冒険賛歌
ジェネシス・ファンタジー・オンラインで鳴らした俺たち†比翼の羅刹†は、異世界に召喚され王族に利用されかけたが、王宮を脱出し、冒険者ギルドに入った。
しかし、一介の冒険者でくすぶっているような俺たちじゃあない。
筋さえ通れば金次第でなんでもやってのける命知らず。
不可能を可能にし強大な魔物を粉砕する、俺たち、†真・比翼の羅刹†
俺はリーダー、山梨 勉。冒険者登録はベン
ヘイトコントロールとバフの名人。
俺のような天才タンクでなければ百戦錬磨のつわものどものリーダーは務まらん。
俺は藤堂 孝之。冒険者登録はコウ。
自慢のDPSに、魔獣はみんなイチコロさ。
バーストかまして、スライムからキマイラまで、何でも屠って見せるぜ。
よお、お待ちどう。俺様こそ佐伯 敏行。冒険者登録はビーン。
レンジドとしての腕は天下一品!
レイド?PVP?だから何。
あとはギルドで勧誘したのが、グリーニル。
こいつは何か企んでるみてぇだが、サポートとしてなかなか優秀だ。
でもハラスメントだけは勘弁な。
俺たちは、道理の通らぬ異世界にあえて挑戦する。
頼りになる神出鬼没の、†真・比翼の羅刹†
助けを借りたいときは、いつでも言ってくれ――
ってカッコよく決められてるうちはよかったんだがな……
新発見のダンジョン探索中に見知らぬ地域に迷い込んじまった。
そこでグリーニルの裏切りだ。
奴は、追放したパーティメンバーのスキルを奪うという超絶メタを隠し持ってやがった。
こういう時こそ、一致団結しての行動が大事だっていうのに。
人の目が無い新天地で、箍が外れちまったんだろう。
俺たちも、動転して気が緩んでたのがいけなかった。
奴がリーダー権限を渡せと言い出す前に、転移を試すべきだった。
何が「現状を打破できる見込みがある」だ。
てめぇ一人の目線だけの話じゃねえか。
今や転移門も帰還も未収得になっちまってる。
というかスキルツリー自体が未所持の状態だ。
ステータスまでは低下してないから、どうにかなる……はずだ。
何とか経験値を稼いで、新しいスキルツリーが出ることに賭けるしかない。
それにしても、スキル無しでの戦いは大変だ。
ヤケクソで技を考えて放ってみたりもしたが、何の意味もなかった。
回復手段もないから、怪我をしないよう慎重に相手を選ばなくちゃいけねえ。
何日も何日も意味があるのか分からない戦いを繰り返していた時、あの人に会った。
その人の話じゃ、ここは冒険者という仕組みが無い国らしい。
というか、国どころじゃなく、世界が違う可能性が高い。
一度、世界の垣根を超えた経験がある俺たちは、それを一番危惧していた。
同時に、考えないようにもしていた。
街に入ってからはそこかしこで冒険者の噂を耳にする。
曰く、この地域の秩序にそぐわない行動を繰り返している。
曰く、都市のインフラに当たる街道や水路を破壊した。
本人は善行でも成したかのように胸を張っているらしいが、もしこんな場所で冒険者を名乗ったら……
目の敵どころか袋叩きにされかねない。
あの馬鹿は一体何をやってるんだ。
冒険者は一旦休業だ。
みんなそれなりに体力はあるから、搬送会ってトコに所属して運び屋をすることにした。
意外にもこの仕事は俺たちに合っている。
出発前によろしくと頼られ、運んだ先ではご苦労様と労わってもらえる。
「飯でも食って行け」と誘われた時なんて、思わず泣いちまったよ。
前の世界で殺伐とした日々を過ごしてきた反動か、充実感がスゲーんだ。
たまに賊や獣に遭遇することだってある。
スキルが使えねえから、立ち回るのに苦労したが、もう問題はねえ。
戦う必要なんてねえんだって気が付いたからな。
VIT・AGI300超は伊達じゃない。
荷物ありでも、一昼夜は逃げ続けられるんだぜ。
……けど、焦燥感みたいなものは募ってくる。
ここが、俺たちの居場所じゃないからだろう。
とは言え、スキルも無い今の俺たちじゃ――
「おい!ステータス見てみろ、スキルが戻ってるぞ!」
「うおぉ!マジだ」
「帰還が行使可能になってる」
「待て、早まるな」
「いや、だって帰れるんだぞ?お前、帰りたくないのか?」
「そりゃもちろん帰りてえ……でも、今は仕事中だ。届け終わってからだ」
「それもそうだな……到着を待ってる人達を裏切れないよな」
「これを届け終わったら、挨拶回りしよう……そしたら帰還るぞ」
何故スキルが戻ってきたか、誰もその疑問は口にしなかった。
まあ、大方の予想は付いてるが……触れたくなかったんだろうな。
多分、今後は冒険者の新しい噂は立たなくなる……はずだ。




