この ○○○た時代へ ようこそ
たまごが割れて、中から子供が出てきてしまいました。ニョロっ子です。
ハンターたちは、狩りの時よりずっと慌てた顔をしています。
「マジで、まいったなこりゃ」
「すみません。鱗人という人達については何も知らなくて……」
「そりゃそうだ。俺だって久しぶりに見たし、何ならこんなに幼いのは初めてだ」
「蛇系ならなおさら、街には寄り付かないからなぁ」
「仲が悪いのですか?」
「いや、そういうわけじゃねえよ。この子も、上は人と変わらねえだろ?」
「ええ、そうですね」
「問題は下半身の方なんだ……まだ小さいから、こんぐれぇで収まってるが、成人したら大通りを横断するくれぇにはなる」
「宿に泊まろうにもベッドは窮屈だし、投げ出してりゃ通り掛かりに踏まれる、椅子に座るのも不自由だ」
「そういうことですか」
「嫌い合ってるわけじゃねえが、こればっかりはどうしてもな……」
「ふぇ……」
ハンターたちの慌てる様子が伝わったのか、ニョロっ子が不安そうな顔をしています。
「おーしよし、どしたどした?あばばばばぁ」
すごいですね。どこに力を籠めれば、あんな顔が作れるのでしょうか?
「きゃい、きゃい」
「お前……独りモンのくせに手馴れてんな、気持ち悪いぞ」
「放っとけ、姉ちゃんに姪の世話させられてたことがあんだよ」
「それにしても色白だな。ヌリワスレか?」
「ヌリワスレ?」
「ありゃ?通じねえか……アレだ、ごく稀に生まれてくる全身が真っ白な人や獣の事だ」
「ヌリソコネじゃなかったか?」
「ヌリソコネは真っ黒のことだろ?」
「アルビノやメラニズムのことかな」
「わりぃ、そっちの言葉は俺が知らねえヤツだ」
「まあ、地域差みてぇなもんか」
「いやいや、今問題なのはそこじゃねえだろ」
おお、ハンターたちが落ち着いてきましたよ。
ごすじんが何かしたのかもしれません。
「オオムジナが使ってた武器や道具なら、拾った奴の取り分にしちまって問題ないんだがな」
「鱗人の卵なんか初めてだぞ?しかも孵っちまったし……」
「いや、鱗人って卵の時点で人として扱うとか、そういうの無かったっけ?」
「んー……てことは、拉致されてたのを保護したってことになるのか?」
「捨てていくわけにもいかねえ。とにかく連れて帰るぞ」
「あう、ぷわぁ」
今度はニョロっ子が不満そうな顔をしています。
言葉が通じないのは不便なものですね。
私もそれは、よくわかるのです。
「腹ぁ空かせてんのか?何か食い物でも――」
「アホか!変なもん食わせて腹壊したらどうすんだ。どっかに詳しい奴ぁ居ねぇか?」
「搬送会の連中は?鱗人の住処に通ってる奴が居るかもしれねえ」
「よし、足の速え奴何人かで、先に向かってくれ。この場の片付けは――」
「あんたらも、その子を連れて戻りな。後は俺達が引き受ける」
ごすじんも、戻る一団に入れられてしまいました。
では、後片付けはニャーの人に任せて、私も行くのです。
「ぬニャ?」
猟獣会に戻ってニョロっ子のことを報告しました。
搬送会に行っていたハンターも戻って来て、教えてもらったことをみんなに伝えています。
「卵の中である程度育ってて、歯も生え揃ってるから、消化の悪いものでなけりゃ大丈夫みたいだ」
「刷り込みとかも無いらしい。孵化の立ち合いで神経質になる必要は無いってよ」
「いや、それはもう遅えよ。まあ、安心材料ではあるが……」
それよりも大変なことが起きているのです。
ごすじんが私を構ってくれませんよ。
ニョロっ子に取られてしまいました。ぷんすこ。
相手はちっちゃい子供なので、仕方がないことではあるのです。
ちゃんと見ていないと大怪我をしてしまったり、コロッといってしまうことだってあります。
目を離しているあいだに、冷たくなって動かなくなってしまう、あれはそういうモノです。
でも、ほったらかしは寂しいのです。
今は「まて」という合図さえも、掛けてもらっていません。
こうなったら奥の手を使います。
私はごすじんの弱点を知っているのですよ。
まずは、ごすじんに向かって中腰になります。
そして、前足を胸元で合わせます……今は手ですが。
あとは、それを上下に、かっちょんかっちょん振るのです。
これでごすじんはイチコロというやつなのです。
「ニャーに後始末放り投げて、一体何をやってるのニャ」
んお?




