貴女はどっちの味方ですか
◇◇◇
【シャルロット視点】
一方その頃。
シャルロットは多数の兵士たちと乱戦を繰り広げていた。
攻防一体の大剣は便利だが、乱戦には向かない。
大剣は早々に諦めて、兵士から奪ったロングソードとショートソードの二刀流に切り替えた。
奴らの指揮官…元副官か。家を鼻にかける嫌な奴だった。あいつから生け捕りを命じられている為奴らは動きが重い。
致命傷は与えずに押し包んで取り押さえようとしているようだ。
しかし一対多は訓練でも幾度となくやってきた。決して立ち止まらず、数手先を考えながら倒していく。
自分の部下だった者もいればそうでない者もいる。
自分が得ていた忠誠心はこんなものかという失望を感じると同時に、参加していない者がいることに救われた気持ちになる。しかし参加せず命令に反した者たちは無事だろうかとも思う。我ながら身勝手だとは思うが、考えることをやめられない。
自分は何の為に厳しい訓練を己に課してきたのか。
与えられた部下たちを何の為に鍛えてきたのか。
自分の歪んだ騎士道を部下たちに強いていたのではないのか。
フルプレートアーマーで顔がわからずとも、向かってくる相手が誰なのかは分かる。
ロングソードを叩き付ければ苦悶の声を上げて転がっていく。
心を鬼と化して剣を振るうが、どこか躊躇いがあるのだろう。致命傷を与えきれていない。
「そんな甘っちょろいことを考えていると死にますよー?」
視界の端を銀色の光が流れる。
自分の背後に迫っていた兵士をラファエラがグシャリと音を立てて殴り倒した。これは……即死だ。
「すまない!」
ゼータ殿との戦いに割って入ったのは偶然では無かったのか。心まで見透かされている。
一体何者だ?
いや。今は気持ちを切り替えなくては。
「何をやっているッ! 腕の一本くらい切り落としても構わん! さっさと無力化しろッ!」
ずぶ濡れの指揮官が苛立った声で叫んでいる。
兵士達の殺気が変わる。
殺してもいいか、という気配を感じる。
奴は奴で信頼はされていない。
殺されてやってもいいかな、とも思う。
ふとエリアル様の遠い親戚と名乗った少女の言葉を思い出す。
『本当に守るというのならば生き残ってこそ』
冷や水を浴びせられたような気がした。
私はエリアル様を守ると言ったのではなかったか。
ここで死んでは守れない。
「奴の仲間の弱そうなのを捕まえて人質にするとかあるだろうがァ! 頭を使え!」
指揮官が怒鳴っている。
正規兵が言っていい言葉では無い。しかし、この瞬間、兵達の意識は私からゼータ様の仲間に向いた。
大剣を投げて牽制しようとしたが避けられると味方に当たる。
こちらを抑えるべきか、あちらに向かうべきか。
一瞬判断に迷った。
「貴女はどっちの味方ですかー?」
ラファエラが跳んだ。
助走からのありえないほどの飛距離で飛び蹴りを喰らわして兵士たちをまとめてなぎ倒す。
間に合った!
一瞬気が緩む。まずい。
別の集団が再び後方に抜けようとする。
しかし、水の術式が絶妙なタイミングで足止めする。
もう抜かせない!
今度は躊躇なく一人残らず斬り倒した。もう躊躇はしない。
この場は片付きつつあるが、まだ戦いは終わっていない。
父ならばあれにすべてを任せるはずがない。
必ず後詰めもいるはずだ。




