第十六話 剣と人
獣の巨大な爪が振るわれる。
それを回避し、反撃に出ようとするも小さな獣が飛びかかってくる。
「ちっ、煩わしいな!」
先程から何度も同じことが起きている。
倒しても倒してもわいてくる。
「いいじゃんかよ!」
相手を倒した際に剣が魔力を吸って身体強化などに充てているがこれでは埒があかない。
「『火焔』」
大きな焔が前方を呑み込む。
俺は魔法が使えないわけではない。
ただ細かい調整が苦手で味方が危険に陥る可能性があるから使わないだけだ。
だが、ここに気にするものはない。
雑魚は黒焦げになったが、でかいのは未だ健在だ。
「頑丈だな!」
「戦闘中ぐらい静かにしてろっ!」
大きな獣が苦しみ出す。
「なんだ?」
筋肉がみしみしと膨らむ。
腕が追加で二本生え、その姿は人間とはかけ離れている。
腕が高速で迫ってくる。
「がはっ」
衝撃を受けきれずに吹き飛ばされる。
頭が少しくらくらとするがまだ普通に動くことはできる。
再び臨戦態勢を取ると目の前には獣の体があった。
「なっ!」
また飛ばされて着地すると今度は爪がくる。
剣で捌くも四本の腕の猛攻が襲ってくる。
これはまずいと思い距離を取る。
「こりゃ、俺じゃ無理そうだ。」
「ったく、仕方ねえな。」
「頼んだぞ。」
「行くぞ、『交代』」
体から力が抜ける。
起きた時、体の主導権は剣の方にあった。
「やっぱ、すぐには慣れねえな。」
軽く剣を振る。
それだけでヒュンッと鋭い音がして床に線が入った。
「このぐらいでいいかな。」
あまり激しい動きをするとこの体の方が壊れてしまう。
獣が爪を繰り出してくる。
「お前、その攻撃好きだなー」
間伸びした声とは裏腹に鋭い斬撃が手を斬り落とす。
切り落とされた箇所からは無数の触手のようなものが生えてバック達を襲う。
当たるものだけを切り裂きながら更に前に出る。
狙うは一点、首。
攻撃してきた残りの腕もすべて切り落とし無防備なその首に一閃。
その姿はみるみる縮み、一人の少年の形になった。
その目から流れ落ちていたのは涙。
剣に主導権を返してもらったバックはそれをみて激しい怒りを覚えた。
「仇はとってやる。安心して眠れ」
その言葉が届いたかは判らないがじきに少年は灰になって消えていった。
ミハルを助けられればいいと思っていたが、もう許さない。
この光景を作り出した奴らは絶対に殺す。今まで何人が犠牲になったのだろうか。
理由が何であれ連中は俺の逆鱗に触れた。
報いは受けてもらう。
強い意志を胸にバックは洞窟から去っていった。




