トレロカモミロ
モーモーです。
今日はウシを狩ってみることになったのです。
イリベコというみたいですね。
でっかくて、重くて、速いみたいです。
うーむ……そんな獣、どうやって仕留めればいいのでしょうか?
でっかくて重いなら、私の重さでは押さえ込めません。
イノシシみたいに、足を使えなくして仕留めるしかないのですよ。
でも、あの作戦はイノシシが群れじゃないから使える作戦です。
たくさんのウシが一斉に来たら、仕留め切る前にやられてしまいそうですね。
まあ、そこはごすじんが何か考えているはずなのです。
「何だい?アタシを除け者にして、どこか行こうってのかい?」
葉っぱの人はいなくなったのに、角の人はまだいなくなりません。
「ちょっと、牛狩りに挑んでみようかと――」
「何だって!」
角の人が机を叩いてごすじんを睨みつけますが、怒ってはいないみたいです。
急に大きな音を立てるのはやめてほしいですよ。
「いや、依頼でイリベコという――」
「どうしてアタシを誘わないのさ?」
「いや、頼りきりになっては意味がないし……それに、君は牛を狩るのに抵抗はないのかい?」
「へ?」
「気を悪くしないで欲しいんだが、君は外見が……その、角とか耳から牛に近しい系譜なのではと……」
「変なことを気にするんだね。アタシらはアタシら、牛は牛だろ?」
「そういうものなのかい?」
「おかしな気の回し方をするもんだね。アンタらしいと言やぁ、アンタらしいけどね」
「実は、私の故郷では獣人は見かけなくてね、接点もなかったから常識に疎いんだ」
「だとしても、魚を食う魚も、虫を食う虫も居るし、獣は獣を食うだろ?」
「んー……?ま、まあ、そういうものなんだね。勉強になったよ」
「アタシの相談事は解消された。だから、次はアタシが狩りを手伝う。自然なことだろ?」
「いや、君は猟獣会に所属していない、無許可の狩猟は問題があるだろう」
「いーや、無いね。野営の際なんかに自分が食う分を調達していいのは不文律だし、害獣駆除の依頼に現地の道案内を頼むのはよくあるんだろ?」
角の人は何が何でも付いてくるつもりみたいです。
ウシはあんまり狩られることが無いみたいで、見本はありませんでした。
クマと違って剥製も無いみたいです。
料理用にお肉が少し残してあったので、それを出してもらって匂いを覚えておきます。
毛皮の方が匂いが探しやすいのですが、脂の匂いでも大丈夫ですかね?
「で?その牛、どうやって狩ろうっていうんだい?突進を受け止めて頭をカチ割るのかい?」
「そんな危険なことはしないよ。秘策というほどではないが、準備は整えた」
「その準備が……その布ってワケかい?表と裏で色が違うんだね?」
「赤い方を見せることで牛を怒らせ、誘い込んで仕留める」
「怒らせるって……なんで牛が怒るんだい?」
「それは私にもわからない。まあ、群れ全体は相手にせず、仕留める分だけ釣り出す形だね」
「でも、結局は怒った牛が突っ込んでくるんだろ?受け止めるのは変わらないじゃないか」
「いや、持っておく必要はないんだ。設置して、ある程度離れた場所から操作する」
「設置って、それ仕掛けてる間に襲われないのか?」
「熊なんかと違って、攻撃性は低いと聞いているよ。ただ、こちらから手を出すと――」
「群れの全部が襲って来るんだね?」
群れを敵に回すのではなく、興奮した一部が自分から群れを離れるよう仕向けるんだ、とごすじんが教えてくれます。
つまり、群れを脅かす敵として振る舞うのは間違いということですね。
自分から孤立しに行ったやつらまでは、群れも面倒を見ないはず。それを仕留めるという作戦です。
「群れの大半が見ているときは白の面にしておき、一部だけが見ている時に裏返して赤にする」
「ふぅん。それで上手く行くのかい?」
「わからない。」
「……おい」
狩場に着きました。角の生えた茶色いやつがたくさんいるのです。
あれがウシですね。
うっすらお肉と同じ脂の匂いが漂っているので、間違いないのです。
聞いていた通り、でっかいやつらです。
あれを私が押さえ込むのは、ちょっと無理そうですね。
小さいやつも混じっていますが、あれは子供のウシでしょうか?
ウシたちは思い思いに草をもぐもぐしています。
ひとかたまりに集まっているのと、集まらずにちょっと離れているのがいますね。
でも、あれは全部同じ群れですよ。
離れていても、時々食べるのをやめて見渡したり、耳を向けたりしています。
あれは、ちゃんと仲間ですよ、と確かめている合図です。
集まっているのは、子供のウシを守りやすくするためですね。
離れているのは、守られなくても大丈夫なくらいに育ってるウシだと思います。
獲物がどんなやつなのかは、もうわかったのです。
あとはごすじんの作戦が上手く行くのを待ちましょう。




