表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/12

007話 張飛と許褚

 播磨国 赤穂城 三の丸内


 三の丸での戦闘が始まると本丸の物見櫓で様子を見ていた張飛が飛び出す。


「おい許褚(きょちょ)行くぞ、皆殺しの始まりだぁ」


 と言いながら物見櫓から二の丸に向かって飛び降りる、許褚も無言でそれに続く。

近くにいた赤穂藩士は二人が飛び降りたのを見てギョッとする。物見櫓から飛び降りるなんて常人とは思えない、とても人間技ではないのだ。

人間ではないからな、精神(魂)は別として...立派なホムンクルスである。

 張飛はああ言ったが実は皆殺しではない、二人の能力があまりに高すぎるためリミッターは上限0.01%に調整してあった。何でも「思い切り暴れたい」のだそうである。

リミッターは上限1%だと思い切り殴ると、即死を通り越してミンチ状になる可能性があった。ちなみにこの二人は素手で戦う、武器を持っての戦闘はイワレヒコに禁止されていた。


 張飛と許褚とそれに続く部下8人は二の丸の敷地を横切り、中堀を越えると三の丸に突入した。

ちょうど脇坂淡路守の背後から襲い掛かった。脇坂は家臣の進言で二の丸方面に避難していて、大手門の方向の戦いを見ていた。そこに後から襲い掛かられたのである、たまったものではない。


「何事じゃ? 後ろが騒がしい」

「殿、背後から襲撃でござる。こちらの方が被害が大きゅうございます」


 そりゃあそうだ、前門の虎は4人、後門の狼は8人。加えて魔獣級危険生物2体による慈悲なき襲撃である。前門の規模なんて可愛らしいものだ。

前門の兵士は農民兵も含まれている、対して脇坂淡路守の周囲は近習を含めて旗本である。いわば脇坂軍の精鋭であった。

 その精鋭に張飛と許褚の魔獣級危険生物が襲い掛かっている。張飛の顔は喜悦に歪み、許褚はただ無表情に殴り続けるだけである。

護衛の旗本達はこんなにボコボコにされても死ねない、顔がへ込もうが肢体が向いてはいけない方に変形しようがただ殴られ続けた。そのためのリミッター上限0.01%である。張飛と許褚が思い切り暴れるための生贄であった。



張飛と許褚が思う存分楽しんでいた頃、黄忠は部下4人に指令を出した。


「もういい頃合いじゃろう、奴ら二人も少しは満足したはずじゃ。脇坂淡路守の身柄を確保せよ」

「はっ 承知いたしました、では手筈通り我らも動きます」

「うむ、お主らも少しは楽しんで来るとよい。わが部隊の分も幾分残しておけと伝えてある」

「脇坂の護衛はいかが致しましょうか、全員始末いたしますか?」

「2~3人は生かしておけ、何かの役に立つかも知れんしのう」


 黄忠がそう命ずると4人は気配なく溶けるように消えた。そして現れたのは脇坂淡路守のすぐそばである。


 脇坂は張飛と許褚と部下8人の戦いを眺めていた。徐々に自分の方へ近づいてくる戦場に気を取られて、いきなり近くに現れた黄忠班に気づかなかったのである。気づいた時にはもう両側を固められてさらわれていた。

遠くから「殿どこでござるか」「殿はいかがした」など家臣達が自分を探す声がわずかに聞こえてくる。

 かくして脇坂淡路守は無事に攫われたのである。無事にと言うか五体満足でという意味だが。

家臣の家老1人と世話係の近習1人もセットでさらわれてきた。お約束事である...

黄忠が人質の世話をしたくなかった、面倒くさいというのが最大の理由だ。

人質の世話は人質にさせるに限る、自分の事は自分でね...。

という訳で「何かの役に立ったな」と思いながら...とにかく黄忠は男には冷たいのであった。


 ついでと言っては何だが、受取り目付の荒木十左衛門も脇坂と一緒に拘束されていたりする。

荒木は一人だったようだ、主だった家来はいなかったとか...




 播磨国 赤穂城 塩屋口門


 もう一人の受城使、木下肥後守は赤穂城下の塩屋口門前に到着し、塩屋口門で待機していた。受け渡しが始まったと思われる刻限より半時過ぎたと思われる頃、水浸しになったずぶ濡れの農民兵が逃げてきた。

聞けば、大手門を入った三の丸で赤穂方に襲われたと言う。彼らは農民兵とみなされて堀に飛び込めば見逃されたらしい。

 道理で激しい音が聞こえたはずだ、あれは門に架かる橋を壊した音だったようだ。気になったがお役目柄この場を離れるわけにはいかなかった。


 しばらくして続いて逃げてきた農民兵の報告を聞いた。

三の丸内では脇坂軍はかなり劣勢で「負けるかも知れない」という、何でもバカみたいに強い六尺を越える大男が10人余りいて棒で殴り掛かってくるらしい。

その大男が棒を一振りすれば「数人が吹き飛ぶ」と言っていた。そんな話、聞いたことも見たこともない、我が軍はいったい誰と戦っているのだろうか?


 木下肥後守はもう一人の目付、榊原采女(うねめ)のところに行きこの件を相談する事にした。


「榊原殿、農民兵が言っている件につきどう思われますか、実直に伺いたい」

「うむ 木下殿、某も正直なところどう判断してよいのか判りませぬ」

「ならばもう少し様子を見るとしますか」

「それで宜しかろう、動くのは城内の様子がはっきりした後でも遅くはないかと」


 二人の方針が決まった後、半時たったと思われる頃、木下肥後守の家臣の一人が慌ただしく報告に来た。


「殿、大変でございまする。いま逃げて来た者の報告によりますと、お味方は全滅......もう戦っている者はいないという事です。脇坂軍3,500のうち討ち死は1,200余り、殴り倒されて戦闘不能になった者数知れず、堀に飛び込んで逃げて来た農民兵がおよそ500、 脇坂淡路守様と目付荒木十左衛門様は行方知れず。おそらく赤穂方に拘束されたと思われます。」

「なんじゃと、それは誠かっ。脇坂殿と荒木殿が敵方に捕まったというのか?」

「木下殿、これは大変な事になり申したな...いかか致す所存ですかな」

「いや...そう申されましても...」


 とにかく大変なことになった一大事である。ここは一旦引いて御公儀の判断を仰がねばなるまい。城受け取りに失敗した自分は処罰されるだろうが、このままここにいてもらちが明かぬ。

家臣を無駄なことで皆殺しに遭わせるわけにはいかぬのだ。やりようも無い、と言うことを榊原采女に伝えた。

榊原もやむなく撤退に同意した。

ここまでが赤穂城下の塩屋口門前で待機していた、城受け取り方木下軍の実情であった。



 撤退の準備を進めていると家臣の一人が報告に来た。


「殿に会いたいという者が参っております。見たこともない大男で7尺(2m10cm)はあろうかと、まるで天を突くようです」


許褚について


字は仲康。魏の曹操の親衛隊隊長でした。

身長6尺1寸5分(約184cm)で腰周りがおよそ120cmもあり怪力だったそうです。容貌が雄々しく毅然としており、武勇と力量も人並み外れていたと言うことでした。


『許褚の性格は慎み深く、誠実かつ重厚で無口だった』とあります。無口のため、しゃべらせなくてもいいので助かりますね。本編でもしゃべる機会はありません。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ