと心掛けていた。
彼女とだいぶ親密になり、二人で会っていたある日、俺は衝撃の告白を受けた。
聖輝教は腐っている、と。
今ではそんなことはないと信じたいが、アルセナの強力な力を使って信者を増やそうとしていたらしい。
例えば、干ばつを起こしてから雨を降らせれば信者は増えるだろう。
そうすれば当然寄付も増える。
聖輝教の教義とは正反対だが。
それに対してアルセナの祈りは純粋だ。
しかし、日に日に当たりが強くなっているらしい。
そして、俺にその話をした理由。
それは彼女が逃げるのを手引きしてほしいというものだった。
人に災いをもたらすぐらいならば聖女の地位などいらない。
どうせならあなたのような人とひっそり暮らしたい、と。
彼女ははっきりとそう言い切った。
そして、二人の逃避行が始まったのだ。




