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異世界魔王は世界を壊したい  作者: spiegel
1章
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少し不安なのかも

「あー、怒らせちゃった」


 スープラは困ったように笑う。本気の喧嘩でないことは夏央にもわかる。


「仲いいんだね。姉妹みたい」


「うん、小さい頃からずっと一緒だからね」


「でもなんで怒ったんだ?」


「うーん、たぶんリップも私と同じで少し不安なのかも」


「不安?」


「うん。待ちに待った初めてのミッションではあるんだけど、ね。この先自分たちがこうしてやっていけるのかな? ってやっぱり心のどこかで考えちゃうんだよね」


 夏央はスープラたちも将来へ不安を感じていることに少し驚く。自分だけじゃないのか、とその横顔を見ながら思う。


「ちなみに私は今のところはわくわくが強いけどね。あとリップは普通に照れてた気がする」


「え……照れてたの? わかりにくいな……。散々人に聞いておいて……」


「リップはけっこう照れ屋さんだよ」


 前を見ると、リップはロキシーと並んで何か話しながら歩いている。


「それよりも法術の話!」


「ん?」


「本当に無いの?」


「無いよ。どんなものなのか想像もつかない。むしろ、本当にあるの? って思うよ」


「そっかー、私と真逆だね。よし、ではスープラ先生が説明してあげよう」


 スープラは腰に手を当てておどけたものの、それから「リップ先生のほうが詳しいけど……」と、少し恥ずかしそうにつぶやいた。


 法術は、おおまかに分けると、攻撃系、援護系、回復系、日常使用系ぐらいに分かれる。


 それぞれの人が持っている属性の系統に応じて使える術式には向き不向きがあるらしい。厳密には系統の分類は四大元素だけではなく、より細かく複雑らしいのだが、そこはまあいいやとスープラは省いた。


 例えば、属性が火のリップなら、火属性の術式は他の属性を持つ人よりもより強力な効果を得られる。逆に水属性で得られる効果はかなり弱くなる。


 使用する術式は同じでも、使用者のレベル、スキル値によって威力は変わってくる。発動直前に気持ちをこめると低い確率で威力上昇の効果が得られるらしい。


 また、法術の使用時には、エーテルを消費し、これが欠乏すると術式を出力できなくなる。エーテルは生命エネルギーであるマナを変換して作るが、マナの枯渇は死を意味する。エーテルとして変換できるマナの量は個人差があり、一定以上は変換できないのだそうだ。


 まあ、用語は微妙に違うが、よくある異世界モノの魔法とよく似た感じだ。


 で、法術の使用にあたっては、ドメインと呼ばれるいずれかの組織に属していることが必須条件となるらしい。それは認可を受けた学校だったり公的機関だったりするらしい。


 表現が抽象的というか概念が理解できないのでだんだんよくわからなくなってきた。


 法術は、使い方を間違えればあっさりと人を殺すことも出来ることから、ドメインは特に対人使用においての制限となる概念で、まあ要するに敵味方の識別を司るものらしい。


 装備やアイテムである程度の属性依存は軽減はできるが、どちらかというと今のふたりは得意な分野を伸ばして応用力《スキル》を高めることを優先するよう指導されているそうだ。狭く深く能力を磨くほうが、後々使える術式の幅を広げやすいとのことらしい。


「スープラは?」


「私は地属性なんだけど、攻撃系はイメージがうまくつかめなくて…思ったように威力が出ないの。イメージできるかどうかってけっこう大事なんだよ。どっちかというと身体能力を増強するような支援系のほうが得意かな。敏捷性上昇、筋力上昇、防御力上昇とか。あと、軽い怪我の治療とか、体力を少し回復させたりすることはできるよ。歩きながらは無理だけど」


 確かに穏やかそうなスープラは回復とかしそうだなと夏央は思う。ヒーラーだ。


「使うとどんな感じなの?」


「うーん、そうだね、回復系は術式を使われたところがじわっと温かくなる感じかな。ほわーっとする。支援系は体が軽くなったり、力が湧いてくるような感じ。攻撃系は、リップの火属性なら何もないところに炎を作ったり炎の塊を飛ばしたりできるの。強さ次第では爆発炎上! みたいになるよ」


 改めて示されるファンタジー感。当たり前のように話されることで現実味を感じる。まだ半信半疑だが、ここまでいうからには本当に法術というものがあるようだ。


「ロキシーはどうなの?」


「風属性だけど、他の属性もそれなりに使えるって聞いたよ。火属性でもリップよりはるかに上みたい。昔教えてもらってた時期はあるんだけど、本気出した所は見たこと無いの。複数の属性を連動させて、例えば全く違う場所の景色を見たりもできるらしいんだけど…」


 急に要領を得なくなってきたが、出来ることのレベルが違うらしいことは夏央にも分かる。


「やっぱり凄いんだな、ロキシーって。スープラとリップはロキシーみたいな人を目指してるの?」


「えーと、ざっくりは同じだけど、ジャンルは違うかな。得意分野が違うし」


 この世界を知らない夏央を気遣ってか、スープラは言葉を選びながら答えているようだ。


「私は……まずはリップと一緒にグランドトレーラーになるつもり。もっと色んなことを知りたいし、色んな経験がしたいって思ってるの。今はまだ知らないことばかりが増えていく気がするけどね」


 少し遠い目をしてスープラは答える。


「夏央も無事に自分の世界に戻って進路を決めれるといいね」


 夏央を気遣うスープラの笑顔が優しかった。



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