第十話 依頼
街に入ってから、ミハルは少し悩み込んでいるようだった。
「どうした?」
「あの人が着ていた服なんですけど……」
「ああ、見たことがない、珍しい服装だったな。」
「あれは私の故郷にあった服なんです。」
「故郷……ということは異世界の?」
「はい。」
「という事は他にも転生者がいる可能性があるな。」
「次会ったら聞いてみましょう。」
「そうだな。」
そんな話をしていたらギルドに着いた。
扉を開けると熱気を感じた。
比喩ではなく実際に。
「あ?ふざけてんのか?てめえ!」
「おい、坊主。何本気になってんだよ!」
それを見てミハルが顔を青くする。
「危ねえだろ!そこの奴らに当たるとこだった!」
初めて男と争っていた少年がこちらに目を向ける。
その焦点は俺の隣で集まった。
「おい、お前、ミハルか?」
「は、はい。」
返事を聞くや否や少年はミハルに飛びかかった。
前に出てそれを防ぐ。
「あぁ?何だお前。あいつの連れか?」
「そうだ。一旦落ち着け。」
「うるせえよ!お前は何も知らないだろ!」
「魔樹林で何があったかなら知っている。」
「じゃあ何で止める!」
「感情に任せて行動するのはよくない!」
かつて俺も暴走して取り返しのつかないことをしてしまった。
だからこそ、今はこの少年を止めるべきだと思う。
その気迫に少年は怯んだ。
一度ミハルを連れてギルドの外に出る。
「今日の夜、草原で待ってろ!」
その言葉を背に俺たちはギルドから離れた。
「すみません、私のせいで……」
「気にするな。ところであの少年がバックか?」
「はい、そうです。でも以前はあんなに攻撃的じゃなくって……」
「そうか……。草原とはどこなんだ?」
「私たちがよく集まっていた場所です。」
「行くのか?」
「はい。しっかりと向き合わなくてはいけませんから。」
宿を取り、荷物の整理をしていたら、あっという間に夜がやって来た。
草原には背の低い草が生え、空には満月が雲で欠けている。
そこではバックが待っていた。
「よお、遅かったな。」
「何故私をここに呼んだんですか?」
「責任取らせるためだよっ!」
バックはミハルに切りかかった。
咄嗟に双剣で受けるミハル。
「すみませんがーー私はまだ死ぬわけにはいきません!」
「なんだと!」
バックが追撃を始める。
ーー速い。
タンタロスに傷を負わせただけのことはある。
ミハルも実力を上げたが、剣技に関してはバックが若干勝っている。
「なぜまだ受けられる?」
バックもミハルの予想以上の成長に戸惑っているようだ。
「『風刃』」
ミハルも殺傷能力の低い魔法で反撃する。
動脈に当たりでもしない限り死なないだろうが牽制としての効果は十分だ。
その時、バックは剣に話しかけた。




