第三十一話 フラッド
翌日、俺は早めに起きて荷造りを終えた。
今日はいよいよこの街を出る日だ。
ダンジョンや買い物など色々な思い出ができた街だった。
また今度来るのもいいかもしれないな。
ミハルと約束したことを思い出し、胸がくすぐったくなる。
そしてみんなと合流し、街を出て少し経った頃だった。
「今すぐ街に戻るぞ。」
その一言は何の脈絡もなしに放たれた。
「街ってカルミラのことか?」
「ああ、急げ。時間がないかもしれない!」
そう言って焦っているのはレインフォース。
モミジに一度戻ってもらうように頼み、剣に事情を聞く。
もともと俺たちはふらふらと移動しているようなものだから行き先や予定が変わっても何の問題もない。
「カルミラで何かあったのか?」
「分からない。でも、とんでもない数の魔力だ。」
「まさかーー」
「ああ、フラッドが起きたかもしれねえ。」
このタイミングでか。
いや、むしろこのタイミングで良かったのかもしれない。
今から急げば被害が拡大する前には辿り着けるだろう。
そう思っていたのだが……
「何だこれは!」
街へ戻ってきた俺たちは予想よりも遥かに早い魔物の被害に驚いていた。
ちなみに門は少ししか開けてもらえなかったので馬車は門の外に置いてきた。
モンスターを外に逃してしまったら大変なことになるし、仕方がないだろう。
とにかく、だいぶまずい状況だ。
ざっと見るに被害の原因は大きく分けて二箇所。
あそこだけ被害の度合いや範囲が違う。
「二手に別れよう。そうだな……、モミジと俺、バックとミハルとミアでそれぞれの場所に向かう。早く片付いた場合は合流しよう。だが、第一優先は人命救助だ。何か質問はあるか?」
「…………」
「俺様はどっちだ?」
「お前は俺とだ!分かるだろ!」
「えー、でもこれを機に女性が俺を使うかもーー」
「棄てるぞ?」
「よし、じゃあ行くぞ!」
雰囲気だけぶち壊してあの剣は行ってしまった。
どうやら右側に向かったようだ。
「そしたら俺たちも行くぞ。」
「そうねぇ」
今はじっとしている暇などない。
モミジを気にしつつ、追いつけるギリギリの速度で走る。
途中、何人か瓦礫の下敷きになった人がいたが、引っ張り出して『回復』をかけておいた。
中には戦いに加わろうとした人もいたが、それは却下して、魔物の少ないところの怪我人を助けて避難するように言い含めておいた。
先程から、辺りには轟音が響いている。
恐らく建物が薙ぎ払われるか何かしている。
こちらでも早く終わらせて向こうを助けにいきたいがーー
どうもそううまくは行かないようだ。
俺たちが到着したもう一つの場所には二人の魔族が佇んでいた。




