第二十九話 買い物
目が覚めた。
そのまま荷物の確認をして朝食を取る。
今日はミハルが買い物に行こうと誘ってくれたのだ。
既にアルセナとミハルは別の人間だと割り切ってはいるもののあそこまで似ていると多少は意識せざるを得ない。
少し浮かれているのを感じつつ、部屋の外に出た。
そこにはすでにミハルがいた。
「待たせたか?」
少し早めに出てきたはずなのだが。
「いえ、私も今来たところです。」
待たせてしまったのかと心配だったのだが大丈夫なのなら安心した。
「そしたら、どこから行こうか。」
俺はずっと山にいた関係でこういうことには大分疎い。
だったらミハルの気になるところへ行こうと思ったのだ。
「そ、そしたら服、とかは……?」
おずおずと提案してくるミハル。
そういえば、ミハルは小屋に来た時には何も持っていなかったから急遽、簡単な服を作ったのだったか。
今でも、昼は普段の服を着て、夜に俺が作った服を着てその間に昼の服を洗濯しているようだ。
あの服は急いで作ったので、サイズも少し大きいようだし、デザインも全くない。
ミハルも女の子なのだからお洒落はしたいだろう。
気づくことができなかったことが申し訳ない。
しかし、そんなことを口に出せばまず間違いなくミハルは気にしてしまうだろう。
「いいぞ。それじゃ、行こうか。」
今も着ている服は制服、だったか。
元の世界の服だそうで、今でも元の世界との繋がりのような感じがして着ていると言っていたが、やはりそれ一着で足りるなんてことはあるまい。
だが、山にこもっていた俺が服なんかに詳しいわけがない。
それどころか疎いほうだ。
なので、ミハルについて、店の中へと入った。
店内の様子は白を基調とした壁に、色とりどりの服が並んでいる。
点々と木彫りの人型の模型のようなものがありそれに幾つかの服が着せられている。
恐らくは組み合わせの例なのだろう。
長い時間が経って、文明の進化を感じた。
これももしかしたら転生者の影響なのかもしれないが。
全体的に言えば、お洒落な店なのかなといった感じだ。
俺はセンスに関しては自信がないが、店内の雰囲気は落ち着くし、細かい配置まで工夫されているようだ。
おっと、今はそんなことに気を取られている場合ではない。
いつの間にかミハルの手にはそこそこの量の服があった。
「ちょっと試着してきますね。」
そう言っていくつか小部屋が並んでいる中の一つに入っていく。
「分かった。」
とりあえず返事を返して近くで待つ。
冷静に周りを見てみればチラチラと視線を感じる。
当然か、なにせこんな店に全身鎧を着込んだ男が入ってきているのだから。
そりゃあ目立つだろう。
強盗なんかと間違われなければいいのだが……。
そんなことを考えていたら試着室のドアが開いた。




