汝の鱗人を愛せよ
私の家庭はかなり変わっています。
……とは言っても、一般的な家庭を知らないわけですから、それがどれだけ特異なことなのか、あまり自覚はありません。
あくまでも、私にとってはこれが日常なのです。
申し遅れました。私はムクナと申します。
私のお父さんの一人が名付けてくれたと聞いています。
そうです。私には、お父さんが沢山いるのです。
私は蛇系の鱗人なのですが、沢山いるお父さんの中に鱗人はいません。
十数年前、まだ卵に包まれていた私には知る由もないことですが、私の郷はオオムジナに襲われ、私は卵のまま攫われたようです。
私をどうこうしようとしたのではなく、卵として食料にするつもりだったのだろうと聞いています。
その後、オオムジナはハンターによる合同作戦で討伐され、私は救出されました。
その時のハンターさん達が、私のお父さんです。
私は変わった体質をしていて、髪や鱗を含め、体の表面が真っ白です。
なぜか、眼だけは真っ赤なのですが……
当時、お父さん達はいろいろな伝手を頼って私の引き取り手を探してくれたみたいですが、この体質のせいで、受け入れてくれる同族がいなかったようです。
同族だというのに、そういうものなのですね。
でも、むしろ今の方が良かったのかもしれません。
後で知ったことなのですが、この街の猟獣会はちょっと変わっていて、ゴチャゴチャ言わなくても、人間ならみんな仲間だと認定してしまう習慣があるみたいです。
そして、受け入れてくれる場所が無いのなら、もうみんなで育ててしまおう。
そういうことになったのだそうです。
そうそう、もっと言うと私のお父さんには女の人も居たりします。
普通はお母さんですよね?
でも、お父さんなのです……
種族が違っても、年齢がバラバラでも、男でも女でも、私を育てる人はお父さんだと言うのです。
よくよく考えたらおかしい気もするのですが、それで今の私があると思うと、なんだか複雑な気持ちです。
街での暮らしは少々不便なこともありましたが、お父さん達が頑張ってくれて、だいぶ過ごしやすくなりました。
寝る場所はもちろん、座る場所も私の尾に配慮したスペースを用意してもらいました。
さすがに特別扱いが過ぎるものは、辞退させてもらっています。
目下の困りごとと言えば……
「おう?なんだ兄ちゃん、ウチのムクナに何か用か?」
「何だお前、また来たのか?ムクナを口説くなら、俺達に認められてからだって言ったよな?」
「独り立ちもできてない坊やに、うちの子を託すわけにはいかないよ」
お付き合いをする機会に、なかなか恵まれないことですね……




