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009話 老中評定

 江戸城 老中評定(ひょうじょう)の間


 赤穂事件(1701年)当時の幕府の老中は、主に稲葉正通、小笠原長重、秋元喬知、土屋政直の4人が中心となって対応した。特に浅野内匠頭長矩の刃傷事件と、その後の赤穂浪士討ち入りに対する処分を決定した主要人物である。


 ここは江戸城、老中達が(まつりごと)をする場で徳川幕府の中枢である。

その4人の幕閣の元に赤穂へ派遣した城受け目付である榊原采女より急報が届いた。まず老中筆頭格の土屋相模守(さがみのかみ)が書状に目を通す、続いて稲葉丹後守、小笠原佐渡守、秋元但馬守(たじまのかみ)の順に書状を廻し読んだ。


 全員が読み終わったあと、事件対応の責任者として中心的役割を果たしていた土屋相模守が口を切る

 

「これは大変な事になり成り申したな、各々方いかにみる?」

「脇坂軍3,500が壊滅したとある...」 

と稲葉丹後守

「なんでも人とは思えない棒を持った大男20人余りに打ちのめされたとか」 

と小笠原佐渡守

「赤穂方は死人が出なかったと... 脇坂淡路守と受取り目付の荒木十左衛門は捕縛されたようだ。木下肥後守はもう一人の目付、榊原采女の同意を得てやむなく撤退か...」 

と秋元但馬守が言う。


しばらく4人は思案しながら沈黙していたが、筆頭格である土屋相模守が


「やはりここは上様のご裁定を仰ぐしかあるまい、事が大きゅう成りすぎてもはや我々の手に余る」


 誰も反対する者などいない、誰しもがそう考えていたからだ。土屋相模守が最初に意見を述べただけである。討伐軍を出すにしても老中の権限外で、上様に進言することが彼らの限界であった。



 江戸城本丸御殿 執務書院


 政務を執っていた第5代将軍徳川綱吉に側用人の柳沢吉保が遠慮がてら声をかける。


「上様、ご老中方が謁見を願い出ておられます、いかが致しましょうか」

「うむ何用か、入ってもよいぞ」


 側用人は一旦外室し老中を案内して執務をとる書院に入ってきた。土屋相模守まず前列に座り、続いて他の3人がやや後ろに座った。4人は同時に平伏すると頭を下げたままで土屋相模守が


「上様には御機嫌麗しゅう、まことに恐悦......」

「機嫌がよいわけなかろう! 誰のせいでこんなに仕事があると思っている」


と綱吉は怒り出す。老中らはもう一度深く頭を下げ


「も、申し訳ございません、上様に折り入って報告がございまする、我々老中では判断がつきませぬ」

「何の件だ、また赤穂に係わるやっかい事か?」

「ま、誠に恐縮ではございますが...」


 と言って例の、城受け目付である榊原采女よりの書状差し出す。

綱吉は黙って読んでいたが、しばらくすると顔を真っ赤にして怒りだした。


「討伐軍を出せ! 脇坂淡路守は改易、木下肥後守は領地半減の上転封じゃ!」


 老中達は、やはりな...それしかあるまいな...と思いながら綱吉の上意を聞いていた。自分たちは当事者に裁定を申し渡すのが役目である、この場合に限ってはと考えていた。

土屋相模守がが問う


「どこの諸侯に討伐を申し付けましょうか」

「それは老中に任せる、決まったら報告を寄越せ、ただし10万は兵を揃えよ」


かくして将軍綱吉の怒りのままに討伐軍の派遣が決まったのである。




 ここは安芸の国、野貝原山 地中の拠点である


 江戸城の様子をモニターで監視していたイワレヒコはおもむろにつぶやいた、今回も虫型偵察メカを使用した。生き物ではないが役に立つ虫である。


「孔明お前の予測通りになったな。脇坂淡路守は改易、木下肥後守は領地半減のうえ転封、さすが自称<超優秀なスーパーバイオトロニクス>様だ。討伐軍10万と言っていたな、今後どうする?」

『10万などたいした数ではありませんが、我が君は出来るだけ引き伸ばして長く楽しみたいのでしょう? でしたら討伐軍は無視しましょう』

「具体的にプリーズ」

『赤穂城壁に......ができない......を設置します。討伐軍が......したところで......します。このまま......の素晴らしい体験を経験して頂きましょう』

「その手があったか、さすがえげつない作戦が得意な非情きわまりない軍師様だ」

『いやそれ程まで褒めて頂かなくても』

「褒めてねぇ」

『いやいや、軍師にとっては<卑怯者> <汚い手を使う奴>は最高の褒め言葉です』


 討伐軍に対する今後の方針が決まった。

赤穂城は一旦放棄する、あとは赤穂藩士とその一族郎党を含めた処遇をどうするか。藩士達は藩札を処理した後にいくらかの金子をもらっていたから、当面の生活は困らないはずだ。

どこかに仕官するも良し、武士を辞めて帰農するも良し、また浅野本家に従って広島で新たな生活を始める者もいるだろう。

 イワレヒコは従う者の住む場所を作らないといけないと考えていた。この本拠地の近くで適当な場所がないかと孔明に聞いてみた。


「おい孔明、例の村作りなんだが、どこか適当な場所はないだろうか」

『そうですね本拠地の近くですと二か所候補があります。南側の麓に明石村、北側の麓に玖島村という集落があります。明石村は平地が少ないので少人数なら可能です。玖島村は結構まとまった平地がありますので開発すれば3,000人くらいは大丈夫でしょう。目的に合わせて使い分けると良いでしょう』

「ちょっと考えたんだが、今回は赤穂藩士のやつらは全くと言ってもいいほど戦う機会が無かっただろう。もしかしたら急進派の奴らは戦いたいんじゃないのか?」

『それでしたら、広島藩東寄り領地境の三原あたりで砦を作らせたらいかがでしょうか。いざ戦となると最前線になります、彼らも喜ぶでしょう』


 このあたりは備後の国になり、戦国武将小早川隆景の三原城があったところだ。当時は広島藩家老職の三原浅野家が管理していた。



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