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異世界魔王は世界を壊したい  作者: spiegel
2章
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猫人族の誇り

 翌日、夏央達はノートメアシュトラーセの街を歩いていた。


 ゼータの件、魔物増加の件についての情報収集が目的だ。



 この街は、いわゆる獣人族に属する人々が多い土地だった。

 人族との見た目の違いは耳と尻尾、あとは男がやや毛深い(個人差あり)程度らしい。


「夏央は最初からシュティレンヒューゲルで獣人族にも会ってるよ? デュパープのお店のウエイトレスの娘にもいるし」


「私みたいにコスプレだとでも思ってた?」


「あっ、私は女装とかコスプレではないですからね?」


 というロキシーさん。


 もはや一連のネタのような気がする。


「いやそれは重々承知してます」


 このやりとりはもう何度目なのか。。でも、ロキシーが飽きるまでは付き合おうと夏央は思った。



◆



 人数が多いこともあり、途中で二手に分かれて情報収集をすることにした。

 スープラとリップとリュリー、ロキシーと夏央とブラウドラッハ。


 魔物についてはGTに聞くのが早いだろうということで、夏央達はノートメアシュトラーセにあるGTの拠点で話を聞いてみた。


 最近やっかいな魔物が増えた、というのは誰もが話していた。


「半年くらい前に起きた大きな地震の後から魔物が増えた気がする」


「最近は低レベルのGTだと対処出来ないようなのが出てくる」


 というような話が複数聞けた。


 ゼータがこの地に来たのはもっともっと昔だから、ゼータとの因果関係は無さそう。


 むしろ増加した脅威度の高い魔物の駆除にゼータが大活躍してGTを含めた街の人々の好感度が上がったらしい。


「あのパン屋のお兄さんには何度も助けてもらってる」


「ハンターさんが助けに来てくれなかったら俺達は多分生きてない」


 そんなことを言っているGTの人もいた。




 そしてやっぱりゼータは若干身バレしていた。


 二度見するようなイケメンということもあり、ゲシュペンシュタットの元王子じゃないか、と気付いてそうな人は何人もいたが、みんな知らない振りをしているようだ。


 それとなく聞いてみて、まあそんなこともあるさ、というリアクションが返ってきた。隠し事の無い人間なんかいるかよ、という相互理解があるようだ。


「このあたりは大昔に流刑地だったこともあってさ、過去については詮索しない感じなんだよ。本当にヤバいやつが紛れ込んでてもわかんないって問題もあるけどさ」


 そんな話も聞けた。


 パン屋のお兄さんの戦闘中の活躍についてはたくさん聞くことができたが、シャルロットとの戦いで見せた謎の不調については誰も知らないようだった。


「あれ、何だったんだろう? 突然調子悪そうになったよね」


「ええ。魔物討伐の話を聞く限りは時間的な制約でもなさそうですね。魔物との戦闘のほうが確実に長いようですし」


「対人戦が駄目とかあるのかな?」


「いえ、それもどうなんでしょうね。最初は普通でしたし、昔は訓練で嬉々として戦ってましたよ」


 夏央の脳裏を十年前の光景がよぎる。


 研究所でのあの戦闘がトラウマになった、ならわかる気がした。

 でも、この場で言うことでは無さそうなので黙っていた。


 夏央はブラウドラッハを見たが、彼女は黙って首を横に振った。特に言うことはないようだ。




 魔物と軍の話も聞けた。


「魔物が増えたって国の担当部署にも嘆願してるらしいんだけど一向に減る気配が無くない?」


「軍の連中を山で見ることは増えたよ!」


「調査してる、って言ってるけど調査とかいいからまず駆除しろよって思うわ」


「むしろ軍が現れてから魔物が増えてない?」


「あーね。シャルロットが美人だから魔物寄って来てるんじゃない?」


「あたしらにも寄ってくるからそうかも!」


「シャルロット?」


「姫騎士じゃん! なんだよまだ見てないのかよ、少年? もったいない」


 猫耳獣人のギャルっぽいお姉さん達が姫騎士の話題を出して来た。えっと、ミコッ…族かな?


「つーかお姉さん、シャルロットに負けないくらい美人じゃん!」


 言われたロキシーはにっこり笑いながら返す。


「ありがとうございます。姫騎士さん、私も見ましたけど美人ですよねー」


「あの人、騎士団長なんだよ!」


「つーかシャルロットって、お母さんが庶民だって聞いたけど?」


「だから家でも肩身狭かったって噂だよ。それでも騎士団長になるんだからすごいよねー」


「猫人族の誇りだし」


 美人連れのおかげか、思いの外いろんな話を聞くことができた。

 シャルロットの猫耳は本物だったのか。あの立場で飾りってことは無いわな。



◆



 スープラ達と合流してそれぞれが聞いた話を共有した。


 ピンク髪の女医さん、ラファエラについても話が聞けたそうだ。少し前に聖病院に転任して来た医師で、分け隔てなく親身に対応してくれると評判らしい。


 パン屋のお兄さんについては、本人が人を避けているせいもあるのか、夏央達以上の話は聞けなかったらしい。


 姫騎士は獣人の身体能力を活かして活躍し誰もが知る存在ではあったらしい。

 獣人の評判はいいが、人族の騎士団長に取って代わったからか、人族の評判はあまり良く無いとのことだった。


 姫騎士の最初の反応はさておき、ゼータが生きていると分かってからの態度はなんだったのか。


「憧れていたとは言ってたよね。だったらなぜ生きていてはダメなんだろう。普通は喜ぶと思うんだけど」


 夏央の言葉にスープラが頷く。


「お兄ちゃんを見て目をキラキラさせてたのにね」


「お兄ちゃん生きててよかったねー!」


「彼女は何を抱えているんでしょうね?」


 ロキシーはブラウドラッハに問いかけた。


「あやつのことは妾にもわからぬ」


 少し考え込んでからロキシーはかさねを呼び、さらなる情報収集を頼んだ。


 かさねはふっと夏央の後ろに現れ、無言で頷くとそのまま人混みに消えて行った。


 やっぱり忍者だ。




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