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悪のサボテン  作者: oga
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サボテンの冒険

サボテンが意思を持ったのは数日前だった。

サボテンは、毎日水やりに来ている沼田のことが好きだった。


「ヌマ先生、イイヒト」


その水やりを楽しみに生きていたが、ある日、自分の変化に気が付いた。


「ボク、動ケル?」


体をどう動かしたらいいかが分かる。

試しに動かしてみると、土から上の部分が自由なことに気が付いた。

サボテンは土から手を引き抜いた。

地面に手をついて力を加えると、ズボリ、と体を引き抜くことができた。

そのまま足も引き抜いて、鉢植えから抜け出した。

だが、すぐに沼田が戻って来たので、鉢植えに戻った。


その日からサボテンは、夜な夜な鉢植えから抜け出し、実験室内を散策した。

サボテンには気になるものがあった。

それは、研究室に置いてある水槽であった。

そこにはカエルやカメなどが飼育されている。

研究室内の仲間として、サボテンは一度挨拶しておかねば、と思っていた。


「家族デスカラネ」


しかし、水槽はサボテンのテーブルの向かいのテーブルにあるため、一旦降りて、そこからまたよじ登らねばアクセスできないのである。


そこでサボテンは枯れたフリをした。

クタ、と首をもたげて元気がない風を装ったのだ。

水を与えても元気がなければ光が不足してるのでは?と沼田は思うはずだ。


作戦通り、沼田はサボテンを水槽の近くに移動させた。

ここなら窓際のため、日光も良好である。


「成功、ウレシ」


サボテンは早速その夜、鉢植えから抜け出して水槽に近づいた。

水槽に針でコンコン、とノックすると、カメがこちらに気付いた。


「何じゃ?」


「挨拶ニキマシタ」


「挨拶? 変わったサボテンだな。 どれ、こっちまで上がってきなさい」


この時、カメはサボテンを食ってやろうと思っていた。

一日数回しかエサを貰えず、空腹だったためだ。


一方、サボテンは「握手」かと思った。

初対面の人間同士がするように、握手をすることで契りをかわすのだと。

だが、またここで問題が起こった。

水槽の上にはどうやって行けばいいのか?

水槽の表面はツルツルで、針も通らないガラスだ。

上からヒモを垂らしてもらうか、吸盤のようなもので壁をつたっていく以外道はなさそうである。


サボテンが考えていると、上からカメが海藻を垂らしてきた。


「ほれにふはまへ」 (これにつかまれ)


海藻をくわえている。

サボテンはその海藻に針を突き刺し、引き上げてもらった。


「アリガト」


上にたどり着き、サボテンは手を差し出した。


「もっとこっちによるんじゃ」


カメに言われた通り近くに行くと突然、ガブリ、と噛みつかれた。

びっくりして目をつぶった。

そこからカメはピクリとも動かなくなってしまった。


「……アレ? カメサン?」


針がカメに刺さり、サボテンの毒によって息絶えたのだった。

サボテンの針にカメの血が伝った。


それを近くで見ていたカエルが悲鳴を上げた。


「キャアアアッ」


「マ、マッテ!」


何が起こったのか全く分からず、誤解を解くためカエルに近づいた。

そして、自分は敵ではないという証明の「握手」を求めた。

グサリ……

カエルも同じように、死んだ。


「僕ハ、何ヲシテシマッタンダ……」


サボテンはこの日から、自分のこの針が相手の命を奪うものと知った。


自分は相手を傷つける存在なのだ。

数日後、サボテンは決心をした。

ここを抜け出そう、と。

ここにいたら、いつか自分の大事なヌマ先生のことも傷つけてしまうに違いないのだ。

サボテンは自分の鉢植えに別れを告げ、テーブルから飛び降りた。


研究室を抜け出すチャンスは一瞬だ。

早朝、沼田が研究室の鍵を開けた時だけである。

サボテンはいつも開く扉の前でその時を待っていた。











「まだ研究室の中にいるんでしょうか?」


「扉は閉まっていたはずだ。 可能性は高い」


沼田が栗山に指示を出し、捜索が開始された。

制限時間は生徒がやってくるまでの、およそ30分だ。


「やむを得んな」


沼田は箒を手に取った。

その箒でサボテンをつぶすつもりであった。

これで研究はおじゃんになるが、生徒の命には代えられない。


しかし、くまなく散策したが見つからない。

教室の扉は閉めているのに、と2人で話している時、土が床に散らばっているのに気が付いた。


「あっ、先生! これってサボテンの土ですよきっと!」


それは扉の前に落ちていた。

ということは、教室を出たのか。


「くそ、どうやって…… 昨日鍵を閉めた時は間違いなく鉢植えにいたのに」


とにかく、扉を開け廊下に出た。


「あっ!」


サボテンがこちらを見ていた。

それに気づいたサボテンも、パタパタと走り始めた。


「逃げるぞっ」


沼田が叫んで、サボテンを猛追した。

すぐに追いつくと、テニスボールでも打ち返すようにサボテン目がけて箒を振り払った。


ガンッ……


サボテンは弾き飛ばされ、壁に命中した。

壁の塗装がパラパラと落ちた。


「なんだ、今の手ごたえは……」


サボテンは無傷であった。

サボテンは、カメの血から得たDNAを取り込み、甲羅のように堅い皮膚に変化していた。



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