力こそPower
アタシは力の信奉者だ。
強さというものを、信仰していると言ってもいい。
……そうはいっても、強さってのにも、色々あるってことを最近知った。
別に考えが変わったわけじゃない。
あくまで別の見方ができるようになったってぇことだ。
大した代償も払わずに、新しい見方を手に入れられたのは、運が良かったとしか言えないね。
だけど、アタシの本質は変わらない。
近頃はボウケンシャとかいう奴が、方々で暴れ回っているらしい。
暴れるとは言っても、直接的に人に危害を加えるわけじゃなく、騒動を起こして迷惑をかけているとか。
人相書きは出回ってるが、懸賞金はまだみたいだ。
傍迷惑ってだけだから、懸賞金まで行かないかもしれない。
それよりも重要なのは、なかなか腕が立つって噂があることさ。
聞いた話じゃ、見た事も無いような技を使うらしい。
こだわりなのか、誇らしげに名乗るってんだから足跡を辿るのは簡単だ。
中には愉快犯も居るかもしれないが、迷う必要は無い。
要は騒動の規模がデカい方に向かえばいい。
偽物だろうが大騒動を起こせるなら、それなりの力を持ってるってことだ。
問題はどうやってアタシの挑戦に応じさせるか……なんだけど――
「ついに現れたな、魔族の尖兵――いや、刺客というべきか」
「マゾク?アタシの事かい?何かと勘違いしてるんじゃないか?」
「この僕が築いてきた平和の礎を、そろそろ見逃せなくなってきた。そうだろう?魔族」
「いや、まったく心当たりがないねぇ……」
言葉は通じるが、会話が成立しない……人相書きの面影もある。コイツがボウケンシャって奴だね。
「とぼけても無駄だ、その禍々しい角こそが動かぬ証拠」
「は?お前、今何つった?」
週に一度はヤスリ掛けして、三日と空けずにツヤ出しに磨いてるこの角を……禍々しい、だって?
コイツは自分の言ったことが、何を意味するのか分かっちゃいないだろう。
だけどね、「分かってなかった」で許されないことはあるんだよ。
よし、潰す。
「ハハッ、まずは小手調べだ!マイティスラッシュ!」
「当たらないよ」
恨みも怒りもない形相で、躊躇いなく人に斬りかかる……
開き直った賊ならともかく、コイツはそうは見えない……要は頭がおかしいってことだ――
いや、主を守るために最善手で即応する奴を、最近見たばっかりだね。
アレとは違って、コイツはどこか享楽的だけど……
「これはどうかな?グランドブレイク!」
「食らうかっ――」
何だ?地面が割れた――いや、コイツが割ったのか?
「あれ?驚いてる?そうか、あまりにも威力がショボいことに呆れてしまったんだな」
ちっ、ムカつく顔だなこんにゃろう。
「それとも、僕はまた何かやらかしてしまったのだろうか?」
それにしても、何だ……この、ただの袈裟切りや薙ぎ払いに、いちいち奥義みたいな名前つけてんのか?
そんなモン、普通は型の動作の一部だろうに。
「あんまり避けないでくれないか、岩や地面を叩くと手が痺れる」
「棒立ちで居ろって?当てる工夫をしてから言いなよ」
そう、あちら側の攻撃は、まったく食らう道理がない。
このボウケンシャの気持ち悪さは、下地が全然固まっていないことだ。
普通なら、鍛錬の過程で足運びや体捌き、時には視線の使い方まで体に染み込ませるもの。
それらを駆使して、如何に当てられる状況を作り出すかが重要なハズだ。
コイツはバタバタと駆け寄って来て、大仰に叫んで得物を振るだけ。
まるで模擬剣を与えられたばかりの子供……なのに地面は割れるし、岩を砕く。
理屈に合わないところが気色悪いが、これだけは言える。
コイツと戦い続けても、アタシが得られるものは無い。
「なんだ?戦闘中だというのに武器の持ち替えか?いいだろう、待ってやる」
「いや、待って貰わなくても、対処できる自信があるだけさ」
「減らず口を」
「さて、アンタはもうお終いだ。なにか言い残したことはないかい?ちなみに、今から謝っても許さないけどね」
「選んだのが鉞とは、魔族にお似合いの野蛮な武器だな」
「これはカバネダチ、木こりのそれと違って人体に向けるモノだが……まぁいいや、それが最後の言葉かい」
コイツに当てるのは簡単だ。
振り抜いたとき、軌道上にコイツが居る……そういう位置で振ればいい。後は――
「むおっ?シールドエクシード!!」
あの構え――まさか、受け止める気なのか?
「べっ!!」
赤い花が満開だ。
そりゃそうだ、何で受け止められると思ったんだ?
肘か肩でもが外れたのか、馬鹿は自分の盾に頭を殴られた。
そんな大層な代物にも見えないが、不気味なことにアタシの一撃でも傷一つ付いてない。
逆に言えば、そんな堅いものが頭にめり込んだんだ。
うーん、潰すとは決めたけど……これは、人相書きと照合できるかねぇ?




