051話 大石内蔵助の義兄
但馬の国 豊岡藩筆頭家老 石束毎明の屋敷
元禄15年6月1日(1702年7月)、黄忠傘下の堀部弥兵衛は豊岡城下の石束毎明の屋敷を訪れた。石束毎明は豊岡藩の家老で大石内蔵助の義兄であった、つまり内蔵助の妻りくの実家である。
史実では内蔵助の家族は京都にいたはずだが、歴史は変わってしまったため、りくは次男以下家族と共に実家に帰っていた。もちろん切腹した内蔵助が復活している事は知らない。
小柄な老武士が石束家の門前に立った。
「たのもう。」
老人が案内を乞うた。門番が
「何用であるか」
と問う。すると老人はニヤリとした顔で答える
「石束毎明様とりく様にお会いしたい。拙者は元赤穂藩士の堀部弥兵衛と申す。実は〇〇○○〇様の使いで、第二次討伐について重要な情報を持って来た」
「はぁ? ○○○○〇様とはいったいどちら様だ?」
「ご家老殿に言ってもらえればわかる、判らねば豊岡藩は滅亡するかも知れんぞ。では良しなに」
そう言うと老武士はその場にじっと立ち尽くす。門番はやれやれと思いながらも屋敷の主人である石束毎明のところへ向かった。
ちょうどその頃、屋敷の主である石束毎明は書院で書き物をしていた。藩政もやることが多く、ことの他多忙であった。そんな中、門番が報告に来たのである。
「ご家老様、只今門前に元赤穂藩士を名乗る老人が訪ねて来ております。○○〇〇〇様の使いだと言い張っておりますがいかが致しましょうか? 追い返しますか」
「待て、確かにイワレヒコ様の使いと言ったのだな? ずぐにここにお通ししろ、決して失礼があってはならんぞ」
門番に言いつけると毎明は書き物を片付け、客人を迎えるための準備をした。準備と言っても客間に移っただけである。そこに老武士を案内してきた門番が入ってきた。
まず客人に上座の席を勧めると、毎明は家人に『りく』を呼んでくるように伝えると
「お初にお目にかかる、某は京極家筆頭家老を勤める石束毎明と申します。使者殿はイワレヒコ様の御使いと伺いました」
「ご家老様、拙者に丁寧な言葉など不要ですぞ。元々貴方様の方が身分が高いでしょう。藩主様に伝えてもらいたい事があります」
「いかなる事でしょうか」
「一昨日、江戸城で第二次討伐令が発布されました。それによると京極家は7,000の出兵を割り当てられました。軍師殿の情報によると江戸城で綱吉公が突如、『今までの割り当ての倍は出せ』とご老中に命じたそうです」
それを聞くやいなや石束毎明の顔色が変わる。
「そ、それは誠であろうか? 3,500でも大変なのだか7,000とは無理に決まっている」
と言っているうちに りく が部屋に入ってきたのである。
「りく、わしは登城して殿に報告してくる。お前は堀部殿と積る話もあろう、では頼んだぞ」
と言って毎明は席を立ち登城の支度をするようである。
「奥方様、ご無沙汰しております。堀部弥兵衛で御座います」
「弥兵衛殿、久しいですね。お元気でしたか? えっ? 貴方は殿(大石内蔵助)と供に切腹されたはずでは?...」
「それが生き返ってピンピンしておりますよ。内蔵助様も主税殿も元気にしております。我らにはイワレヒコ様という『生き神』様がついています、その『生き神』様の御力で内蔵助様も主税殿も生き返りました。今や内蔵助様はイワレヒコ軍の大幹部です、主税殿は許褚様配下の副隊長でござる。かくいう拙者も黄忠様配下の副隊長ですがのう、わっははは......」
但馬の国 豊岡藩京極家 豊岡城
豊岡藩筆頭家老 石束毎明は緊急登城すると藩主の京極高住に面会を求めた。京極高住は但馬の国豊岡藩の第2代藩主で、当時42歳であった。
「殿、緊急にお耳に入れたい事が御座いまする」
「何だ、毎明。急ぎの件か?」
「先程、イワレヒコなる者の使者が我が屋敷を訪れまして、かの者が言うには『昨日、江戸城で第二次討伐令が発令され、京極家は7,000の出兵を割り当てられた』そうです。江戸城で上様が突如、『今までの割り当ての倍は出せ』とご老中に命じたそうです」
「なんと7,000とな、わが藩は僅か3万5,000石の小藩ぞ、無茶苦茶にも程がある!...さてどうすればいいものか......いっそイワレヒコ様とやらに寝返るか」
「某は賛成でござる。我が藩は鳥取藩に近いため先鋒を命じられては敵いません」
「よし重臣を集めろ、今後の対策を協議する」
石束毎明は部屋から退出し重臣に集合をかけると屋敷に使いをやった。堀部弥兵衛にそのまま滞在してもらうためである。
藩主の京極高住はじめ重臣達の協議は紛糾することは無く、家臣団一同をもってイワレヒコ臣従に決定した。続いてイワレヒコの使者である堀部弥兵衛が豊岡城に案内される。京極高住が豊岡藩としての臣従の意思を伝えるためである。
「藩主の京極高住である。我が豊岡藩としてはイワレヒコ様に臣従することにした。何卒よしなにお願いしたい」
「拙者は使者を仰せ使っている堀部弥兵衛と申します。京極様、拙者に頭を下げる必要はありません、ただの使者に過ぎませんので」
「そうは言ってもな、我らは新参者ぞ。それが当たり前と思うのだが...」
「イワレヒコ様はそんなことを気にする御方ではありませんよ。そうそう豊岡藩にとって都合の良い事がもう一つ。石束毎明様の義弟である大石内蔵助様は今やイワレヒコ軍の大幹部でございますよ」
「なにっ、大石内蔵助とな? かの者は討ち入りの処罰で切腹したはずだ」
「そこがそれ、イワレヒコ様の神の如く御力で生き返っております。かく言う拙者も腹掻っ捌いて切腹しましたが、ほれこの通りピンピンしておりますよ」
「なにっ、使者殿も切腹して死んだだと...」
「それどころか赤穂浪士全員が復活しておりまして、先日の浜田城・松江城攻略は主に赤穂浪士が中心となり申した」
次に堀部弥兵衛は駄目押しをする
「京極様、我が神イワレヒコ様は貴方に前払いの報酬を用意しておられます。これは腕時計型通信機と言って、日ノ本の中なら何処でも話が出来る神器でございます。売ることは出来ませんがもし買うとすれば10万両は下らないでしょう」
と言うと堀部弥兵衛は腕時計型通信機を起動し本拠地にいる大石内蔵助を呼び出す。
「大石様ちょっといいでしょうか? 応答願います」
「こちら大石内蔵助だ。弥兵衛、何事かな?」
というや否やホログラムで内蔵助の姿が映し出された。この様子を見て義兄の石束毎明と重臣達は腰が抜けるほど驚いたのである。
「いや用と言うほどのものではありませんが、豊岡の石束毎明様とお話してもらいたくて。腕時計型通信機の実演をしているところですよ」
「そうであるか。兄上久し振りで御座る。御変わりはないだろうか?」
「内蔵助殿、こちらこそご無沙汰しています。たしか切腹したはずだか...これはどういう事だ?」
「いや生き返って復活していますよ。それとどうですこの腕時計型通信機は? 一昨日の綱吉公の無茶ぶりの件など、孔明様を通じて通信機の所有者に配信済みでござる」
そこに京極高住が割り込んだ
「何、それは誠か。我が豊岡藩はイワレヒコ様に従うという判断は間違っていなかったな。皆の者異存はあるまいの?」
改めてこの場にいる家臣達に確認したのだった。




