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008話 木下肥後守㒶定

 播磨国 赤穂城 三の丸内


 戦場となった三の丸内の敷地ではもう戦闘は終わり静かなものだ、いや撲殺されなかった2列目以降にいた者達のうめき声が聞こえる。周りを見ると脇坂軍のかなりの数が血まみれになっていた。


 イワレヒコの方針は流血禁止だったが、張飛や部下達にに関する命令でこれはしっかり守られていた。

どういう事かと言えば、抜き身の刀をもったまま吹き飛ばされた者たちが、後ろにいる者に当たって切り傷が出来たという訳である。

3列目以降の者は比較的被害が少なかった、押し倒されただけで大部分の者が打ち身で済んだ。

打ち身で済んだ兵達は戦闘は不可能だが、うめき声を上げる事はできたようだ。



 戦闘指揮を終えた関羽の元へ部下が指示を仰ぎに来た


「関羽様、これからどうされますか?」

「うむ あとは赤穂城下の塩屋口門前で待機している、城受け取り方の木下軍への対応か」


関羽は暫く考えたのち赤穂城下の方へ向かって歩き始めた。


「私は赤穂城下にいる木下軍と会談する。お前達は赤穂藩士にこの場の片づけを頼んで来い。全員総出でやらないと日が暮れるぞ、では行って来る」




 播磨国 赤穂城 塩屋口門


 もう一人の受城使、木下肥後守は赤穂城下の塩屋口門前で待機していた。戦闘が終わったらしく撤退の準備を進めていると家臣の一人が報告に来た。


「殿に会いたいという者が参っております。見たこともない大男で7尺(2m10cm)はあろうかと、まるで天を突くようです」

「なにっ 7尺の背丈だと、それは人か? (あやかし)かしの(たぐい)ではあるまいな」

「いや 拙者には判りませぬ、髭も1尺5寸もあります。妖かしの類と言われても否定できませぬ」


 暫くすると先導の家臣に案内されてその大男が陣に入って来ると、木下肥後守が立ち上がって口を切る


「みどもは備中国足守藩主、木下肥後守㒶定(きんさだ)と申す。こちらは目付役を務められる榊原采女(うねめ)殿です。座ってお話したいが御身に合う椅子がありませぬ、悪しからずご承知いただきたい」

「なにこのままで構わない、私のことは美髯公とでも呼んでくれ」

「それでは美髯公殿、いかがな要件でござりましょうか」

「うむ これからの事だがどうする? このまま戦を続けるのかということだ、こちらはどちらでも構わない」

「我が軍は撤退の方針でおります、目付の榊原殿にもご同意いただいている次第。負けると分かっている戦を続けるほど無思慮では有り申さぬ」

「そうか、では気を付けて帰るがよい。幕府から納得いかぬ処分を受けたならば広島へ来るがよい、悪いようにはせぬ一族諸共面倒を見てやろう」


 目付役の榊原采女は徳川の旗本らしく大丈夫のようだが、小大名の木下肥後守は立場は微妙である。厳しい沙汰は無いと思うがあの徳川である、木下のことが気に入ったため保険をかけてやった。

一方脇坂軍は幕府の沙汰がどうというより、あれだけの被害を出して家臣が減ればお家立て直しはもはや不可能である。




 安芸の国 芸州 広島城


藩主浅野綱長が政務を行っていると、家老の上田主水が書状を持って書院の間に入ってきた。


「殿、失礼(つかまつ)る。赤穂より報告の書状が届きましてございまする」

「そうか書状を見せてもらおうか、なになに...ふむ...やはり予想通りか。いや勝つと思うておったがこれは予想以上か、一人の死者も出さなんだと書いてある。赤穂の藩士どもは後片付けの力仕事に明け暮れておるそうだ」

「では勝ったと?」

「軍監として赤穂にやった進藤俊重の書状にはそう書いてある。戦は一刻ほどで終わり、捕虜収容の方がかなりの時を擁したらしい」


 進藤俊重とは浅野家の家臣で、赤穂藩重臣たちの親戚があった。この軍監とは今回は戦目付ではなく、幕府方との戦闘を監視して様子を藩主に報告する役目であった。現代風に言えばいわゆる報連相役の仕事である。

もう一人軍監として派遣されたのは小山良速という家臣で、こちらも赤穂藩重臣たちの親族であつた。


「そうでござりまするか、伝説は誠であったと...」

「関羽様指揮の元幕府方は壊滅し、受城使の脇坂淡路守殿と目付荒木十左衛門は捕縛された書いてある。もう一人の受城使、木下肥後守殿と会談の末撤退させたとも書いてある。ほれ、読んでみろ」


上田主水は書状を一読し、「確かに」とうなずいた。




 ここは安芸の国、野貝原山 地中の拠点である


 赤穂城の様子をモニターで監視していたイワレヒコはおも室につぶやいた。監視の方法など幾らでもある、今回は虫型偵察メカを使用した。

この虫型偵察機は有用である、今回のはカナブン型である何処にでもいる、見つけても誰も気にしないよく飛びまわる虫だ。しかし今は季節的に少し早い気もするがそんな事はやはり誰も気づかない。


「どうやら終わったようだな、流血なしを指示したんだが結構血だらけだな。こりゃ、仕方ないか敵兵の抜き身の刀が敵兵を傷つけるとは予想外だったぜ」

『我が君よ、戦とはそんなものです、常に想定外の事が起こり得ます』

「はいはい、お偉い<スーパーバイオトロニクス様>の言う通りです。ところでそのお偉いスーパーバイオトロニクス様に質問だが、幕府はこの件を受けてどう出るか演算してくれ」

『我が君の表現は強烈な皮肉ですね、既に演算済みです』

「で結果は?」

『幕府は討伐軍を派遣します、確立99.6%。受城使の脇坂淡路守は改易、もう一人の受城使、木下肥後守は領地半減の上転封、確立95.8%と予想します。』

「うぇっ たかが2万石ちょいの小大名が領地半減とはきついな、関羽が申し出たとおり一族郎党ともにこっちで面倒みてやるか」

『それは構いませんがどこに住ませますか? まさかここにと言う訳にはいかないでしょう』

「それもそうか、まだ先の事だが考えておこう」



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