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011話 討伐軍編成

 安芸の国、野貝原山(ふもと) 明石村


「さて話の続きとしようか。幕府方が10万の討伐軍を出すという話は知っているな? これは放置でいい、10万など問題じゃねぇ。こっちに任せとけ。問題は赤穂藩の家臣と家族だ、これはどうする?」


 とイワレヒコが切り出した。血縁とはいえいきなり他藩の処理をどうこう聞かれても困ってしまう。しかし家臣にも親戚同士が沢山いるため無下にはできないだろう。

浅野家側が三人で相談をはじめた、そして答えを出したようだ。浅野綱長は


「希望する者は本家で引き取る所存でございます」

「わかった、では問題は内匠頭の仇を討とうとする急進派だな、こいつらはどうする?」

「......」 と浅野家側

「ではこちらの提案だ、おい孔明、お前の計画を説明してくれ」

『我が君よ、承知しました。 三原城主の浅野忠義様、提案がございます。』


 いきなり話を振られて緊張する忠義であった、まさか自分に要件があるとは意外である。主君を飛ばして相談事とは...露程にも思っていなかったのである。


『赤穂の急進派は三原城とそれ程遠くない場所に砦を作って守備させます。沼田川の川辺を計画しておりますが、貴方様の許可を頂きたい』

「それは構いません、我が方としましても兵力が増えて誠に心強い限りでございまする」

『この場所は幕府と事を構えた場合最前線になります、宜しいでしょうか』

「承知致しました」


と浅野忠義が返答する。内匠頭の顔をしたイワレヒコが、本当はただの砦じゃないんだけどな、その時になって驚くなよと......悪い笑いを浮かべたのであった。




 江戸城 本丸御殿


 元禄14年(1701) 5月14日、くしくも江戸城で刃傷事件が起きてからちょうど二か月が経つ。

本丸御殿では赤穂城討伐軍に命じられた諸侯が将軍綱吉に謁見していた。もちろん国元に帰っていた藩主は江戸家老が代理を勤めていた。


討伐軍を拝命した諸侯は以下の通りである。

  鳥取藩 池田家 32万石

  岡山藩 池田家 31万石

  津山藩 森家  18.7万石

  姫路藩 本多家 15万石

  明石藩 松平家 10万石


 近隣の比較的大きな領地をもつ諸侯と中堅どころの藩であった。

将軍に代わり事の経緯を老中筆頭格の土屋相模守が説明する。皆が知っていたのは赤穂城の受け取りに失敗したらしいというところまでであった。


「此度の赤穂城明け渡しについてであるが脇坂淡路守が任に失敗した。脇坂軍3,500は壊滅、脇坂淡路守と受取り目付の荒木十左衛門は捕縛されたという報告を受けた。しかるにこの場に集まった各々方に上様より討伐の令が下った」


暫くおいて土屋相模守が


「供出する兵は、各藩において石高1万石当たり1,000人とする。以下の通りである。鳥取藩32,000、岡山藩31,000、津山藩18,700、姫路藩15,000、明石藩10,000とする。これは上意である、各家は大至急軍を編成せよ」 


 禄高合わせて106.7万石である。つまり禄高1万石につき1,000人の出兵を命じられた訳である。続いて土屋相模守は


「参軍の期日は一月後の6月15日。集合地は赤穂の北、播磨の国の天領とする。以上である、各々方質問はないか?」




安芸の国、野貝原山(ふもと) 明石村


 江戸城で諸侯に出兵の命が下った翌日のことである。

元禄14年5月15日、広島藩家老の上田主水が例の『イワレヒコ神社』に呼び出されていた。

今回の会談の相手は黄忠と目に見えない孔明であった。


「浅野綱長殿に伝えて貰いたい、幕府討伐軍の詳細が判明したそうじゃ。では軍師殿よろしく頼む」

『こちらが集めた情報によると幕府軍は約10万余りでございます。鳥取藩32,000、岡山藩31,000、津山藩18,700、姫路藩15,000、明石藩10,000 の出兵を命じられました』

「やはりそうでござるか、予想通りと言えば予想通り」

『6月15日の期日をもって集合地は赤穂の北、播磨の国の天領になりました』

「うむむ...してこちらの対応はいかがなさるおつもりか?」

『はい、イワレヒコ様の方針は放置でございます。』

「放置とは...つまり、何もしないと?」

『これは作戦です、<飛んで火にいる夏の虫>作戦と名付けましょうか、実際にもうすぐ夏(太陽暦7月中旬頃)ですから』


黄忠が発言する


「誠に残念じゃのう、先の赤穂城の件でワシの活躍の場は無かった。張飛と許褚の奴とその部下しか見せ場が無かったしのう。ワシなんか敵の大将の捕縛を命じただけの簡単なお仕事よ」

『黄忠殿、指揮官が暴れていたのでは戦になりませんよ、それぞれの役割と言うものです。現に張飛殿が立派な指揮ができると思いますか?』

「軍師殿に言われてみれば確かにのう、あ奴にまともな指揮は不可能じゃ...ま、ここはあきらめるとするか。主水殿、そう言う訳で事の詳細は藩主殿に伝えて貰いたい」

『私からも一言、来るべく合戦に備えて兵の鍛錬はしっかりやっておいて下さい』

「畏まりましてでこざりまする」


 実際に兵の鍛錬は必要なわけではない。ただ、ああ言っておかないと目標が無くなる。目標が無い者はただの駄目人間になってしまう。浅野家側に常に緊張感を持たせるのが目的であった。


 イワレヒコは討伐軍放置の方針だが、決して放置プレイを楽しみたい訳ではない。<飛んで火にいる夏の虫>作戦と言ってもゴキブリホイホイをしたい訳でもない。

ただ孔明の立てた作戦を採用しただけである。孔明の作戦は前述のとおり

『赤穂城壁に......ができない......を設置します。討伐軍が......したところで......します。このまま......の素晴らしい体験を経験して頂きましょう』

という極悪非道の作戦であった......



 当初は備後の国、三原に砦を築く予定でしたが、物語の展開が予想以上に早くこの計画は没になりました。

イワレヒコの勢力が速く拡大したため(22話時点)この地は前線で無くなったためです。


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