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異世界魔王は世界を壊したい  作者: spiegel
2章
98/103

妾は所詮作り物じゃ


◇◇◇


【夏央視点】


「起きろ!!!!!」


 鼓膜どころか体を揺さぶるような大音声に夏央は飛び起きた。


「なんだ? 何が起きた?」


 エリアルの魂と体を結びつける作業をしていて気を失った?


「エリアルは……?」


 目を開くとそこは白い世界だった。


 微かに感じる優しい香り。遅れて背中に温もりと柔らかさを感じ、思い出したように自分の状態を確認する。


 スープラが横たわる自分を支えていた。


「目が覚めて良かった。でもすごい声だったね」


「声……声か。何だったんだ? あ、いやごめん、重いよね」


 夏央は慌てて体を起こす。


「大丈夫だよ。突然倒れたから支えてたの。前にもこんなことあったね」


 スープラは安心したように微笑む。


 確かにそんなことがあった。遠い昔のようにさえ感じる。


 あの時と違い、ここは真っ白な世界。エリアルたちの姿はない。


《小さきものよ》


 誰かが頭の中に直接呼びかけている?


 スープラを見ると頷いた。スープラにも聞こえているようだ。


「あなたは誰?」


《我はお主たちがコキュートスドラゴンと呼ぶ者》


 声が答える。


《我はお主たちを観察していた》


 確かにすごい見てたよな、と夏央は思う。


 しかしなぜ直接声をかけてきたのか。そしてここは何処なのか?


《……やはりお主らの言語は効率が悪い。直接送り込んでやろう》


 思いもかけない少しめんどくさそうな声とともに、頭の中に直接映像と音声、というかむしろ記憶のようなものが流れ込んできた。


 ブラウドラッハのときとは違う。圧縮された情報がものすごい勢いで流れ込んでくる。そのスピードでの理解を強要されている。


 夏央が倒れた後、エリアルが目覚め、体に異常が現れた。倒れている夏央に代わり、シャルロットがシュシュに支援を求めた。自分の十年を対価にする? 力が足りないというシュシュ。酷く焦っている。シャルロットとエリアルが危ない。話しかけてくるコキュートスドラゴン。対話。魔王が目覚めれば出来る?? つがいと種も起こす? つがい?? いや待って、そう見えてるの?? 種? …魔王の目覚めって覚醒ってこと?


 情報が多い……!!


 頭痛がする。何気なくスープラと目が合う。


 スープラは照れたような表情を浮かべて俯き、上目遣いに夏央を見返した。


「つがいって言ってたね……?」


「言ってたな……」


(しっかりせい! もっと大事な情報があったじゃろが!)


 ブラウドラッハの声が割り込む。

 危ない。ちょっと妙な雰囲気になりかけてた。それどころじゃなかった。

 シャルロットとエリアルが危ない。


(やっと届いたか。意識が戻った……戻ってはおらんな。そこは別の空間じゃな。体は大丈夫か?)


 ほっとしたようなブラウドラッハの声。


「うん、大丈夫だと思う」


「ここはどこ?」


《我の作り出した空間だ。ふむ、ここに介入してくるとは面白い。お主も実体化させてやろう》


 コキュートスドラゴンの声とともにブラウドラッハも姿を現す。


「見た目は大丈夫そうじゃな、安心したぞ」


「ブラーシェもこんなことできるの? 同じ龍だよね?」


「できる訳が無かろう。妾は所詮作り物じゃ。せいぜい鱗の一枚程度の存在だろうて」


 スープラの問いに呆れたようにブラウドラッハが答える。


《謙遜するな。我の空間に介入出来るなら大したものだ。鱗の二枚程度はあろう》


 空気が震える。コキュートスドラゴンが笑ってる? 笑うんだ? でも二枚程度なんだ。突っ込みどころが多すぎる。空気を読んで夏央は突っ込まずに耐えた。


《さあ、種を起こしてやろう。魔王、お主が覚醒せねば死にかけの仲間は助からんぞ。喰われぬように気をつけろ》


「種を……起こす?」


「聞いたことはないが実体化させるのじゃろう。本物は何というかスケールが違うの。来るぞ」




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