第十二話 装備の意思
その剣はしばらく拗ねて口を聞いてくれなかったが、ふと喋り出した。
「あんたの鎧こそ何なんだよ。」
「どう言う意味だ?」
「多分その鎧も意思があるぞ。いや、正確には鎧にじゃないか。」
「詳しく教えろ。」
「つったって上手い言い方が分からねえよ。」
結局剣との会話にそれ以上の進展はなかった。
もしかしたら意図的に何かを隠そうとしているのかもしれないが、教えてくれない以上どうしようもないだろう。
とは言っても、あいつの言っていたことは引っかかる。
鎧に意思が宿っている?
じゃあ、あの時の笑い声は幻覚ではないのか?
結局何も答えは出せず、もやもやとしたものを感じながら宿に帰って眠りに着いた。
翌朝、バックが宿を訪ねてきた。
場所を知っているのは昨日、宿で別れたからだ。
「お前、しばらく冒険者やるつもりなんだってな。俺もついてくよ。」
「え?なんでだ?」
「お、お前が言ったんだろ!全て受け止めるって。」
昨日の攻撃性は見る影もない。
これが本来の彼なのだろう。
「分かった。だが、一応ミハルの許可をとってからだぞ。」
「分かってるって。」
と言いつつもその足取りは重い。
「おいおい、昨日あんなことしちまったから気にしてるのか?」
「ちげえよ。ただ…ちょっとな。」
「ミハルは逃げた責任は取るつもりでいた。多分大丈夫だ。行ってこい。」
基本的にミハルは早起きだ。
いつもなら、この時間には朝食を作り終える頃だろう。
少し軽くなった足取りでバックは姿を消した。
ところがすぐに戻ってきた。
随分と慌てているようだ。
「どうしたんだ?やっぱり勇気が出なかったか?」
「違う!ミハルが部屋から居なくなった!」
「居なくなっただと!」
「ああ、しかも外出したとかいう感じじゃねえ!」
「急いで探すぞ。」
「了解だ!」
その数時間前、ある組織の構成員はあることを考えていた。
「あのバックとかいう少年は実にいい仕事をしてくれた。お陰で疲れて眠った転生者を手に入れた。転生者ーーククッ、どんなサンプルが手に入るかな?」
既にこいつには改めて睡眠薬を盛っておいた。
普段だったら警戒されていただろうが目を覚ますことはなかった。
男が所属する組織は実験によって能力を底上げする人体実験を行なっている組織。
貴重な転生者なので無下に扱われることはないだろうが末路は決まっている。
特に、成長率が桁違いだと言われる転生者。
その能力を得たらどれほど研究が進むだろう。
邪悪な野望を抱いた男はミハルを背負ったまま、夜の闇に消えていった。




