↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界魔王は世界を壊したい  作者: spiegel
2章
102/103

リップのターン


◇◇◇


【リップ視点】



 夏央は変な奴だ。


 男のくせに、先頭に立って歩くこともなく、いつも私達の少し後ろを歩く。なんなら少し離れてついてくる。


 戦闘の判断も遅いし、正直強くない。


 いざってときはきっちり前に出るところは……まあ、評価はするけど。……助けてもらったこともあるしね。


 自己主張もあんまりしないから、ふと気づいたらいなくなってそうな気がする。


 えー、そんなことなくはないでしょ? 

 最後のはわかる? あえてそう振る舞ってる?


 そういうところが気に入らないんだよなぁ。一線をひかれてる気がして。

 こっちは仲間だって認めてるのにさ。


 え? 直接言ったの? スープラってそういうところあるよねぇ。


 言われてみると、確かに少し変わった気がするな。




 スープラのお兄ちゃんが生きてるって聞いたとき、もちろん良かった! って思ったよ。

 でも、正直羨ましいとも思った。ああ、ひとりぼっちなのは私だけなのか、って。


 そんなもやもやした気持ちを抱えてたのに、デュパープにお姉ちゃんのコスプレさせられて意味わかんなかった。


 え? そりゃわかるよ。顔以外完全にお姉ちゃんだったじゃん。顔もそっくりだった? 


 全然違う! これじゃない感半端なかったじゃん!  デュパープのメイクの技術すごいなとは思ったけどさ、あんなの公開処刑じゃん!


 みんなでいじってくるしさぁ。本当に可愛かった? はあ? もうこの話は終わり! ハイおしまい!


 まあ、おかげで落ち込んだ気持ちは消えたけどさ。



 そんな風に思ってたから、お姉ちゃんと会話ができたときは嬉しかったよ。


 目の前に突然エーテルの塊とその中のお姉ちゃんが見えて。声が聞こえて。


 私の憧れ。

 綺麗で、堂々としてて、おしゃれで、強くて、頭も良くて。でも時々可愛い、素敵なお姉ちゃん。


 まあそのまま体を乗っ取られるとは思わなかったけどね!


 ふとしたタイミングで入れ替わっちゃうから大変だった。夏央にあっさりバレたのは笑ったけど。


 ごめんて? もう謝らなくていいよ、お姉ちゃん。


 生きててくれて本当に良かった。


 夏央とシャルロットには本当に感謝してる。どれだけ感謝してもしたりない。


 ありゃ、シャルロットは寝ちゃったか。

 そうしてると本当にお母さんみたいだよね。え、お母さんだって? それはそうだけどさ。私のお母さん代わりもしてたから慣れてる? まあ……それはそうか。




 しかし、なんかもう……とにかく大変だったね。


 山で地震? 地割れ? が起きたあと、スープラのお兄ちゃんがお姉ちゃんの身体を保存してたことがわかって。

 うん? 怖いとか、引いたとかは無かったよ。お姉ちゃん綺麗だな!って気持ちが強かった。


 スープラのお兄ちゃんはずっと自分を責めてたんだと分かり、シャルロットは物語と現実の差に傷ついてて。


 あの時、お姉ちゃんの言いようのない悲しさは私にも直接伝わってきた。辛かったよね。


 お姉ちゃんがシャルロットに言ってた「本当に守るというのならば生き残ってこそ」って言葉。

 私は自己犠牲なんてするのもされるのもごめんだけど、あの言葉はなんか刺さったよ。


 多分一生忘れない。



 その後ノートメアシュトラーセ軍は来るし、コキュートスドラゴンも来るし。私達を助けてくれるかと思ったラファエラは裏切るし。私はなんかもうフラフラだったし。


 シャルロットが私からお姉ちゃんを連れて行ったとき、体がすごく軽くなって。楽にはなったけど喪失感がやばかった。なんて表現したらいいんだろう? お姉ちゃんをもう一度失ったみたいな気持ちって言えばいいのかな? 


 次の日は体の調子はいいんだけどなんだか上の空で。


 気付いたらラファエラがお姉ちゃんを人質にしてて、 スープラのお兄ちゃんとスープラと夏央が戦ってて。


 シャルロットがラファエラを倒してくれたけど、復活したお姉ちゃんはヒビ割れて。


 なんだろ、一生分しんどかったな。




 ねえ、シャルロットの十年を受け取ったってどういうことなの? 魔王の力とはいえ無茶苦茶過ぎない?


 シャルロットは対価として自分の人生を差し出して、時間と記憶を失った……生命エネルギー? その分お姉ちゃんの止まっていた十年が補填された? シャルロットの十年の記憶がお姉ちゃんに?!


 あ、ごめん、声が大きかった。


 シャルロットは……寝てるね。


 そっか、辛い記憶の詰まった孤独な十年だったのか。

 私も色々辛かったけど一人じゃなかった。そうだね。わたしはひとりぼっちじゃなかったよ。


 は? 夏央が記憶を吸収したからまだマシ?! 大丈夫なの?!


 あああ、ごめんシャルロット。うんうん、寝てていいよ。


 魔王の種、ね。あの子がさらに夏央から吸収したと。

 もっと禍々しい存在をイメージしてたんだけど、可愛かったなぁ。


 え、スープラはお姉ちゃんって呼ばせた? えー、なにそれ羨ましすぎるんだけど……。





 ところでお姉ちゃん。


 お姉ちゃんと交代してるときに、お姉ちゃんの記憶が見えたんだ。


 十年前、魔王マキナと戦った時。


 魔王マキナと一緒にいたのは、私達の父親だよね?


 あれってどういうことなの?


 あの人はゲシュペンシュタット内の魔王崇拝派からマキナを守ろうとしていた?


 お姉ちゃんの記憶の最後は、マキナを連れて行く父親の後ろ姿だった。

 あいつは瀕死のお姉ちゃんよりもマキナを優先したってことだよね?


 違う。

 確かに意図はわからない。でも、その行動は事実だよ。


 スープラ、前に話したときにさ、私だけ当事者じゃないって拗ねたことがあったよね。


 うん、私も当事者になったよ。




 夏央じゃないけどさ。こんな終わり方、納得できないわ。続きを見届ける必要がある。


 あいつは絶対に許さない。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。