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002話 美髯公

 ここは江戸、徳川幕府の都である


 美髯(びぜん)(こう)と呼ばれる男は夕日に向かって佇んでいた。何をする訳でもなくじっと佇んでいるのである。実は軍師からの通信による指令を聞いていた。


 この男本来は長身であるが、日の本のこの時代に合わせて身長を縮めてある。160cmくらいだろうか。それでも大柄である。小説毛宗崗本では7尺弱(208㎝)で、1尺5寸(約46cm)の髭、「熟した棗(=なつめ)の実のような」と形容される紅顔であったと形容されている。髭も今は無精ひげ程度にとどめていた。


「はぁ~ 全く軍師も人使いが荒いよな。遺体を持ち帰れだとよ、それも首と体が生き別れなやつだと....」


 彼は独り言を呟きながら再び何度目かのため息をついた。現在の体の年齢に比例してか口調もやや幼い、言うなれば若者調である。本来はもっと思慮深い性格なのであるが....

夜も更けた頃に泉岳寺に忍び込むつもりであった。この任務のために部下は4人連れてきていた。もちろん棺桶という荷物持ちのためである。その部下の一人が


「隊長、まあいいじゃないですか退屈よりよっぽどマシですよ。いままで何年ヒマしてたんですか?」

「そうだけど、いくら何でもつまらん仕事だよなぁ。それより隊長というのは何とかならない?」

「隊長、この姿で将軍とお呼びするのはいくら何でも不自然でしょう。では若とお呼び致しましょうか。若、退屈は最大の敵です! また無職と言われたいんですか?」


と言われ彼は諦めた、何事においても諦めは肝心である。




 元禄14年3月14日、江戸城松の廊下において、赤穂藩主・浅野内匠頭長矩が吉良上野介義央に斬りかかるという刃傷事件が発生した。

この報告を受けた5代将軍・徳川綱吉は激怒し、調査を待たずに浅野内匠頭の即日切腹と、浅野家断絶、領地没収という裁定を下した。

綱吉がここまで怒り、厳罰に処した背景は、単なる傷害事件というより当時の幕府が抱えていた事情があった。


 浅野内匠頭の処断は、陸奥一関藩主である田村建顕の芝愛宕下にあった屋敷にお預けが決まり、

幕府の正検使役として大目付・庄田安利、副検使役として目付・多門重共、同・大久保忠鎮らが田村邸に到着し、出合の間において浅野に切腹と改易を宣告した。申の下刻(午後6時10分頃)

の事である。

その後、田村家から知らせを受けた浅野家家臣の片岡高房、糟谷勘左衛門、建部喜六(江戸留守居)らが田村邸に赴き、遺体を引き取り高輪泉岳寺に埋葬された。



 さて夜明けまでに回収という仕事を終えた関羽らは東海道を西に爆走していた。もちろん馬という便利な物は無い、人力である。ただしどちらが便利な物か分からない。馬は飼い葉を喰う、水も飲む、それに適度に休息も必要である。

彼らは人力と言ってもよいのか人造人間である。まあホムンクルスというやつだ。

ただあまりにも知能が高すぎて文句を言ったり、冗談を言ったりする。良し悪しだ。

一人が棺桶を担ぎ走る、四人で交代しながら走る。もちろん休みは無しだ、誰も文句を言う奴がいないからだ。仕事の時に文句言わないのは彼らの美点であろう。




 広島城から西南西へ6里半(約26km)のところにに()貝原(がいばら)山という山がある。昭和のリゾート開発が盛んに行われていた頃は「のうが高原」と呼ばれていたところだ。この山にはピラミッド伝説がある。方位石、飾り石、扇形鏡石、円形鏡石などが存在している。


 この野貝原山の中腹、山の地中にイワレヒコの拠点があった。いつの時代から存在したのか分からない。誰も気にしないし知っていても徳する事はないからだ。おそらく神代の時代から存在していたと思われる。

 そこはかなり広い空間であり膨大な面積をある装置が占有していた。言うまでもなく人工脳の本体である。現代の表示方法でいうと10,000㎡ (100m×100m) はあった、とにかくやたらに広いのである。


 ここは狭いと言っても100㎡程の広さで、いくつかあるうちの一つだ。その制御室でイワレヒコと自称<スーパーバイオトロニクス>が会話を交わしていた。


「で、例の件はどうなった? 無事回収したか?」

『もちろんでございます。回収班は今朝がた到着致しました、遺体を確認しましたが目的には支障がないかと。只今、復元作業に移行しております』

「一応確認のため映像を見せてくれ」


とイワレヒコが伝えると前面の中型パネルに到着後の様子が映しだされる。手術台らしきものの上に安置された遺体を見てイワレヒコは思わずつぶやいた。


「なんじゃこりゃ、首と体が生き別れなのは承知していたがこりゃひどい!」


 史実において浅野内匠頭は切腹した。磯田武大夫(幕府徒目付)が介錯。浅野家家臣らが田村邸に赴き、介錯に失敗し首を二度斬りされた内匠頭の遺体を確認した。彼らが遺体を引き取り高輪泉岳寺に埋葬された。

そう介錯に失敗し首を二度斬りされたために状態はひどいものである。


『我が君よ、何か問題でも? これくらいどうと言うことはありません、もっといい男前に仕上げて差し上げます大丈夫ですよ』

「いやそうでなくてな、オレが言いたいのは介錯人の腕前があまりにも酷いという事だ」

『では介錯失敗の切り傷跡でも残しますか? ヤクザ者みたいで箔がつきますよ』

「やめてくれ、オレは見た目も普通の人間でいたい...」


という主従で会話が交わされたのは余談である。


「ところでお前はなんと呼んだらいいんだ? 希望はあるのか」

『そうですね孔明というのは仰々しいのでパスしたいです。亮...リョウでお願いします。日の本の男名でリョウというのは有りだと思いませんか』

「亮解した」

『我が君、それは意味不明です。』

「お前冗談が理解できるんじゃねぇのか」

『貴方様のは言語明瞭、意味不明瞭です。言語の文法的に絶対許せません』

「ちっ、注文の多い奴だな。それは外で活動する時のアバター名にしとけ、ここ拠点内部では孔明でいくぞ決定な。それに孔明の方が混乱が少ない、あいつとかあのバカタレとか脳筋野郎には絶対に効く逆らえない名前だぞ」

『わかりました、我が君の(おぼ)()しに』


 イワレヒコはこいつの精神体(魂)を捕獲に行った時の苦労を思い出してしまった。当時を回想すると何かと注文の多い贅沢な奴だと感じていたものだ。

とにかく精神体(魂)の確保が第一目的だったためこいつの希望は全部聞いてやった。強制的に捕獲すると順化が上手くいかず、バイオトロニクスの性能が落ちるためである。

その点、脳筋野郎達は楽なもんだった。『戦いたい』とか『女を抱けるようにしてくれ』が大半だった。オマケとして『酒飲み放題』を付けてやると拒否する奴は一人もいねぇ。「武将釣りは、魚釣りより簡単だぜぇ」と思ったものである。

 孔明なんかは三回も手間をかけさせやがって、『三顧の礼』といって様式美なんだとさ...

まあともかく順化も上手くいって満足たが、あの人を馬鹿にするような性格まで引き継がなくても良いだろうによ。何とかならんもんかね。

最もあの忌々しい性格が無かったら、孔明が孔明とは言えないだろうしな仕方がないのか...




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