第十九話 教会にて
神父のような男は依然として無傷で立っています。
一方の私はあちこちに傷を負い、視界がぼやけています。
「私はこれ以上貴重なサンプルを傷つけたくありません。大人しくしていてください。」
「無理、です!私はサンプルじゃなく人間です!」
呼吸は荒く、喋るのもつらいが抵抗は絶対に辞めません。
何度目かも分からない攻撃をします。
「だから無駄だと言っているでしょう。」
二本の剣を躱して迫ってきた神父の蹴りがお腹に刺さります。
吹き飛ばされ、壁に叩きつけられました。
「…シミル、……レジス」
戻ってきた剣を支えにして立ち上がります。
ここで諦めて仕舞えば死ぬ。
私から得たデータでより多くの人が犠牲になる。
なにより、鎧さんに二度と会えなくなる!
「『回復』」
魔力には限りがあるので重要な部分のみを治します。
肉体的にも魔力的にも次が最後の一撃。
「ここまでやるとは……非常に勿体無いですが死後、急いで研究に取り掛かるとしましょう。」
聴覚も視覚もとっくにおかしくなっているのに何故か神父の動きと独り言は分かります。
また剣が避けられ、今度は細剣が心臓に迫るのをスローモーションで感じます。
ごめん、バック。まだちゃんと謝れてないのに。
ごめんなさい、鎧さん。こんなところで死んでしまって。
この世界に来てからの記憶が走馬灯のように目の前に映ります。
最後に思い出したのはバックから鎧さんが守ってくれた記憶。
目の前でこんなふうに相手の剣を受け止めるかっこいい背中があってーー
「なんで……」
自然と涙が出てくる。
「遅くなってすまなかったな。」
その少し前、俺は教会にて不思議な大量の魔物に襲われていた。
猫のような姿に虫の角が生えているものや体は虫で頭だけ牛のものだったり。
斬ってもバックの時のように人に戻ることも灰になることもなかった。
「こいつらはなんなんだ?」
先を急がなければならない。
俺は前傾姿勢になり、一気に地を蹴った。
前にいる魔物が吹き飛び、奥まで辿り着く。
扉を開けるとそこにはミハルがいて、神父のような男に斬りかかった。
既に限界のようで剣にはスピードも力も乗っていない。
楽々躱した神父がミハルの心臓に細剣を突き出すのを確認する頃には俺は走り出していた。
剣の腹で突きを受け流す。
「なんで……」
後ろから呟きが聞こえる。
ミハルが誘拐されたんだ。
助けに来るに決まってるじゃないか。
俺はミハルを安心させるためにこう言った。
「遅くなってすまなかったな。」
そして意識を目の前の神父に向ける。
こいつはミハルを傷つけ、殺そうとした。
絶対に許さない!




