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033話 新人選択会議


 安芸の国、野貝原山 地中の拠点


 イワレヒコが大石内蔵助と謁見した翌日のことである。


「おーい、孔明さんよう、久し振りに出て来てくれないかなー」


『いかがなされました、わが君』


「例の赤穂浪士の順化調整が済んだ頃と思うんだが、どうなんだ?」


『無事トラブルも無く完了しておりますよ』


「そうかなによりだ。それで赤穂浪士達の配属先を決めたいんだが、いいアイデア、プリーズ」


『それでしたら新人選択会議を提案いたします。各隊長がくじ引きで人材を指名します。指名は七巡目まで行います、いかがでしょうか?』


「おお、ナイスアイディア! 名案だぜ、決定な。それとは別に大石内蔵助はオレの秘書役として励んでもらいたい」


『それはいい考えです、賛成します』


「選択会議の司会は孔明にやってもらおう。例のアバター、初公開といこうじゃないか」




 安芸の国、野貝原山麓(ふもと) 明石村 イワレヒコ神社境内


 元禄15年2月22日(1702年3月)、大石内蔵助を除外した45人の配属先を決める新人選択会議が行われる事になった。指名人は各隊長、以下の通り六人である。


  1. 関羽 雲長  

  2. 張飛 翼徳  

  3. 趙雲 子龍  

4. 黄忠 漢升  

  5. 許褚 仲康  

  6. 本多 忠勝  


 神社の境内に紅白の幕を張り、もうお祭り気分である。指名する隊長格6人は前方へ、指名を受ける45人は向かい会う形で床几に腰掛けていた。

そこに登場したのは孔明こと『亮』である、初お目見えのアバターであった。なよなよしい優男で過(か)っての孔明を彷彿させる容姿である。


「本日、『新人選択会議』の司会を勤めさせて頂きます亮と申します。皆様方よろしくお願い致します。まず関羽殿を除いた隊長格5人の方が、希望する人物の名前を書いて投票箱に入れて下さい。重複した場合はクジで決めます。2巡目は関羽殿から席順に指名してもらいます。3巡目の指名は逆の順番で指名して下さい。4巡目は最初の順番で指名をします。5巡目は逆の順番で指名して下さい。以下終了するまで繰り返します。以上です、お分かり頂けましたか?」


 何の事はない、現代のプロ野球のドラフト方式である。2巡目以降がウエーバー方式なところも良く考えてあった。さすが<超優秀なスーパーバイオトロニクス>の孔明サンである。

しかしながらこの優れた制度を理解できないのが二人いた。そうです、あの<野獣脳>を持つ張飛サンと許褚サンであった。二人の顔には『そんなの関係ねぇ』と書いてあるようだ。

特に張飛サンなんかは鼻毛を抜くのが忙しいようである......



1巡目の結果と人数(45名)は以下の通りである


  1. 関羽 雲長  木下 㒶定(きんさだ)を配下にしているため1巡目は無し 他8名

  2. 張飛 翼徳  堀部安兵衛           他8名

  3. 趙雲 子龍  礒貝十郎左衛門         他8名

  4. 黄忠 漢升  堀部弥兵衛           他8名

  5. 許褚 仲康  大石主税            他8名

  6. 本多 忠勝  岡野金右衛門  本多家の家臣を採用するため以後棄権


以下が獲得した理由である

  2. 張飛 翼徳  堀部安兵衛は豪傑で乱暴者のため張飛に気に入られた

  3. 趙雲 子龍  礒貝十郎左衛門は知性的で顔も良いため似た者同士

  4. 黄忠 漢升  堀部弥兵衛はじじい同士で気が合う

  5. 許褚 仲康  大石主税は年齢の割に体格が良く将来有望

           許褚と相撲が取れる人材    

  6. 本多 忠勝  岡野金右衛門は十文字槍の使い手でどうしても欲しかった


 二位以下は特徴がないので割愛したい。以上45名の配属先が決まったところで『新人選択会議』は閉会となった。

もちろんイワレヒコはこの場に無く欠席である。会議の進行を妨(さまた)げないようにするためであった。イワレヒコ(浅野内匠頭の顔)がいると赤穂浪士達が騒ぎ出して『新人選択会議』どころでは無くなる可能性があったからだ。

 かくして赤穂浪士達は新たな隊長の元へ引き取られていった。これはドナドナとは言わないのである。その証拠に各自嬉しそうだったという......




 少し離れた野貝原山 地中の拠点


「あっははは! 孔明見たか? 隊長たちはみんな自分と同じ様な奴を獲得したな。『同類相集う』というやつか。黄忠なんかは堀部の爺さんなんか獲得して相性がいいんだろうな。ヨボヨボの爺さんの見た目に騙されて、一杯食わされるのが目に浮かぶわ! こりぁ、将来において部隊の特徴が分かれるな。孔明、大変だぞあいつ等の制御は」


『お任せ下さい、ちゃんと考えてあります』


「ところでどうだった? 『亮くん』の体の調子は」


『それはもうバッチリで御座いますとも♡』




 ここは江戸、出入口を管理する門 徳川幕府の役人(御家人を含む)の詰め所


 東海道は、1601年(慶長6年)に整備され現在の港区芝四丁目あたりが起点だった。その3年後に「東海道」が延伸したことで日本橋に起点が移ることになった。その際、新橋が架けられ文字通り『新しい橋』という意味で地名になった。日本橋 は江戸の全街道の起点となったのである。

 幕府が治安維持や交通規制の目的で築いた石垣と門の関門で、東海道における最大の「江戸の玄関口」は高輪大木戸(たかなわおおきど)が有名である。しかし1710年に築かれたため、この時代にはまだ無い。



 元禄15年2月26日(1702年3月)、罰金を命じられた鳥取池田家、明石松平家の妻子と江戸詰めの家臣は江戸から脱出しようとしていた。

護衛は趙雲班と許褚班である。趙雲はその性格からか人助けにもって来いのタイプだ。新たに部下となった礒貝十郎左衛門と大石主税も供にあった。

 今回の脱出劇は前回と同じ方法で行くことになっている。池田家約200名、松平家約100名が行列を組んで江戸出入口の門に向かうと、そこには出入口を管理する役人が木刀を持って待っていた。早朝に100人以上で待ち伏せとはご苦労さんである。

前々回の脱出劇の時は刀で切り込んだ役人がいて、これは全員撲殺された。ならば木刀なら大事には至らないだろうと役所の上役が考えたのである。彼らとしては黙って通すわけにはいかない、今回で4回目だがさすがに面子に差し障る。


「それっ、うち掛かれ!」


 役人は合図のもと一斉に打ち掛かったが、新人の元赤穂浪士達が迎え撃った。もちろん素手である、強化棒で対応すると『弱い者いじめ』が甚だしく不公平である、もちろん早く片付き過ぎて訓練にもならない。それでも元赤穂浪士の新人達は一人当たり8人くらい対処したのである。


 ではここから更に詳しく描写すると以下の通りである。


 春の柔らかな朝日が照らす中、江戸の入り口、日本橋大木戸はいつになく緊迫した空気に包まれていた。


「待て! そこな者たち、通すわけにはいかぬ」


 行く手を阻んだのは、数人の門番たちだ。彼らは抜身の真剣ではなく、あえて「木刀」を構えていた。目の前の集団が、鳥取池田家・明石松平家の者達であると察していたからだ。公儀の番人としての意地であった。

対する元赤穂浪士たちは彼らは腰の刀には一切手をかけず、静かに力強く一歩を踏み出す。

素手でまかり通る。それが無益な殺生を避けるという彼らなりの覚悟だった。


「どいていただこう」


礒貝十郎左衛門が答えると同時に、一人の浪士が鋭い気合と共に踏み込む。門番が振り下ろす木刀を紙一重でかわすと、その懐へ流れるような動きで腕を絡め取り木刀を封じる。力でねじ伏せるのではなく、柔の理(ことわり)で相手をいなしていく。


「カツン」


乾いた音が響く、木刀が石畳に落ちた。素手の浪士たちは門番の当身をかわし、肩を突いて体勢を崩させ流れるように包囲網を抜けていく。門番たちも必死だが、一切の武器を使わないという潔さに、どこか気圧されていた。


「行かせろ」 と大石主税が叫ぶ


倒れた門番全員が呟いていた。素手のまま一滴の血も流さず元浪士達と行列の一行は大木戸を通り抜けた。

大人数のため通過に時間はかかったが、彼らの背中は春の朝日を浴びて、東海道へと続く道を真っ直ぐに進んでいったのである。


 無事怪我人もなく門を通過出来た。門番の役人? 「そんなもんは知りません。軽い痣を作って気絶しただけです」という事である。

ちなみに強化棒だが、天秤(てんびん)棒として大活躍であった。両端に紐を結んで振り分けて荷物を運ぶ、まさに江戸時代の『運送屋さん』であった。ホムンクルスの体力で6人前の荷物を運べたと言う......



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