Walk On Woke
今日は何を狩りに行くのですかね。
ごすじんはいつも慎重ですが、狩りにも慣れてきたので新しい獲物に挑むことを考えているみたいです。
あれ?この匂いは……今日は狩りに行けないかもしれませんね。
いえ、もしかしたら狩場に付いて来るかもしれないのです。
「たのもー!」
やっぱり……角の人が来てしまいました。
「お、探す手間が省けたね。丁度アンタに会いたかったんだよ」
「悪いけれど……今、挑戦を受けるつもりは――」
「いやいや、用事があるのはアタシじゃなくてね……いや、アタシも無関係ってワケじゃないけどね」
「気のせいかな?何やら妙に期待されているような……」
「とりあえず、紹介したい人が居るんだがいいかい?」
「できれば遠慮したいが、そういうわけにも行かないみたいだね」
うーん、変なのです。
「どうも、初めて視界にお邪魔しました。今から同じ空気を吸います。許してもらえると私は嬉しくなります」
見た目はヒトっぽいのに、木や草みたいな匂いがするのです。
「コイツはアタシが捕らえた賞金首なんだけど、実は賞金首とは違うというか……まあ、よく分からないんだよ」
「そう言われても、私としては全く分からないとしか言えないのだが」
「この手配書の人相書きを見とくれよ。めちゃくちゃ古いから細かいトコは霞んでるけど、そっくりだろ?」
「確かに似ているね」
「ずっと昔から掲示はされてたんだが、誰も見つけられなくてね、野垂れ死にってのが通説だったんだが……」
「本人らしき人物を見つけてしまった、と」
「そうそう」
「私もこの絵は、私の顔が描かれていると信じられます。それはとても残念です。しかし、異なるということは私自身が知っています」
「なかなか個性的な表現というか話法というか……」
「私は人と関わる過ごし方をあまり採用しませんでした。対話や協議は習熟が不足しています。それらの巧拙が私を脅かすことが無かったためです」
このヒトは頭の上からチョロっと何かが伸びていて、葉っぱが付いています。
でも、それだけではこんなに葉っぱの匂いはしてこないと思いますよ。
「まあ、なんやかんやあってアンタを頼るのがいいかな?と考えて連れてきちまったワケさ」
「教えていなかったかな?私はしがない猟偵でしかないんだが」
「いや、知ってるよ?」
「猟獣会への依頼は、食肉の確保や害獣の駆除のはずだが」
「これは依頼じゃないからね。まあ、そうだね……個人的な相談ってところかねぇ」
「私は私を外装と根幹に分別することが出来ます。そして私にとって外装に当たる部分は、重要な意味を持ちません」
「どうして彼を連れて来たのか、まったく理解できないのだが」
「まあまあ、アタシでも一応は理解できたんだ、アンタもちょっと話を聞いてやってくれよ」
「私は数十年前にこの外装に根を張りました。そして同族よりも繁茂に長ずる側面を手に入れたのです」
「んん?つまり、本体はその……頭頂部から茂っている……なんだろう、枝?いや、根を張っているということは……」
「やっぱりアンタは話が早いね」
「私にとって外装は意味こそ持ちませんでしたが、大変な価値を持っていました」
よくわからないのですが、外と中が別のヒトということですか?
「普段私たちは日を浴びています。水を吸います。結んだ実や種を届けます。それは生い茂るためですが、芽吹かない場所にも届けてしまいます」
「なるほど……芽吹くのに適した場所へ行けるようになった、ということだね」
「大地に根付くというのは本懐です。しかし、本懐を遂げる事が常に最上ではないことを私は知りました」
これは……まったく意味が分からないのです。
たぶん、お手上げというやつなのだと思います。
「私はもうすぐ枯れるであろうことを実感しています。その時が来る前に、この外装に何か報いることはできないかと思うようになったのです」
「問題は君の、その……外装というのが罪人だったかどうかということかな?」
「その可能性は非常に高いと木霊のように返します。この外装は集落で自生を許されない状況に晒されており、それが私が定着する一助になっています」
「人目を避けて隠遁していたからこその遭遇というわけか」
「ですが、私は外装の損傷や腐敗を繊維や樹脂で補修してきました。当時の組織はすべて生え変わっています」
「これはテセウスの船というやつなのでは……?」
「な?な?おもしれえ話だろ?」
「それで、報いるというのはどういったことを指しているのかな?」
「私は芽吹くこと、根を張ること、枝を伸ばすこと、葉を広げること、実を結ぶこと、それ以外を知る必要がありませんでした」
「つまり、何が報いなのかすら分からない、と?」
「今、貴方にとても澄み切った空気を差し上げたいと思いました」
「それは感激したと解釈すればいいんだよね?」
んお!ごすじんがなでなでしてくれます。
ほったらかしにしていないことを、伝えてくれているのですよ。
「というか、入れ替わりで残ってないなら、報いる対象が無くなっていると考えることもできるよ」
「まるで針葉樹林に息づく広葉樹を発見したような趣きです。しかし、それは葉の色がくすんでしまいそうだ」




