010話 浅野綱長との会談
ここは安芸の国、野貝原山 地中の拠点である
『我が君、例の浅野内匠頭の身体の修復が終わりました』
「そうかご苦労だったな、早速アバターとして使ってみるか。オレと相性がいいから精神と体の順化に時間は必要ないはずだ」
『誰が見ても内匠頭と判ると思いますが、本物より<ちょっといい男>に仕上げておきましたよ、大サービスです』
「ほう、ちょっといい男とは首に切り傷のあるやくざ風ではないだろうな?」
『いえ 顔を含めて全体的に男ぶりが上がったという意味です。』
イワレヒコはもう一件の懸念について孔明と相談してみる事にした
「ところで孔明、この体で支障なく活動できるようになったら浅野綱長と会談してみようと思う。場所はどこがいいだろうか? こっちが出向くか呼びつけた方がいいか聞きたい」
『そうですね、こちらが出向くとなると大勢に<我が君のこと>が知れ渡ります。今はまだ時期尚早かと』
「しかしここはまずいぞ、余りにも時代錯誤が甚だしい、いや古臭いという事ではなく逆の意味でな。ここは奴等にとって超文明、超技術を結集した場所だ」
『我が君の意見に同意します。ではこの野貝原山の登り口あたりに適当な会談場合を作りましょう』
「そうしてくれ、では任せたぞ」
これで一連の相談事が終わったかに見えたが、孔明の声が再び聞こえてきた
『我が君、今度の使者はいかが致しますか? ○○殿が適任ではないかと』
「ああ、あの面倒くさいやつか。そうだなそろそろ使ってやらないとムクれているだろうなぁ。今回はあいつにするか」
安芸の国 芸州 広島城にて
元禄14年(1701) 5月14日、江戸城松之大廊下で浅野内匠頭が刃傷に及んだ日より2か月が過ぎた。
藩主 浅野安芸守綱長が政務を行っていると、家老の上田主水が慌てて書院の間に入って来る。
「殿、失礼仕る 。大神様の御使者が参られました。」
「そうかお通ししなさい」
使者は綱長が執務する書院の間に入ると緩やかに座る
「お初にお目にかかる、拙者は趙雲子龍と申します。この度大神様より使者を申しつかりました。
以後よしなにお願い致します」
容姿端麗、今流で言うとイケメン男が、白い歯を見せてニカッと微笑えんだ。綱長はこのキザ男が...と思わないこともなかったが常識的に対応する。
「こちらこそ宜しくお願い致す、広島藩藩主の浅野綱長と申す。して、大神様のご用件とは如何な事でございましょう?」
「はい、我が主人は綱長殿との会談を希望しております。この度の幕府討伐軍に関する件です。」
「ほう、討伐軍の件ですと? いずれは派遣されると思うておりましたが、大神様はもう情報を掴んでおられるのですか」
「ええ、既にひと月程前には...なんでも派遣軍の数は10万だそうです」 と趙雲
「なんと、たかが5万石の小藩に10万とは......」
42万石の浅野本家が相手なら10万の兵を動員することは有り得るだろう、しかし赤穂は5万石の小藩である、苦も無くひねり潰されるわい...どうしたものか
「会談場所は何処でしょうか?」 と綱長
「西の方角へ4里半(約18km)のところにある明石村にて。野貝原山ふもとの村と言えば分かり易いでしょう」
安芸の国、野貝原山麓 明石村
現在の広島県西部地域、廿日市市宮内明石地区に大歳神社という小さな社がある。
ちょうど野貝原山の登山口にあたり明石地区の氏神として、地元の方々の信仰を集めている神社である。
鳥居、本殿、弊殿、拝殿、御供所、灯籠、手水鉢がある。現在では神職は不在で廿日市天満宮の兼務社となっている。
孔明はこの場所に新しい神社を創建した。
元禄14年(1701) 5月20日早朝、イワレヒコは会談場所である明石村の神社に来ていた。
孔明が新たに作ったという会談場所を下見に来た。
そこは真新しい神社で朱赤の鳥居や本殿を見ていると銘(祭神)は「神倭伊波礼毘古命」(かむやまといわれびこのみこと)と書いてあった。いわゆるイワレヒコ神社であった。
「おい孔明、騙しやがったな。誰が本名を使えと言った!!! どうしてくれる」
『あ~ 只今マイクの試験中、只今電波の試験中、受信状態が悪くよく聞こえません......』
「嘘つくな-この野郎!! こんなに近くで通信できないほどローテクじゃないだろ。そんな言い逃れどこで知った?」
もうイワレヒコは怒りでカンカンである
この日の午後になると浅野綱長一行が10人余りの護衛を連れてやって来た、全員騎乗である。
会談参加者は、浅野家側は藩主浅野綱長、筆頭家老で三原城主の浅野忠義、家老の上田主水。拠点側はイワレヒコ、関羽、趙雲に加えて孔明(声のみでの参加)。
社殿の裏側にある座敷にて6人での首脳会談であった。
正面に座ったイワレヒコを見て浅野家側が驚いた、3人とも有り得ないという顔つきであった。
思わず浅野綱長が声を張り上げる
「お主、生きておったのか!」
驚くのも無理はない、死んだはずの浅野内匠頭が目の前にいる。しかも心持ち男前が上がっているのは気のせいか?
にんまり微笑むイワレヒコを見て腰が引けていた。まっ昼間から幽霊を見るとは夢にも思わなかったようだ。そしてイワレヒコの声を聞いた
「ようこそ浅野家の諸君、オレがイワレヒコだ。君らの言葉で言うと我こそが『大神』である。もっとも今は浅野内匠頭の体を借りているので、いわばこれは依り代という訳だ」
「ふぅ~ 魂消ました、まっ昼間から幽霊を見たかと思いました。某が当代の藩主を務めまする浅野綱長でございます」
「筆頭家老を務めまする浅野忠義でございまする」
「同じく家老を務めまする上田主水でございまする」
三名が序列順に自己紹介を終えた
「そうか知っている者もいると思うがこっちが関羽雲長、こいつが趙雲子龍だ。おい孔明、自己紹介頼む」
『おほほほ~ 皆さん宜しくね』
とどこからともなく声が聞こえてくる
浅野家側はキョロキョロと声の主を探しているようだがイワレヒコが言う
「姿は見えねえぞ、別のところにいるというか人の姿じゃねぇ」
「関羽様に、趙雲様とくれば孔明様がいても何ら不思議はありませんな」 と綱長
さて自己紹介が終わったところで本日の要件といきましょうかね...
10話より、趙雲子龍に登場してもらいました。『三国志演義』の五虎大将軍の一人です。
後世、歴史家からは公正・無私・誠実といった品格や、主君への直言、政治的見識を評価されました。人柄は忠義に厚く節義を守り、勇ましく武勇に優れたと言わました。
趙雲のキャラクターですが、どう見ても『クラスごと転移』に登場する勇者タイプですね。(正義感強く曲がったことが嫌いなことなど)




