晴れた昼下がり
仕留めたウシの近くで、ごすじんが角の人と話をしています。
ごすじんは「まて」したいみたいですが、角の人にはそれが伝わらないみたいです。
「ダメに決まっているじゃないか、危険すぎる。見ていただろう?」
「アタシも最初はそう思ったんだが、仕方ないだろう?だんだん楽しそうに見えてきちまったんだ」
「だとしても、大怪我しそうなことをホイホイ承諾できるわけがないだろう?」
「えっ?」
「何か怪我をしない確証でもあるのかい?だとしても、私は認めないがね」
「そうじゃなくって……心配、してくれてんだなぁ……って」
「あー……すまないが、話が噛み合っていないようだ。私は何か失礼なことを言ってしまっているかな?」
「いや、何でもないよ。気にしない気にしない」
なんだかムカムカしますね……
リッキーのところのあんちゃんがよく言っていた、メスの顔しやがって……というやつですか?
それとも、まだ身体の中身がズレているのでしょうか?
こういう時はどりるが一番です。
水浸しになったときや、掻けないところが痒いとき、頭がぼんやりしたときはどりるをするとサッパリします。
ばるるんぶるるんどりどりーんです。
「アタシが牛の役で今のを試すのはどうだい?それなら危なくないだろ?」
角の人がおかしなことを言い出しました。
「流石にあんなもの突き刺されるのは御免だから、しがみ付いて耐える勝負になるけどね」
余計なことをして疲れるだけなのです。
まだ、街までお肉を運ぶ仕事も残っていますよ。
「ドスンバタン、嫌」
「乗り気じゃないみたいだね……じゃあ、アンタはどうだい?アタシの雪辱戦ってことで」
「しがみ付く、言い方を変えれば抱き着くということだよ?軽々しくそんな提案をするべきではないと思うが……」
「こんなこと誰彼構わず言ったりしないよ。それくらいの常識は持ってるさ」
「やめておこう。変なところに手が触れたり、いろいろ事故が起きそうだ」
「そうかい?アンタが相手だったら、多少のことなら事故には数えないでおくけど?」
「うーん?慎みとかの尺度が違うのかな……まあ、遠慮しておこう」
「あーあ、勝ち逃げされちまったかぁ」
「そんなつもりはないよ。君の不戦勝でいい」
「そういうトコなんだよねぇ」
「……何がかな?」
「敵わねぇやって思うのが、だよ」
もう一回、ばるるんぶるるんどりどりどりりーんです。
「運ぶの手伝うからさ、もう一頭狩っていかないかい?」
「それは構わないが、危険なことは禁止だよ」
「問題ないよ。転んだところで足を潰すんだろ?アタシの活躍も見せておきたいだけだからね」
「それは既に闘技会で見せてもらっているんだけど……」
「細かいことは言いっこなし」
二頭めのウシは角の人が仕留めました。
角の人は、どれくらい力を入れたら、どれくらい効くのかが、わかってしまうみたいです。
力を入れ過ぎないし、抜き過ぎません。
丁度いいくらいの力でウシの足を使えなくして、そのまま仕留めてしまいました。
私にはその丁度よさというのがよくわかりません。
たくさんを相手にするときは配分を考えることもありますが、いつも力いっぱいです。
それから、相手が一人だけなら、角の人もごすじん領域を使えるみたいですね。
でも、たくさんの人の中を通り抜けるときは、ごすじんみたいな上手な使い方ができていませんでした。
私はたくさんの人がいても、ごすじんと並んで歩けるぐらいには使えるのです。
だから、角の人にも負けてないのです。
……あれ?どうして角の人に勝つ必要がありますか?
やっぱりウシを運ぶのは大変ですよ。
持ち上げて運ぶのは無理そうなので、引きずって運びます。
そのままだと皮やお肉がダメになってしまうので、真っすぐな木を何本か使うことになりました。
木を伐るのは、ごすじんが角の人にお願いしていましたね。
それを並べて縛ったやつに、ウシを乗せるみたいです。
「荷馬車ではないけど、これでドナドナといこうじゃないか」
「ドナ……なんだいそりゃ?」
「私の故郷にそういう歌があるのだが……まあ、通じないか。仔牛でもないしね」
「歌ねぇ……民謡みたいなモンかい?せっかくだから披露しちゃくれないか」
「耳汚しにならなければいいんだが……」
「……グスッ……ウッ」
大変です。角の人が泣き出してしまいそうです。
怪我はしていないはずですが、どこか痛めてしまったのでしょうか?
「ズズ……泣いてねぇ!アタシは泣いてなんてねぇぞ!」
よくわかりません。
「痛い?痛くない?平気?」
「なんでもねぇよ!さっさと進むぞ……グシッ……日が、暮れちまうからね」
ウシを乗せた木に、太い紐を結んでグイグイ引っ張っています。
やっぱり怪我はしていないみたいです。
なぜか、ごすじんが角の人を泣かせるくらいヤバいハンターという噂が立ちました。




