カウボーイ・スラップスティック
ごすじんが仕掛けを仕掛けました。
おっ?しかけをしかける?なんだかおかしな……いえ、合っていますか?
とにかく、ウシからちょっと離れた場所に、布の仕掛けを取り付けました。
そこからもう少し離れた場所にも、おんなじものを取り付けます。
仕留めようとするところが他のウシから見えてはいけないからだそうです。
たしかに、仲間がやられそうになったら、他のウシが助けに来るかもしれませんね。
さすがはごすじんなのです。
まずは一匹だけを引き寄せて試すみたいです。
なんと、ウシは一匹とは言わないのですか?
一頭?ウサギの時みたいに、数え方が変わるそうです。
一頭だけが見ているときに、仕掛けを裏返して赤にします。
一頭のウシがもぐもぐするのをやめて顔を上げました。
ごすじんはそれを見て紐を引き、仕掛けを動かします。
ウシは赤く変わった布を見るとカンカンに怒って――いませんね。
布のことは気になるみたいですが、怒るよりも警戒しているみたいです。
でも、すぐに見るのをやめて、またもぐもぐに戻ってしまいました。
「うーん、蹄で土を掻く様子もない……か」
「思ってたような反応じゃなかったみたいだねぇ」
ごすじんが布を白にしようと紐を戻したとき、別のウシが顔を上げました。
あれ?白になったのに、ウシがイライラしているみたいです。
「なあ、あの前足をザリザリ動かしてるのって……さっき言ってた苛立ちのサインじゃないのかい?」
「そうみたいだね。ここの牛は白で怒るのかな?」
「だったら設置してからずっと、怒らなかったのがおかしいじゃないか」
「それは確かに」
うむむ、イライラが落ち着いたのか足の動きが止まってしまいました。
「もしかしたら色は重要じゃないのかもしれない」
ふーむ……そういえば、昔の私は赤も緑も良く分かりませんでした。
ウシもそうだとしたら?
色とは別で、さっきと違うところと言えば……
「動き、かた?」
「そうだね。ちょっと試してみようか」
ごすじんが紐をぐいぐい動かすと、布は裏返しと元通りを行ったり来たりでヒラヒラ動きます。
それを見ているウシが、またイライラし始めましたよ。
「あ、こりゃ来そうだね」
ウシは角が前を向くように、うつむき加減で布に向かって走っていきました。
なかなかの速さが出ていますね。
あのでっかい体で、あの速さは、かなり危ない獣です。
でも重いぶん、速さが乗ってくるまでには時間がかかるみたいなので、手出しできない獲物ではないですね。
布を通り抜けたウシは周りを気にしています。
ぶつかった感触がなく、すり抜けたことを不思議に思っているのかもしれません。
「よし、次はこっちに引き寄せよう」
ごすじんがもう一つの仕掛けを動かします。
ウシは、もう一つの仕掛けがヒラヒラ動いているのを見ると、すぐに走ってきました。
感触が無くて、やっつけた自信がないところに、同じのが出たのです。
次こそは逃がさない。そんな思い切りを感じます。モーレツというやつですか?
そして、布を通り抜けた先には、穴ぼこ地帯があります。
力強く地面を蹴ろうと足を踏み出しても、地面があったりなかったりします。
穴に入り込んだ足は止まってしまいますが、足以外はすごい勢いで前に進んでしまうのです。
ゴリッと音がしてウシが転びました。
あとはウシに近付いて、立てなくするため、足が反対に曲がるように踏むのですが。
一本はもう使えなくなっているみたいです。
そして他の足を踏もうとして、私が足を上げた時、急にウシが起き上がりました。
なんと、ウシの背中に乗り上げてしまったのです。
「あ!おいっ!」
ウシは使える足が三本しかないのに、飛んだり跳ねたり立ち上がったりして、私を振り落とそうとしています。
これは落っこちたら危ないですね。
「降り――いや、落ちるんじゃないよ!」
落とされるだけならたぶん平気なのですが、その後踏まれてしまいますよ。
なので、落ちるわけにはいきません。
まず首筋に噛み付いて、あとは……ダメです!
ウシの毛が短くて掴む場所がありません。
こういうときはゴッスンです。
右手でも左手でもゴッスンして、ウシの背中から落ちないように引っ付いてやるのです。
肋骨が邪魔で一度突きなおしましたが、ちゃんとズレない場所に刺すことができました。
暴れるたびに、ウシの背骨がグリグリ当たってちょっと痛いのが嫌ですね。
それよりも、体の中をモッシャモッシャと揺らされるのが辛いのですよ。
しばらく引っ付いていたら、ウシが弱ってきました。
ゴッスンした場所から、シューシュー音がしています。
今なら降りても大丈夫そうですね……でも、油断してはいけません。
もう一度暴れるための力を溜めているだけかもしれないのです。
ウシはそのまま動かなくなりました。
「肺に穴でも開いたのかな?暴れてるうちに、その穴が広がったみたいだね」
私は体の中がいろいろズレてしまったかもしれないので、休憩させてもらいますよ。
とりあえず、ウシの狩りは成功ですね。
角の人がごすじんをじっと見ています。
なんだか目がキラキラしてるように感じますね。
「なあ、アタシも今のやってみたいんだけど……」
「えっ?」




