第三十二話 魔族戦
「どうだ。俺はこの冒険者の街を一瞬で壊して見せたぞ。お前は?フィア。」
片方は見覚えのない男の魔族。
もう片方は教会で見た女の魔族だ。
どうやら女の魔族の方の名前はフィアというらしい。
「私はじっくりとことを進めるタイプなのよ。ところでお客さんよ。ラース。」
男の方はラースというらしい。
「とっくに気づいてたっつーの。」
「あら、そう。」
そう言って小さく笑うフィア。
この二人は案外仲が悪いのかもしれない。
「それじゃあ、私はそろそろ行くわね。」
「おい、待て!逃げるのか?」
「私はあなたと違って暇じゃないの。それじゃあ鎧のあなたもさよなら。」
また消えてしまったフィア。
しかし、ラースの方はまだ残っている。
しかも、最後のフィアの言葉が気に食わなかったのか相当に苛立っている。
「あいつ、あの方に気に入られているからって調子に乗りやがって。後で痛めつけてやる。」
これは厄介そうだ。
だが、先程の独り言の中に気になるフレーズがあった。
どうやら、魔族を指揮している奴がいるらしい。
仮に魔王とでもしておこうか。
「悪いが、あの方とやらについて教えてもらうぞ!」
「人間が何ほざいてやがる!」
虚空から剣を取り出してこちらを一直線に攻撃してきたラース。
口だけではなく、相当強い。
鎧の力を30%ほど開放する。
前回の感覚からこの程度はいけるとは思っていた。
まだ、安定はしているが、これぐらいでも精神状態によっては暴走してしまうだろう。
もともと魔族は数が少ないが、戦闘能力が高い。
それを恐れた人間が迫害し、更に数が減った。
今では人間に紛れたりして生活しているものが殆どだそうだ。
今でこそ、すぐに殺されたりはしないそうだが、偏見を受けてしまう可能性はかなり高いだろう。
ところが、そんな人間に復讐しようとする者たちもいる。
ラースたちも恐らくその中の一人だ。
それも当然の感情なのかもしれないが、目の前の人を見捨てる訳がないし、打ち破らせてもらう。
「ちっ、なかなかやるじゃねえか。」
数合打ち合っても全てを受け切ったことにラースも少し警戒を強めたらしい。
「おらぁっ!」
力任せに剣を振るってくる。
速い。
もっと鎧の性能を引き出せばカウンターも可能だが、今の状態では避けるので精一杯だ。
その時、剣が伸びた。
比喩ではない。
鎧の高い防御力のお陰で大怪我は負っていないが、少しダメージが入った。
よく見てみればその刀身は黒く、不定形なようだ。
これは鞭のような攻撃にも気をつけなければいけないなと気を引き締める。
さて、そろそろこちらからも仕掛けるか。




