014話 降伏勧告
元禄14年7月6日、赤穂城下町 袋のネズミ19日目
再び黄忠が使者として訪れる日が来た。兵糧が尽きて3日後のことである。
黄忠と各藩2名(10人の)戦評定衆との交渉が始まった。さすが身分の高い者達で飢えても一般兵よりも気丈に振舞っていた。まず黄忠から発言する
「ほう~ 兵糧が尽きて暫く経ったはずじゃ、意外に達者のようじゃのう。それで貴殿らの結論は出たのか」
「まず、降伏の条件を伺いたい。返答によっては結果が変わる」
と池田吉明
「では我が主から降伏後の開放の条件である」
1、武器、防具はすべて没収 ただし護身のため小刀は認める
2、三日分の食料、水は与える
3、こちらに寝返りたい者は認める
「以上である、何か尋ねたい事はないか?」
「降伏すれば開放してもらえるのか? しかも三日分の食料つきで」
「貴殿の主とはどなたのことでしょうか、浅野本家の安芸守殿のことですか?」
「いや 浅野綱長殿より遥かに上位の御方である。綱長殿は我が主に従っておる」
「なんと! 大藩の領主が上様以外の誰かに従っているというのか」
この場にいる10人の評定衆がざわつく
「最後に我が主からのお言葉である。『この度はこれで許すが次は無いと思え、二度目は皆殺しにする』ということだ」
もちろんイワレヒコはこんな事は言ってはいない、黄忠の言葉遊びである。いわゆる脅しであった、しかし逆らう者は皆殺しにする気満々であった。『張飛めが大喜びするのう』と思いながら、続いて黄忠は評定衆に助言をする事にした
「討伐軍がこのまま敗走すれば幕府からどんな罰を受けるのじゃろうの? 無事では済むまい、改易か転封かよく考えてみる事じゃな。木下肥後守はどうなった? あの御仁の失態ではない、ただ運が悪かっただけじゃ。木下殿は我らと戦ってはおらん、情報を持ち帰っただけ。貴殿らも戦ってはおらんじゃろう、何が違う?」
「......」
「徳川より待遇は良いと保証するぞ」
黄忠はちゃっかりと寝返りの交渉(調略)をしておいたのである。
ここは安芸の国、野貝原山 地中の拠点である
イワレヒコは例のごとく制御室で監視モニターを眺めていた、思わずほくそ笑む
「黄忠の奴、ノリノリだったな、オレがいつ『二度目は皆殺しにする』なんて言った?」
『我が君、それぐらい構わないでしょう。彼も退屈しているのですよ、この前は活躍の場が無かったので』
「おまけに徳川より待遇を良くすると? まるで詐欺師だな」
『詐欺とは言い切れないでしょう、確実に生活水準は上がりますから』
「ま、いいか。ところで奴等が徳川を裏切る確率演算をしてくれ」
『はい、終わりました。親藩を除く三家は99.8%で寝返ります。親藩の二家は50.2%です』
「おっ、親藩は意外に低いな」
『親藩の仕置きには反対意見が出ると予想します。代わりに罰金あたりで済ますのではないかと』
「それなら幕府の沙汰を待ってから黄忠に動いてもらうことにするか」
足守藩木下肥後守の江戸屋敷
元禄14年(1701) 5月、江戸城にて討伐の命令が下された頃、足守藩主木下肥後守には閉門蟄居の沙汰が言い渡された。
領地半減のうえ転封が決まったので、どこの領地になるか幕府の決定を待っていたのである。
しかしもう決心はついていた、関羽と趙雲には
「家臣達と相談したいと思います、暫く時を頂けまいか?」
と返答した後、家臣達と相談した。もちろん蟄居の身で部屋から出れないが呼び付ければ済む話である。
元禄14年7月7日、関羽と趙雲が再び忍びで訪ねてきた。
「木下殿 久し振りですね、決心はつきましたか?」
と関羽が青年の好調で言う、江戸潜入時はこんな感じだ。
「はい、我と家臣と一族郎党は大神様と呼ばれる方に臣従いたします。やはり某は此度の公儀の沙汰に納得しておりませぬ」
「分かりました、ではそのように」
「家臣たちの家族ですが如何にすればよいのかご教授ください」
「ご家族ですが、通行手形が下りる者はそのまま江戸を出て安芸の国までお越し下さい。国元の家臣と家族も安芸の国へ」
関羽は孔明の指示で少しづつの江戸脱出を計った。問題は江戸表の大名の家族である。この時代は実質大名の家族は人質であった、これは監視されているため強行突破になりそうである。
関羽は続ける
「新しい領地が決まり次第、江戸を出て領地に向かう振りをして下さい。江戸を出てしまえばこっちのもんです。堂々と行方不明になって安芸の国の方へ...分かりますよね」
「人質にされている某の奥や子供たちはどうなりましょうか?」
「難しい問題です...それについては今のところ強行突破しかありません。まあ大丈夫ですよ、こちらにお任せ下さい」
安芸の国、野貝原山 地中の拠点
『我が君よ、今度の木下家の<江戸脱出作戦>は誰に担当させますか? 』
「趙雲は決まりだったな。うーん...最近活躍の機会が無かったのは誰だ? 」
『黄忠の部下達です、黄忠はそれなりに見せ場(調略)がありましたが、部下は脇坂淡路守を捕縛するだけの簡単なお仕事でした』
「まあいいだろう、では趙雲班と黄忠班に頼もう。あと<江戸脱出作戦>とやらのスケジュールを計画してくれ」
簡単に終わる主従の会話である。以心伝心という訳ではないが、これだけで要件が終わる今日この頃であった......




