ハンター道中膝栗毛
どうやらおやじさんは、お店をやめて付いて来るつもりだったみたいです。
引っ越しはおかしな噂が流れている間だけで、消えたら戻って来るよう説明したのですが、
その期間のチャクソーがー、とか、カミガカリのきっかけがー、とか悲しんでいます。
つまり?たぶん?寂しいということですね?
なので、ごすじんが宿題というものを出しました。
『拳が空を飛んで、遠く離れた相手を殴るロマンを見せてほしい』
おやじさんは目を血走らせて作業場に戻っていきましたよ。
まずは西に向かって街道を進むのです。
何日か進むと、別の街が見えてくるはずだと聞いています。
西というのは左の事だと思っていたのですが、左とは決まっていないみたいです。
前だったり後ろだったりすることもあるんだそうです。
なかなか難しいのですよ。
でも、上や下になることはないみたいです。
ぽてぽて……つらつら……ぽっくりぽっくり……
せかせか歩いて、だらだら休んで、とてれんとてれん進みます。
ごすじんと一緒に歩くのは嬉しいのですが、ごすじんが少し辛そうです。
私と目が合うと笑いかけてくれますが、無理をしているのではないでしょうか?
「大丈夫、ハンター稼業で少しは体力も付いてる」
普段の狩りでは、こんなに長く歩き続けることは無いのです。
いえ、おんなじような景色がずっと続いていることが、長く感じさせている罠なのでは?
かっぽこかっぽこ蹴る音と、ゴロゴロガラガラ転がる音がしたときは馬車です。
何かが来ることは匂いで先に分かるのですが、運んでいるもので匂いが変わります。
馬車だということが分かるのは、音のほうが先になることが多いですよ。
この道にはオーダンホドーがありません。
ごすじんと私は、道の右側を歩いています。
だから馬車が来ても、邪魔にならずそのまま通り過ぎていきます。
「こっちは右側通行の習慣は無いのかな?」
たまに道の脇が茂みになっている場所がありますが、そういうときは少し真ん中に寄るようにしています。
何か飛び出して来たら面倒だからです。
道端には時々お墓のようなものが立っています。
でも、これはお墓ではありません。
ごすじんに教えてもらいました。
「標識……いや、一里塚の代わりだろう」
街道の途中には、ごはんを食べたり、寝るために布の家を作ってもいい、広ーい場所があるそうです。
その場所が、あとどのくらい離れているか、今どのくらい近付いているかを見るための石みたいですよ。
確かに、道の上に布の家を作ったら、馬車にぶつかってしまいますね。
夕方まで歩き続けて、道の横がナンタラひろばみたいになっている場所に着きました。
他の人が作った布の家が見えます。
隅っこのほうから水が流れる音がしています。
穴と溝を掘って、崩れないように石を並べて、その石が積み重なっていました。
水を使うときはあそこから汲んでこないといけないみたいですね。
それから、石と木で作った普通の家もありますよ?これは持ち運べない家だと思います。
「これは駅だよ。役割としては……旅籠と呼んだほうが近いのかな?」
駅というのは電車が人を飲み込んだり吐き出したりする場所だったはずです。
私は中まで入ったことはありませんが、コゴローから聞いたことがあります。
コゴローは、おばちゃんの代わりに周りを見て、おばちゃんを案内する仕事をしていました。
あれ?今日は布の家を作らないのですか?
「猟獣会の計らいで、駅に泊まれるんだ」
駅の中がどうなっているのかはわかりませんが、電車は知っているのです。
あいつらはとてもでっかくてうるさいのです。
駅に居たらあいつらがやって来るのではないですか?うるさいのは嫌ですよ。
「ここには電車は来ない。だから、心配はいらないよ」
ごすじんが来ないというのなら、来るわけがないですね。安心ですよ。わふん。
ごすじんが駅に近付くのを、いろんな人が見ています。
その中から、守ってるのに守ってない鎧を着た人が声をかけてきました。
「あんまり羽振りがいいようには見えないけど、お兄さん駅に泊まるのかい?」
「そのつもりだが、何か用かな?」
「そっか、ちょっと今夜テントで寝るのは心細くてね、良ければなんだけど、温かくて柔らかい枕はいらないかい?」
「針の仕込まれているかも知れない枕はちょっと……ね」
「駅で揉め事はご法度なんだよ。手配書が回っちまう。だからどうだい?良く鳴いて良く弾む枕だぜ?」
「遠慮しておくよ」
「しゃーないか……ここまでにしておくよ」
「力になれなくてすまないね」
「いいさ、ダメで元々の提案だ。気にしないでおくれ」
なんだかおかしなやり取りでしたね。
まあ、よくわからないことはごすじんにお任せしておけば、間違いないのです。
おれたちの たたかいは、 まだまだ これからだ!




