第十一話 魔剣
「おい、剣。力を貸せ!」
「おいおい、手を出すなって言ってたじゃねえかよ。」
「五月蝿い!相手が思ったよりも強かったんだよ!」
「まあ、いいぜ。」
剣が闇色のオーラを纏う。
次の瞬間、ミハルが反応できない速度で剣が振われた。
ギンッ
手応えが重い。
「いい装備だな。」
魔剣が応える。
「そりゃどうも。あんたの鎧、なんだよそれ。魔力の桁が違うぜ。」
「分かるのか?」
「もちろんさ。」
そんなやりとりの間にも激しい攻防が繰り広げられる。
「おい剣!集中しろ。」
「すいませんっと」
更に速度が上がる。
「それじゃーー駄目だな。」
技の合間を抜けて掌を叩き込む。
吹き飛ぶバック。
息をするのも辛いはずだがまだ立ち上がる。
「んで……なんで邪魔すんだよ!」
少年の目からは透き通った水が流れ落ちる。
「お前がしたいことはこんなことじゃないだろう?」
問いかけると少年はビクッと体を震わせる。
「あいつが逃げなければっ、後衛二人は助かったかも知れないっ!」
「自分の命を優先して何が悪い?」
「あいつらは自分も守れないほど弱かった。だから俺たちが守る義務がーー」
「じゃあ何故奥へ進んだ?」
バックが息を呑む。
「ミハル一人じゃない。全員の責任だ。目を逸らすな!」
「う、五月蝿い!」
再び斬りかかるバックだが動きにキレがない。
「抱え込んだ気持ちをどうすればいいか分からなかったんだろう?
誰かにぶつけなければ自分を保てなかったんだろう?」
「黙れ!」
「俺が受け止めてやる!」
バックの動きが止まった。
「あんたに……なにがわかんだよ。」
「何もわからないさ。でも、俺は恋人を手にかけたことがある。」
「……何でそんなことを平然と言えんだよ。」
「平然?内心は凄いことになってるよ。自分を殺したいくらいにはな。」
「じゃあ、どうして……」
「彼女は俺に殺される間際、俺に向かって笑ったんだよ。」
「ーーっ!」
「だから俺は生きている。俺が奪った彼女の分まで。」
風が吹く。少し生温い夏の風。
足元の草がざわめく。
雲が動き、満月が姿を現す。
項垂れる少年からは戦意が完全に消え失せていた。
そこに空気を読まない剣が一本。
「おいおい、負けちまったな!
実力的にも、精神的にも!」
「ところでお前はなんなんだ?」
「魔剣レインフォース様だよ!」
「こいつとは魔樹林の中で出会った。」
「こいつめっちゃボロボロだったから治してやったんだよ。」
「ちょっと黙ってろ。タイミング的にはパーティーが全滅して魔樹林を彷徨ってた時だ。」
「なんでそんな剣がそんなところに?」
「確かに……。おい、何であそこに刺さってたんだ?」
「………」
「いや、黙ってろとは言ったけど!空気読めよ!」




